会計事務所はブラックというイメージが強く、「ブラックリスト」の存在を懸念する方もいらっしゃるようです。果たしてその噂は本当なのでしょうか?
今回は会計事務所全体のブラックと言われているイメージの実態や、ホワイトな事務所で働くための見分け方などをご紹介します。
会計事務所への転職事情については下記のコラムでも詳しく紹介していますので、あわせて是非ご覧ください。
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ブラックな会計事務所は、残念ながら決して少なくありません。
他の業界や業種に比べても、その割合は比較的高めと考えられています。
その要因の一つとして、会計事務所は繁忙期と閑散期の波が大きいことがあげられます。閑散期は一般的な仕事と変わらない働き方でも、繁忙期には残業や休日出勤が増えてしまい、社員が過酷な労働を強いられてしまのです。
もちろん、残業や休日出勤が増えた分、社員の労働環境に気を配り、代休を取得できることもありますが、会計事務所によって所長のコンプライアンス意識が違うので、取得できないことが当たり前のようになっている会計事務所があるのも事実です。
また、年収がそこまで高くないのも「ブラック」になりやすい要因です。税理士を持っている場合、年収は500万円~800万円ほどが相場であるものの、持っていなければ300万円~450万円ほどであることが一般的です。専門的な仕事であるにもかかわらず、この程度の年収というのは、たとえ労働環境に問題が無かったとしてもブラックと感じやすいのでしょう。
「ブラック企業」という言葉は、一般的に労働基準法や労務コンプライアンスが守られていない、もしくは守っていても何かしらでストレスを抱える職場環境で離職率が高い企業を指します。そんな、「ブラックな会計事務所」には具体的にどんな特徴があるのか、見ていきましょう。
ブラックな会計事務所の最も分かりやすい理由として、残業時間が多いことが挙げられます。
一般的な企業では、月平均の残業時間で判断すればよいかもしれませんが、会計事務所の特性を鑑みると、いくつかの観点から「残業時間」を考える必要があります。具体的な見分けるポイントについては後述します。
ブラック会計事務所は、労働関係の法律を超えた労働を強制しているという特徴があります。現在では、どの企業も「働き方改革」が導入され、時間外労働の上限規制ができました。
そのため、休日出勤が当たり前で、過剰な残業状態が日常化し、法律通りに守られていない事務所はブラック会計事務所といえます。
離職率が高いことは、その事務所がブラックであるということの裏返しといえます。職場環境に不平不満があり辞める人が多いことだけでなく、常に従業員が不足して一人当たりの業務量が多いことも想定されるからです。
会計事務所の9割ほどが従業員10名未満の零細事務所であるとされています。そんな零細事務所では所長の決裁権が非常に強く、ワンマン気質の所長も少なくありません。もちろんそのような方にカリスマ性を感じる人もいらっしゃいますが、その一方で従業員にとっては働きにくい環境になっている可能性も否定できません。
特に未経験者が「ブラック」と感じやすいのが、教育環境が無い・もしくは充実していない会計事務所です。業界の特徴として、かつてはほとんどの採用が業務経験者のみであったこともあり、教育にリソースを割いていない、もしくは教育システムができていないなどといった会計事務所もいまだに存在しています。
また、特段教育が必要ないという業務経験者であっても、教育環境についてはブラックかどうかの判断軸として抑えておくことをおすすめします。教育環境が乏しいということは、そこに使えるリソースが無い、つまり人材不足であることと相関しやすいからです。
会計事務所には、税理士試験勉強をしている人も多く在籍しています。そのため、税理士試験前には試験休暇として一週間休める事務所が多く存在しています。そんな試験休暇をはじめとした税理士試験受験生向けの福利厚生が存在していない事務所は、ブラックな可能性が高いです。
