税理士試験は難関国家資格の一つです。弁護士・公認会計士・医師資格と比べると難易度が低い試験ですが、それでも取得までの平均年数が10年程度とも言われる難関試験です。本記事では、税理士試験の難易度や合格率について、選択科目や受験生の年齢区分などによる違いにも触れながら解説します。
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過去の税理士試験の受験者数・合格者数・合格率は以下の通りです。
2020年 | 26,673人/5,402人/20.3% |
2019年 | 29,779人/5,388人/18.1% |
2018年 | 30,850人/4,716人/15.3% |
2017年 | 32,974人/6,634人/20.1% |
2016年 | 35,589人/5,638人/15.8% |
2015年 | 38,175人/6,902人/18.1% |
税理士試験の合格率は、おおよそ15%~20%の範囲内におさまっています。ただし、年度によって多少のバラつきはあります。
税理士試験の合格率だけに焦点をあてると、他の難関国家資格よりも高い合格率を維持していることが分かります。例えば、司法試験予備試験や司法書士、不動産鑑定士試験における最終合格率は5%程度です。これと比較すると、必ずしも税理士試験の突破が難しいわけではありません。
ただし、注意しなければいけないのは、試験の合格率と難易度がそのまま直結するわけではないという点です。例えば、司法試験の合格率は近年20%程度とされていますが、これは司法制度改革の影響によるものです。より踏み込んで実情を考えると、法科大学院を卒業するか司法試験予備試験に突破した優秀な人材だけが受験できる司法試験、そしてそれに合格するのが20%です。かなりの難易度だと言えるでしょう。
税理士試験についても同様のことがあてはまります。科目合格制が採用されているために、各科目の受験生のレベルは極めて高いという実情があります。その中で15%~20%の上位に入るのはそう簡単なことではないでしょう。
税理士試験では科目合格制が採用されているために、各科目の合格率や難易度が受験生の受験戦略に重要な影響を及ぼします。
2020年における税理士試験の科目別の受験者数・合格者数・合格率は以下の通りです。
簿記論 | 10,757人/2,429人/22.6% |
財務諸表論 | 8,568人/1,630人/19.0% |
所得税法 | 1,437人/173人/12.0% |
法人税法 | 3,658人/588人/16.1% |
相続税法 | 2,499人/264人/10.6% |
消費税法 | 6,261人/782人/12.5% |
酒税法 | 446人/62人/13.9% |
国税徴収法 | 1,629人/198人/12.2% |
住民税 | 381人/69人/18.1% |
事業税 | 335人/44人/13.1% |
固定資産税 | 874人/118人/13.5% |
上記のように、各科目の合格率には違いがあります。合格率だけを重視して選択科目を選ぶのなら、住民税や事業税、所得税法を選択するのが賢明でしょう。他方、合格率の高さが試験自体の難易度に直結するわけではない点には注意が必要です。各科目ごとに学習内容や志願者レベルにも違いがあります。安直に合格率の違いにだけ注目して選択科目を決定するべきではありません。
2020年における税理士試験の学歴別の受験者数・合格者数・合格率は以下の通りです。
大学卒 | 20,166人/3,896人/19.3% |
大学在学中 | 1,143人/373人/32.6% |
短大・旧専卒 | 676人/117人/17.3% |
専門学校卒 | 2,409人/405人/16.8% |
高校・旧中卒 | 1,912人/456人/23.8% |
その他 | 367人/155人/42.2% |
受験者の大半を占めるのは大学卒ですが、合格率が高いのは大学在学中です。仕事をしながら税理士試験に合格するのは難しいことが分かります。勉強時間が確保しやすい大学在学中の方が合格しやすいと言えるでしょう。
税理士試験では、受験者の年齢ごとに合格率が違います。20代の大学生などの合格率が高いのは国家試験である以上当然とも言えますが、注目すべきは30代、40代の受験者の合格率も一定水準程度に維持されている点です。
2020年における税理士試験の年齢別の受験者数・合格者数・合格率は以下の通りです。
