連結決算を始めるにあたって最初に検討すべきなのは、連結決算の対象範囲です。対象範囲が間違ってしまえば、不必要な作業が生じてしまい事務効率が悪化するだけでなく、間違った連結財務諸表を作成していることにもなりかねません。連結決算の対象範囲の決め方を順に説明していきます。
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対象会社が子会社に該当しない場合は連結決算の対象となりません。ここで問題となるのは子会社の判定です。下記の基準を満たすと子会社に該当することになります。
(1)議決権の過半数を所有している場合
(2)議決権を40%~50%所有+緊密者の議決権や役員関係など一定の条件を満たす場合
(3)議決権を0%~40%所有+緊密者の議決権を合わせると過半数を超える場合+役員関係など一定の条件を満たす場合
上記のとおり、(1)の議決権の過半数を所有している場合は議論なく子会社の判定です。(2)は議決権を40%~50%所有しており、経営方針を支配する重要な契約がある場合や、多額の貸付金を有している場合などの条件がある場合には子会社となります。(3)は0%~40%の議決権を所有し、かつ、子会社や役員といった緊密者も対象会社の議決権を保有し合計で過半数を所有している場合に条件次第で子会社となります。
原則として、すべての子会社を連結対象とすることが定められています。ただし、実務や投資家の意思決定情報として有用であるかどうかを鑑み、下記のとおり例外と容認基準が定められています。
(1)支配が一時的な企業
(2)連結することにより投資家など利害関係者の意思決定を著しく誤らせるおそれのある企業
上記の2点が連結決算の対象とならない例外として挙げられています。(1)の支配が一時的な企業とは、例えば半年間は議決権の過半数を所有しているが、その後は売却することがすでに決定している場合などを言います。一時的であるのにも関わらず連結決算をすることが実務上の手続が過大となりすぎるためです。(2)は、例えば本業は製造業を営んでいるが、金融業といった特徴的な財務諸表の会社を連結対象とすることで、本業の製造業が大事であるにも関わらず、連結決算が金融業を連結したことによる影響で数字を読み解くのが、著しく難しくなる場合などが想定されています。
重要性の乏しい小規模子会社は連結決算の対象に含めないことができます。たくさんの小規模子会社を抱えている上場企業などでは、全ての子会社を連結するには実務上困難であること、重要な子会社はすでに連結されているので、小規模な子会社が連結されないでも、利害関係者の意思決定を誤らせるおそれは小さいこと、が理由です。
それではどのように連結の対象とすべきか、連結に含めなくてよいのかの判断をすれば良いのでしょうか。質的重要性の観点と量的重要性の観点の2点から検討し判断する必要があります。
質的に重要な子会社とは下記の4つの場合をいいます。
1,中長期の経営戦略上重要な会社
2,製造、販売、流通、など業務の全部または重要な一部を担っている会社
3,セグメント情報の開示に重要な影響を及ぼす会社
4,多額の含み損、発生可能性の高い重要な偶発債務がある会社
上記の子会社は、連結財務諸表に与える影響が重要であるため、数字の大きさに関係なく、重要性がある子会社と判定され、連結決算の対象となります。
子会社の財務数字を検討する必要があり、最低でも下記の4つ項目をもって量的重要性を検討することが求められています。
1,資産基準
2,売上高基準
3,利益基準
4,利益剰余金基準
例えば、②の売上高基準であれば、「連結決算の対象外の子会社の売上高合計÷連結決算の売上高」で割合を計算します。実務上何%以上であれば対象外としてよいという基準はありませんが、社内規定で例えば3%といった基準値を事前に定めておく必要があります。
最後にまとめとして連結決算の対象かどうかを検討する実務上の手順を解説します。
1,議決権を過半数持っていれば子会社に該当。
2,議決権が0%~50%であれば、一定の条件のもと子会社に該当。
3,上記の子会社のうち、支配が一時的である場合や特殊な子会社の場合は例外的に連結決算の対象に含めないことができる。
4,残った子会社の重要性を検討。質的、量的に判定し重要な子会社のみ連結決算の対象とする。
上記の4ステップをもって連結決算の対象とすべきかどうかを判定していきます。一見すると複雑にも見えますが、順を追っていくと適切に対象かどうかを判断できるようになります。連結決算の実務担当者に少しでも参考になる情報となれば幸いです。
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