この部分に関しても、たとえ税理士を目指さない方であったとしても、気にしておく必要があります。福利厚生が充実していないということは、他の労働環境も充実していない可能性も示唆するからです。
とはいえ、決して業界全体がブラックというわけではありません。ここではブラックかどうかを見分けるポイントをご紹介しますので、就職や転職の際に参考にしていただければ幸いです。
最も基本的なやり方として、求人の内容を事細かにチェックするという方法が挙げられます。「残業時間」・「年間休日」・「福利厚生」・「教育環境」などについては求人票に掲載されていることが多いので、確認可能です。
ただし、求人票には絶対に掲載しなくてはならない情報というものは無いので、必ず上記の情報が掲載されているとは限らないという点は注意が必要です。むしろ自社への応募を訴求するにあたって、マイナスイメージになる情報を好き好んで明示したがりません。
求人サイトに常に掲載されている会計事務所は、ブラックであることの裏返しの可能性が高いです。離職率が高く、新しい社員が入社してもすぐに別の社員が退職してしまっているサイクルを繰り返していることがあり得ます。
常に求人サイトに募集をかけて人を集めようとしていても、掲載する費用は安くありません。それでも、掲載しているということはそれだけ人の入れ替わりが激しいのでしょう。
また、「急募」と記載されていたらすぐに入社してほしいという意思なので、現在の状況は一人一人の仕事の裁量が多くなっていて仕事がまわっていないか、直近で退職する予定の社員がいることが考えられます。
零細事務所が多い税理士業界ですが、その中でも所長の年齢が高かったり、HPが何年も更新されていない、もしくはそもそも存在しない事務所は、代表税理士のワンマン気質が強い可能性が高いです。
所長がどういう人かによって、事務所内の雰囲気や仕事のしやすさが全然違います。特に所長が60代以上の事務所なのに、社員の平均年齢が20代~30代の事務所は危険信号かもしれません。
所長のやり方に耐えられず離職するため、40代~50代の中堅クラスの社員がいないことが考えられます。
地域や資格の内容、経験の度合いにもよって異なりますが、会計士や税理士の資格を持っていれば、基本的には年収400〜450万円程度となり一般企業とそこまでの差はありません。無資格であれば、年収350万円程度です。
しかしブラックな会計事務所は、それよりも大幅に年収が少ないことが考えられます。
応募する前にしっかりと具体的な月給や年収が提示されているか確認しましょう。
また、見込み残業込みと記載されている場合、繁忙期で見込み残業の時間を超えて残業を行なった場合もしっかりと手当てが出るのかは事前にしっかり確認を取りましょう。
もし、求人サイトに社員の平均年齢が記載されていなかった場合、面接の最後の質問の際に確認しておくとよいでしょう。前項にも述べた通り、平均年齢が若い場合は離職率が高く入社して5年未満の社員が多い可能性があります。
基本的には離職率が高い=ブラック会計事務所なので気を付けましょう。
例えば、会計士や税理士の有資格者が所長以外にいない会計事務所は危険です。実は、意外にも有資格者が所長以外に誰もいないなんて会計事務所もあるのです。そうなると、有資格者が転職した場合、とても負荷がかかることは目に見えています。
もし、まだ資格を持っておらず、勉強しながら実務のバランスをとりたい方にも学べる環境ではないといえるでしょう。できれば、社員数が20名いたら有資格者が5人以上、科目合格者が10名程度はいる会計事務所が良いでしょう。
繁忙期の残業時間や休日出勤がどれくらいあるのか確認しましょう。ブラック会計事務所は、この部分を隠すことがあります。「繁忙期は残業あります」のように濁した記載方法とっていることもあるのです。
具体的な残業時間や休日出勤日数は必ず確認しましょう。中には、繁忙期は休みなしですが、閑散期に1か月交代で有給休暇や代休を利用して休めるなんて会計事務所もあるようです。
特に残業については、月平均だけでなく「繁忙期の残業時間」および「みなし残業時間」についても確認しましょう。激務になる月はどのくらいの残業が発生するのか、みなし残業の時間が極度に少なくないかは、ブラックかを見極める重要なポイントです。
