ROEを見れば、企業が利益をどれだけ株主に還元しているか収益性を見る目安となるため、ROE平均値を押さえて各企業の評価に使いたい方も多いでしょう。
この記事では、日本の上場企業におけるROE平均値の推移や、業種別のROE平均値を紹介します。投資したい企業の見極めなどにROE平均値をご活用ください。
ROE(自己資本利益率)は、自己資本をもとにどれだけの利益をあげられたかを表す指標で、「ROE=当期純利益/自己資本」の数式にて求められます。
日本・米国・欧州の上場企業におけるROE平均値の推移は、経済産業省の資料によると次のようになります。
日本の上場企業におけるROE平均値は、2018年度は9.4%で、ここ5年ほどは8%から10%の間で推移しています。2018年度上昇傾向にはありますが、欧米と比較するとやや低いです。
特に米国のROE平均値は、2017年:16.8%・2018年:18.4%と、単純に2018年の値を比べると日本とは倍近くの開きがあります。
ROEは「売上高利益率×総資本回転率×財務レバレッジ」からも算出できます。経済産業省の同資料によると、日本の売上高利益率は上昇傾向にありますが、それでも5〜6%程度と、8〜9%台の米国や7〜8%台の欧州欧米と比べると低い水準で推移しています。
日本のROE平均値が米国の半分程度なのは、この売上高利益率の低さも一因です。
また、ROEは自己資本に占める当期純利益の割合であることから、つまりは株主に分配する利益をどれだけあげられているかという指標にもなります。
日本企業は欧米企業と比べて、利益を上げても株主に還元せず、内部留保として企業内に貯め込んでしまいがちなことからも、欧米と比べてROEが低めに出るのではないかという説もあります。
日本の上場企業におけるROE平均値は8%〜10%程度ですが、ROEの平均値は業種の特性によって異なります。
ROEを求める数式の分母は自己資本であるため、同じ利益なら自己資本が小さくても経営できる業種のほうが、ROEは高めに出るためです。少ない自己資本でも利益を生み出せるIT業などはROE平均値が高くなり、多額の資金を必要とする金融業などはROE平均値が低くなります。
そのため、業種別のROE平均値を押さえておきましょう。経済産業省「2019年企業活動基本調査速報(2018年度実績)」によれば、次のような結果が出ています。なお、2019年度のROE平均を検索する方も多いでしょうが、同調査による数値が出るのは2021年度1月初めと予想されます。
この調査は、従業員が50人以上ならびに資本金が3,000万円以上の31,348社(回収数)と、一定の規模以上の企業を対象としています。
この企業規模における全業種のROE平均値は、2017年:9.4%・2018年:8.6%で、先ほどの上場企業におけるROE平均値(2017年:10.3%・2018年:9.4%)と比べてやや低いことが読み取れます。
また、このデータによると、2018年度におけるROE平均値が高い業種は、1位:サービス業(14.3%)・2位:卸売業(10.7%)・3位:情報通信業(10.2%)となります。
日本の上場企業におけるROE平均値は、2018年度においては9.4%であり、欧米と比べると売上高利益率が低いこともあって若干低めです。
また、ROEは自己資本が少なくても済む業種ほど高く出る傾向があるため、業種ごとに平均値の隔たりがあります。
経済産業省のデータでは、2018年度における業種別のROE平均値で最も高いのはサービス業(14.3%)で、最も低いのはクレジットカード業・割賦金融業(2.6%)です。このように、金融業のROEが低めなのは、多額の資金を必要とする事業上の特性のためです。
ROEの平均を考えるうえでは、全体の平均値よりも業種別の平均値を意識し、業種ごとに年次別の推移を見ることをおすすめします。
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