41歳以上 | 10,105人/1,334人/13.2% |
36~40歳 | 4,343人/832人/19.2% |
31~35歳 | 4,619人/1,002人/21.7% |
26~30歳 | 3,890人/977人/25.1% |
25歳以下 | 3,716人/1,257人/33.8% |
試験勉強の時間を確保しやすい25歳以下の合格率が高いのは当然です。ただ、26歳以上の年代についても、高い合格率が維持されています。つまり、社会人として働きながら税理士試験にチャレンジする人にとっても、税理士試験の合格を狙うのは決して非現実的なことではないと言えます。自分の置かれた環境の中でベストを尽くすことさえできれば、キャリアアップを狙えるでしょう。
税理士試験の難易度が高いと言われるのは、出題内容の難易度が高いこと、出題範囲が広いこと、すべてを網羅的に勉強するための時間がかかることがその理由として挙げられます。そこで、以下では税理士試験に合格するために一般的に必要とされている勉強時間や、各科目ごとの勉強時間の違いについて説明します。
以下の図は、一般的に 税理士試験の合格のために必要とされる勉強の所要時間目安です。明らかなように、特に所得税法や法人税法などの勉強時間がずば抜けて長いとされています。これは、税法科目の範囲が圧倒的に多いことに起因するものです。
もちろん、この図に示した勉強時間の違いはあくまでも目安です。既に簿記の知識があったり、会社に勤めながら税理士試験を目指している人の中には経理部門などで日常的に会計業務に従事している人もいるでしょう。このように、ある程度の素養がある人が税理士試験を目指す場合には、もう少し合格までの時間は短縮されると考えられます。
必要な勉強時間をクリアするためのカリキュラムは、各受験生の状況や環境に応じて設定しなければいけません。例えば、必須科目である簿記論と財務諸表論は、税理士試験合格を目指すにあたっての入口とも言える科目です。この2科目の勉強時間を併せると、合計900時間の受験勉強が必要とされます。
では、この900時間をどのように捻出すれば良いのでしょうか?それは、各受験生の環境や状況に応じて考える必要があります。
例えば、大学生のように試験勉強の時間を作りやすい人にとっては、毎日10時間の勉強を90日、つまり最短で3ヶ月で合格に必要な勉強時間をクリアできます。他方、働きながら合格を目指す社会人の方にとっては、毎日10時間の勉強時間を作ることは不可能でしょう。平日1時間、土日に10時間ずつというように、柔軟なカリキュラム計画を作成する必要があるでしょう。
そして、大切なことは、必要とされる勉強時間をクリアすることではなく、いかに集中して学習を進め、合格水準レベルの能力を身につけるかという点です。特に社会人の方は、大学生と比べて勉強時間を作ることはできません。そうであるならば、限られた時間を有効に活用できるような勉強計画を立てるべきです。
加えて、税理士試験は、簿記論と財務諸表論に合格すれば終わりではありません。残りの3科目も合格してようやく最終合格に到達できます。5科目合格するためには、その受験期間は仕事以外は自分の生活をすべて試験に捧げるくらいの覚悟で取り組まなければ、なかなか合格することは難しい試験です。
税理士試験を目指す以上、予備校を利用して勉強を進めるのか、独学で試験にチャレンジするのかを決めなければいけません。この選択は、各受験生の状況ごとに、効率良く勉強を進められそうな方を選択すべきです。
そもそも、予備校と独学とで合格率に違いはありません。予備校を利用しようが独学で試験に挑もうが、税理士試験とは自主的に勉強を進めなければ突破できないものだからです。
予備校のカリキュラムや自習室を利用したいという人は、予備校を活用すべきです。予備校を利用すればモチベーションの維持にも繋がります。他方、自分のペースでゆっくりと学習を進めたいという人は独学で十分です。そもそも、予備校を利用するにも高額な費用がかかるので、誰しもが予備校を利用できるというものでもないでしょう。
税理士試験は難易度が高い試験なので、1年間ひたすら頑張って受験しても不合格となる場合も少なくはありません。そのような中長期的な資格チャレンジだからこそ、複数年度にわたって挑戦するためのモチベーションを前向きに保てる状況を選択してください。
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