月給と年収を確認しましょう。「経験に応じて給与が変動します」や「年収応相談」と求人広告に記載されていることもありますので、自身がどれだけの年収をもらえるのか、サービス残業はないかなど他の会計事務所と比べてみると良いでしょう。明らかに低い年収の場合は、今後の昇給も少なく、ブラック会計事務所の可能性があります。
実際の面接において、上記のような質問は正直しづらいと思う方も多いはずです。であれば、ブラックな会計事務所を見分けるコツと合わせて、ホワイトな会計事務所の特徴も把握しておくのがオススメです。これにより、一層ブラックな会計事務所を選んでしまう可能性を排除できるはずです。
先述したように、ブラックな会計事務所はマイナスイメージになる情報を求人に記載したがらない一方で、ホワイトな会計事務所はしっかりと記載しているだけでなく、むしろアピールポイントとしていることも少なくありません。そのため、「ホワイトな会計事務所を選ぶ」という観点では、この数字が10%以下と記載されているかどうかを軸とするとよいでしょう。
残業や休日出勤は重要なポイントとしてお伝えしましたが、有給休暇についてもホワイトかどうかの指標の一つとすることができます。ここで気をつけておくべきなのが、有給の付与日数ではなく実際にどの程度活用されているのかを表す有給消化率を見なくてはならないということです。
いくら付与される日数が多くても、それをちゃんと従業員が使えているのかについては有給消化率でないと把握できません。基本的には100%の消化率であれば、ホワイトであるといえるでしょう。
働きながら税理士試験の勉強をしようとしている人だけでなく、そうでない人もこの試験勉強の応援環境については、確認する価値があります。具体的には、試験休暇や予備校通学の日の時差出勤などが可能といったものが該当しますが、先ほどの有給消化率と同じく実績を知ることも大切です。
今回の場合、実績というのは実際にその事務所で働きながら試験合格した人の有無、およびその人数ということになります。これは、ご自身に試験の受験予定があるかどうかに関わらず、働きやすさを測る指標とすることができるでしょう。
ここまでは、これから会計事務所で働くことを検討している方向けにブラックかどうかの見分け方などを解説しましたが、そのようなポイントを把握せずにブラックな事務所に在籍してしまっているという方はどうすればよいのでしょうか?
当然ですが、できるだけ早く転職した方がよいです。ご紹介したような見分け方を理解しておけば、次の職場ではブラックな環境で働かなくてよくなるでしょう。
かつてブラックな会計事務所で働いていた方の話を聞くと、退職を申し入れても受理されず、なかなか退職できなかったというケースもあるようです。代表先生はもちろん、同僚も「あなたが辞めたら、じぶんがもっと大変になってしまう」と考えるため、引き留めに入る傾向にあるようです。
ただ、退職は労働者の権利であるため、引き留めに必ずしも応じる必要はありません。これまでの業務経験を活かして、働きやすい環境で更なるスキルアップを目指すべきなのです。
先述したように、マイナスの影響を与えかねない数字や環境については、求人票にわざわざ書かないことも多いです。
そのような部分を懸念点として、面接時に質問すれば解決するかもしれません。しかし、働き方に関する質問などを過度にすると「働き方さえよければどの事務所でもいいのではないか」など、無駄な疑念を抱かれて合格が出ない可能性もあります。
そうならないためにオススメなのが、転職エージェントの利用です。転職エージェントは求人票に記載されていない企業情報も詳細に把握しているため、リアルな情報を採用側に直接質問せずとも得ることができます。
特に税理士事務所への転職には、士業・管理部門特化の転職エージェントであるヒュープロをご活用ください。業界特化のため、選考通過率の高い面接対策や書類添削も実施でき、面接の日程調整や年収交渉など、自分では面倒と思える部分も対応してくれます。まずはご相談から、お待ちしております。