企業は採用時に労働者に「こういう条件で雇用する」という労働条件を明示する必要があります。この内容を書面で記載して労働者に交付するのが「労働条件通知書」です。従来は文書で通知していましたが、2019年4月より電子メールやPDFなどでの交付も認められるようになりました。本記事では雇用時には必ず必要な労働条件通知書について詳しく解説します。
労働条件通知書は事業主が労働者と雇用契約を結ぶ際に通知する書類なので、労働契約締結時に渡すことが一般的です。新卒採用の場合は内定を出すまでに通知します。
これはいわゆる正社員だけでなく、労働者やパートタイマーなどの短時間労働者についても同様です。
労働条件通知書は、就業規則のように全社員向けではなく、それぞれの雇用形態に応じて個人ごとに作成します。
雇用契約書と同時に交付されることが多いですが、雇用契約書は雇用形態によっては口頭でも締結される場合があるのに対し、労働条件通知書は労働基準法で義務付けられているのが大きな違いです。
雇用側が仮に労働条件通知書を渡さなかった場合は違法となり、労働基準法第120条第1号に基づき、30万円以下の罰金を科されます。
労働基準法第15条第1項には、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」と規定されています。
その明示すべき具体的な事項は。労働基準法施行規則第5条第1項に以下のとおり定められており、いずれも重要な項目です。
契約期間の定めがあるかないか、ある場合はいつからいつまでかを明示します。
就業する場所と業務内容について記載が必要です。
勤務日・休日、有給休暇の付与、始業・終業時刻を記載します。シフト勤務やフレックスタイムを導入している場合は、その時間帯の明示が必要です。他にも業務時間中の休憩時間、時間外労働や休日出勤がある場合はどのくらいの頻度で発生するのか、その時間も明示します。
給与の締め日・支払日・支払い方法、また月給なのか、時間給なのか、出来高制なのかといった基本賃金体系を記入します。+諸手当がある場合はそれも記載が必要です。
時間外、休日又は深夜労働に対して支払われる割増賃金率についてもこの欄に書いておきましょう。また昇給・賞与・退職金などの有無についても、パートタイム労働法の改正により新たに明示が義務付けられました。
定年制があるのか、その後の継続雇用があるのかといったことや、自己都合の場合は何日前までに届け出るべきか、その際の手続きなどについて記載します。
もし、明示すべき事項の内容が膨大なものとなる場合は、当該労働者に適用される就業規則上の関係条項名を書きます。
そのほか、以下の事項についても記載します。
・社会保険の加入状況および雇用保険の適用の有無
・退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払いの時期に関する事項
・臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及びこれらに準ずる賃金並びに最低賃金額に関する事項
・労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
・安全及び衛生に関する事項
・職業訓練に関する事項
・災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
・表彰及び制裁に関する事項
・休職に関する事項
労働条件通知書については、ひな形が厚生労働省ホームページに掲載されています。必要に応じて利用可能です。
参考:厚生労働省 主要様式ダウンロードコーナー
これまでは必ず書面で交付が必要であった労働条件通知書ですが、2019年4月からは電子交付が認められています。ただし、これは労働者が希望し、交付したものを印刷できることが前提条件となっています。
あくまで個人向けの通知なので、第三者がアクセスできるようなWEBサイトへのアップや、共有ドライブなどへの格納は法令違反になる恐れがあります。
現段階で認められているのは、FAX送付か、電子メールなど特定個人の身が受信可能な通信方法による交付です。
SNSについては禁止されてはいませんが、本文にそのまま記載するのではなく、PDFなどの印刷が可能な添付ファイルで送信するのが前提となっています。