人は年齢を重ねて大人になるにつれて、就職や結婚、離婚、退職など大きなイベントを経験します。これらは本人だけでなく、従業員を雇う会社にとっても密接な関係があり、必要な手続きが生じます。特に年金手続きは、従業員の老後に影響を与えるため、的確にその内容を理解する必要があります。今回は結婚や離婚に伴う第3号被保険者の年金手続きについて解説していきます。
年齢や職業などによって該当する被保険者資格が異なるので、その点についておさらいしていきます。
日本国内在住の20歳以上60歳未満の自営業者やその配偶者、学生などが該当します。
厚生年金や共済組合に加入している人です。会社員や公務員をイメージすれば分かりやすいと思います。20歳未満でもどちらかに加入していれば該当します。
第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の人が、第3号被保険者となります。配偶者が加入している厚生年金や共済組合が保険料を負担してくれるので、個人で年金を納付する必要がありません。
厚生年金や共済組合に加入している人の配偶者であれば、第3号被保険者の対象です。しかし、当てはまる人が誰でも第3号被保険者になれるというわけではなく、いくつかの要件があります。以下では、その点について詳しく確認していきます。
一つ目の要件は、厚生年金や共済組合に加入している人の配偶者であることです。そのため、自営業者の配偶者では、第3号被保険者になることはできません。
本人に一定以上の収入がある場合、配偶者の扶養に入ることができません。
さらに上記の年収制限に加え、
・扶養者と同一世帯の場合、夫(妻)の年収の半額未満
・別居の場合、夫(妻)からの仕送り額未満
この二つの条件を満たす必要があります。
出典:日本年金機構 家族を被扶養者にするとき被扶養者となっている家族に異動があったとき、被扶養者の届出事項に変更があったとき
上記の条件を満たした場合であっても、第3号被保険者になるためには手続きをする必要があります。
先述したとおり、第3号被保険者である妻(夫)の保険料については、その配偶者が加入している厚生年金や共済組合などの保険者が負担しているため、個人で納付する必要はありません。ただ、第3号被保険者に関する手続きは、第2号被保険者である配偶者の勤務先が、日本年金機構やその事務センターへ書類を提出しなければなりません。
手続きをするにあたり注意すべき点があります。一つは、被扶養者異動届(国民年金第3号被保険者関係届)を作成する上で、扶養される妻(夫)の基礎年金番号が必要になることです。そのため、事前に年金番号を確認し、分からない場合や年金手帳を紛失してしまった場合には、年金事務所で再発行してもらうことが重要です。そしてもう一つは、提出期限があることです。第2号被保険者の配偶者が第3号被保険者となった事実が発生した日から5日以内に提出する必要があります。書類の提出の際に、場合によっては収入要件を確認する書類を求められることがあるので、その点についても留意しておくことが重要です。
出典:日本年金機構 従業員が家族を不要にするときの手続き
自分自身の収入増加や第2号被保険者である配偶者との離婚によって第3号被保険者の条件を満たすことができなくなった場合にも必要な手続きがあります。
① 第3号被保険者の収入が基準額以上で扶養から外れた場合(国民年金第3号被保険者関係届)
② 第2号被保険者である配偶者と離婚した場合(被扶養配偶者非該当届)
配偶者の扶養から外れてしまった場合、第3号被保険者は第1号被保険者になるので、本人が年金事務所に国民年金第3号被保険者関係届を提出しなければなりません。この書類は、資格喪失日(扶養から外れた日)から14日内に届け出る必要があります。
第2号被保険者である配偶者の勤務先を経て、日本年金機構に提出します。この書類の手続きは、配偶者の勤務先がおこなうため、第3号被保険者が直接手続きを行うことはありません。
第3号被保険者が配偶者と離婚してしまうと、第1号被保険者になります。離婚後も第3号被保険者を継続することはできないのです。しかし、将来的な年金受給について3号分割という制度があります。
平成20年5月1日以降に第2号被保険者である配偶者と離婚をして、第3号被保険者から請求があった場合、夫婦間の合意がなくても、第2号被保険者の厚生年金記録を2分の1に分割することができる制度です。
この制度を利用するには条件があります。
① 平成20年4月1日以降の婚姻期間中の第3号被保険者期間のみ
② 請求は離婚をした日の翌日から2年以内
出典:離婚時の年金分割
年齢や年収の面で要件がありますが、保険料の支払いについて優遇があり、将来的に年金を受け取ることができます。しかし、要件を確認しなかったために第3号被保険者になることができなかったり、そもそもの届出を忘れたりしてしまうと、その間の保険料が未納扱いになることもあります。そのため、要件と該当者本人の情報をしっかり確認しながら手続きを進めていくことが大切です。