経理業務を志望して転職活動をする際には、他部署に対する転職活動とは違った点に配慮する必要があります。なぜなら、経理職以外については、所属する企業のカラーや業務内容に応じた諸対策を練れるのですが、経理職の仕事はどこの企業も少なからず共通する部分が少なくないので、「経理ならでは」の視点を意識しなければいけないからです。
そこで、この記事では、経理部門への転職活動の成功率を高めるために、「経理の志望動機」を取り上げます。経理が転職活動を上手く運ぶには、「説得力のある志望動機を作れるのか」が重要です。どうぞ最後までご参照のうえ、ご自身の転職活動にお役立てください。
実務経験なしの状態から経理職の転職活動を検討している方は、まず今の市場の求人動向や転職難易度について押さえておきましょう。
経理はどの企業でも欠かせない業務のため、ニーズの高い状態が続いています。実際、経理・財務の転職市場の求人倍率は1倍を超えているため、転職者よりも求人数の方が多い状態であることが分かります。
リーマンショックやコロナウイルスの影響などといった大きな外的要因が発生しない限りは、2024年についてもこの状況が続くと予測されます。
ニーズは高いものの、必ず誰でも転職可能というわけではありません。特に、業務未経験者の転職は難しいです。転職難易度が高い理由として、主に挙げられるのは以下の通りです。
経理は業務の専門性が高く、他の職種では経理に役立つスキルを習得しづらいという特徴があります。未経験の場合、企業はそれを一から教えなければならず、戦力として働けるほどにキャッチアップするまでに時間がかかってしまいます。
経理職は求職者からの人気が高い職種です。
その理由としては、突発的な業務が発生するケースが少なくワークライフバランスを保ちやすい、汎用的なスキルを身に付けて手に職をつけることができることなどが挙げられます。
社会的ニーズが大きい一方で、各企業単位の募集人数が限られていることも理由の一つです。
経理などバックオフィスを総称して間接部門と呼びますが、その間接部門の従業員数における割合は、一般的に10%程度と言われています。
つまり営業部など売上に関わる直接部門に比べると、必然的に求人数が少ないことになります。経理担当が一人という企業も多く存在しますので、内定を獲得しづらいケースも出てくるわけです。
ですので少しでも有利に転職活動を進めるため、書類選考や面接において必ず必要最も成功率の高いタイミングを選ぶのは効果的な手段の一つといえます。
経理とは、企業の会計・財務面の業務を担当する職種です。
具体的には、企業の収支や資産、負債などの財務情報を記録・管理する日次業務から、月次試算表の作成、決算報告書の作成、税務申告などを行います。
どんな企業にも経理職は必ず存在しており、企業が健全に経営するために不可欠な業務です。正確な財務情報を提供することで、経営者が企業の収益性や健全性を把握し、適切な経営判断を行うことができます。
経理職の仕事内容について知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
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実務経験なしから経理職を志望する方たちはどんな理由で希望しているのでしょうか?弊社の転職エージェント「ヒュープロ」のご登録者様から実際に伺うことの多い、リアルな転職希望理由を3つ紹介します。なお、こちらでご紹介する例につきましては、実際にそのまま志望動機に書いてはならないものも含まれますので、ご留意ください。
最も多いのがこの手に職をつけたい、という理由です。先ほどご紹介したように、経理職は専門性が高いかつどの企業でも必要とされているため、スキルを積めれば仕事に困りにくい職種として認知されています。
そのため、安定した職に就いて今後のキャリアを堅実に築きたいという方が多いのです。
経理職は仕事の特性上、外部とのやり取りや出張や突発的な業務などが発生しにくいため、リモートワークや時差出勤がしやすい職種といえます。コロナウイルスの影響が大きかった期間は、そのような働き方を職種問わず実施せざるを得ない状況でしたが、現在は定時に出社というオーソドックスな働き方に戻りつつあります。
その中で経理職は、引き続き多様な働き方を選べる数少ない職種といえますので、親の介護をしている方や保育園などに通う子どもを持つ方などはこのような働き方に魅力を感じて転職を希望します。
実務経験のない方が経理と聞いてイメージする仕事は、日常の仕訳や記帳業務かもしれませんが、キャリアを積んでいけば企業のIPOやM&Aといった重要な局面において、CFOとして重要な役割を果たせる可能性もあります。
CFOまでいかなくても、経理部長などある程度責任感のある役職についている方の年収はかなり高い傾向にあり、経理職として1,000万円以上の高年収を実現する方も少なくありません。
安定して働きながら年収アップを狙えるというのも、経理職を目指すリアルな理由の一つです。
では、本題の志望動機の考え方について解説していきます。各々の応募先への志望動機を考えるにあたって、次の3つのステップで考えることをオススメします。
それぞれについて、詳しく紹介していきます。
まずは経理職を希望する理由を洗い出します。ここについては、ある程度イメージがついており、先ほどご紹介したよくある転職希望理由のいずれかに該当するという方が多いのではないでしょうか。ただし先述した通り、そのまま書くと企業側にマイナスなイメージを与えかねないものもあるので注意が必要です。
例えば、「将来的な年収アップが期待できる」というのは、直接的な表現は避けた方が良いでしょう。年収さえ稼げればどの業界でもいいのではないか、と考える採用担当が多く、年収の高い他の業界と志望度が分散しているとか、入社してもらってもすぐ退職してしまうのではないかという懸念が出てくる可能性があります。その影響で、面接でそれらをリカバリーする機会も無く、書類選考段階で不合格になってしまうこともあるので注意が必要です。高年収がもらえるのはそれだけ自社への貢献度が高いということになりますので、
「スキルを積んで、貴社に最大限貢献できる社員になりたい」など、業務に絡めた言い方をすると良いでしょう。
「成長環境で働ける」や、「専門的な知識が習得できる」についてはそのままの表現で大方問題ないでしょう。ただし、「専門的な知識が習得できる」の場合は、早期離職のリスクを企業側に感じさせないために「スキルを習得するとその後のキャリアに役立つ」という部分は書かないようにしましょう。
次になぜその企業先に応募したのかという理由も落とし込みましょう。経理職の求人は沢山ある中でなぜその企業を選んだのかは、書類選考でも面接でもほぼ必ず選考基準に入っています。
志望動機の完成度が低かったり他の企業でも通用するような内容だと、志望度が低いもしくはもし入社してもすぐ辞めてしまうかもしれないという懸念に繋がってしまいますので注意が必要です。
特に経理職は行っている業務内容が似ているため、企業ごとの志望動機を作る難易度が高いといえます。ただし事業内容は各企業によって異なりますので、企業情報や求人を仔細に確認し、事業やサービスや経営理念への共感などが、相手に伝わりやすいような内容を作りましょう。
最後にその応募先において自分自身がどのような役割を果たせるのかを考えましょう。こちらはいわゆる自己PRのようなものですが、今までのキャリアや実績をなんでも書けばいいというものではなく、あくまで経理の仕事、さらにその応募先企業で活かせるとアピールできるものでなくてはなりません。
ただし直接的に関係なくても、大学で会計学を学んだ経験や、数値分析の経験があれば記載しておくと、適性があると判断されやすくなります。
また日商簿記2級など会計に関する資格を持っている場合は、未経験の中ではプラス評価になりやすいので、資格欄への記載はもちろん、取得した経緯も書けると良いでしょう。
経理職への志望動機の書き方を調べると、例文や他の転職者の回答例を見る機会も多いかもしれませんが、それらを参考にするのはあまりオススメしません。なぜなら志望動機は自分自身の本心や実際の経験に基づいてなるべくリアルに書く必要があるからです。
模範例を参考にしてしまうと、どうしてもそれに引っ張られて独自性が薄れたり、本当に書きたいことと乖離することがあります。もちろん、先述したように赤裸々に書き過ぎないように気を付ける必要はありますが、自分の言葉で伝えられるような志望動機にはしていきましょう。
模範例を見るべきではないとお伝えしましたが、とはいえ記載すべきでない要素は事前に押さえておく必要がありますので、紹介していきます。
実際に志望動機を固めるにあたって、よく言われる「建前と本音」を明確に分けることが、重要です。
自分に還元されるメリットばかりを志望動機として書いている人を会社はあまり求めていないでしょう。入社後の自分のイメージや、どんなふうに会社に利益をもたらすことができるのかをはっきりと説明できるようにすることで、会社にも良い印象を持ってもらうことができるはずです。
特に資格取得に関わる部分については、自分本位になりやすいので、気を付ける必要があります。
具体的なNG例については下記の通りですので、要チェックです。
自分ではメリットと捉えているポイントでも、企業側としてはマイナス評価になってしまうケースもありますので、注意する必要があります。具体的に見ていきましょう。
経理職は内勤で、コツコツ仕事をこなすイメージがありますが、実は社内外の他部門とのやり取りが多い業務でもあります。具体的には、請求書の内容や経費精算の不備問合せなどを行うなどです。
締め切りまでの必要書類の取り付けや、提出した書類の修正など、面倒くさがられるような依頼をしなくてはならない時も多くあります。つまり、経理業務をスムーズにこなすためには高いコミュニケーション能力が求められるのです。
もちろん、割り当てられる業務によっては、誰とも話さずにずっと書類のチェックをするようなこともあるかもしれませんが、それはあくまで業務分担の一環としてであり、企業は経理職についてもコミュニケーション能力を求めています。
「人と話さなくて済む」と、経理職を志望したと伝えてしまうと、「入社しても周囲とうまくやっていく気持ちがないのでは?」と、企業側を不安にさせてしまうでしょう。
また、「○○しなくて済む」といった消極的なフレーズは、ネガティブな人物評価につながってしまいます。もし、あなたがコミュニケーション能力に自信がなかったとしても、それをあえて伝える必要はありません。
「スキルアップしやすい環境に魅力を感じた」と前向きな理由を伝えておき、対人関係やコミュニケーション力に問題があると思われないようにしましょう。
経理は営業の世界と違い、競争が少ない落ち着いた雰囲気で仕事ができると思われているかもしれませんが、それは誤解です。経理職が安定しているように見えるのは、営業が強い、競争力のある会社だからであり、もし会社自体が傾くようであれば、真っ先にスタッフ部門の給与に影響が出ます。
また、これからの世界情勢の中、職の安定を手に入れるためには、それに見合った実力が必要です。安定を求めるよりもまずは、「経理であっても利益を生み出せるようにしたい」とポジティブな姿勢をアピールしましょう。
採用される確率も高めるためには、会社にぶら下がる依存心の強いタイプだと思われてはいけません。
経理職への転職を希望する場合には、経理の選考時に評価を受けやすいようにアピールすることが重要です。
志望動機でアピールするポイントとしては、以下3点が挙げられます。
経理の仕事で前提となるのは、基本的なパソコンスキルを備えていることです。例えば、office系のソフトであるMicrosoft ExcelやMicrosoft Wordや、Google系のツールに慣れているかがメルクマールになるでしょう。
経理の仕事は、パソコンへの入力作業が大部分を占めます。パソコンを扱い慣れていないと、経理業務の内容を習得する前の段階で躓く可能性があります。パソコンを触り慣れている方であれば、着任してからすぐに業務内容だけに集中して仕事ができるので、経理に向いていると考えられます。
ただし、経理ソフトの扱いに慣れている必要はありません。基本的なパソコンスキルがあれば経理ソフトの扱いは苦にならないですし、そもそも、企業によって使用するソフトやシステムが異なるので、入社後に実務を通して使い方を学ぶだけで充分です。
経理の仕事で重視されるのは、小さなことを積み重ね、正確さを忘れないように注意深く仕事に取り組めることです。これは、主に性格面に関することです。
経理の仕事は数字を扱い、かなりの正確性が要求されるものです。会社の金銭面を正しく管理しなければいけないので、小さなミスが大きな問題に発展する可能性があります。したがって、毎回の確認作業を怠らず、コツコツと取り組む姿勢が重要です。
例えば、ひとつの業務に責任感をもって取り組める人や、数字の扱いに慣れている人は、経理の転職市場でも評価が高いでしょう。
経理の仕事では、コミュニケーション能力も重要です。なぜなら、経理部門の仕事は企業全体のお金の流れを管理しなければいけないので、経理部署内だけで仕事は完結せず、仕入れや売り上げ、在庫、コストの状況など、常に他部署と情報を共有・確認しながら進めなければならないものだからです。
一般的なイメージでは、「経理はデスクワークばかり」「経理の仕事は人としゃべる機会がない」というようなことが言われますが、これは正しくありません。むしろ、積極的に会社内の人たちとコンタクトを取らなければ仕事の効率性は上がりませんし、場合によっては、取引先や外部の税理士や公認会計士などとも直接やりとりする場面も出てきます。
したがって、経理部門への転職を検討する際には、人との会話が得意であったり、取引や交渉などに慣れているというポイントを強みにできます。
ここまで経理職への志望動機の書き方について解説していきましたが、そうはいっても上手く書けない人や、書けたけどいいのか悪いのか分からない人も多いのではないでしょうか。そんな時は、就職エージェントや転職エージェントに添削の依頼や相談をするのがオススメです。弊社ヒュープロでは新卒・中途ともに選考や面接のサポートをさせて頂いておりますので、ご利用いただくメリットをご紹介します。
ヒュープロはこれまで多くのご登録者様の就職や転職を支援してきた実績がありますので、そこで蓄積されたデータから多角的な視点で書類通過率を高めるための志望動機の添削ができます。今回ご紹介した書き方以外にもイメージを言語化する方法などの細かい部分も含め数多くのノウハウを有しているので、個別に最適なアドバイスができるのです。
先ほど紹介した企業ごとの志望動機については、重要ではあるものの企業研究にかなりの時間を費やす必要があります。ヒュープロは求人掲載企業との関係も深く、詳細な企業情報を持ち合わせていますので、わざわざ調べる手間が省けるほか、一般的には得られないようなリアルな情報も提供できます。
今回は経理職への志望動機の書き方を解説させて頂きました。
それぞれで経理で働きたい理由はあると思いますが、それを如何に伝えるかによって選考の通過率は変わります。採用する企業側に「欲しい!」と思わせるために、職種や企業へ応募した理由、そしてその企業でどのような役割を果たせるのか、を伝えるのがポイントです。ただし、全て一人で行う必要は全くありません。就職・転職エージェントを活用して、効率的に内定を勝ち取りましょう!
当コラム内では、経理の面接ついての記事を他にも公開しています。併せてぜひご一読ください。
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