女性の場合、出産や育児などのライフイベントが働き方に大きく影響します。女性が社会保険労務士資格を取得する場合、どのような働き方が想定されるのか、その年収はどのようなものなのかを知っておくことが、社会保険労務士資格取得を考える際の検討材料となります。今回は、これから社会保険労務士資格を目指す女性が知っておきたい年収について解説していきます。
まず、社会保険労務士とは、社労士とも言い、企業の「人材」に関する専門家で、人事・労務や社会保険などの各種保険について専門的に取り扱います。
〈参考記事〉
社労士の女性の割合は、年度によって変動はあるものの平均的に合格者のうち3人に1人となっています。
実際に令和6年度の第56回社会保険労務士の合格者の男女別構成は、男性(61.1%)、女性(38.9%)となっています。
さらに過去の推移を確認すると、下記のように女性の社労士の割合は増加傾向にあることが分かります。
今後も伸びていくと予想できるでしょう。
年度 | 男性の割合 | 女性の割合 |
---|---|---|
2024年度 | 61.1% | 38.9% |
2023年度 | 67.0% | 33.0% |
2022年度 | 67.3% | 32.7% |
2021年度 | 67.9% | 32.1% |
2020年度 | 68.3% | 31.7% |
弁護士や公認会計士などの他の士業資格と比較しても、社労士はトップクラスで女性が活躍している資格です。
士業名 | 男性の割合 | 女性の割合 |
---|---|---|
社会保険労務士 | 67.0% | 33.0% |
税理士 | 84.4% | 15.6% |
公認会計士 | 88.0% | 12.0% |
弁護士 | 80.2% | 19.8% |
司法書士 | 81.0% | 19.0% |
女性の割合が3割を超えているのは社労士のみであり、女性に人気のある資格であることが分かります。
社労士について、将来性や知名度、難易度の高さといった理由から「やめとけ」と言われることもありますが、上述の通り、女性社労士も多くいらっしゃるのは、それだけ働く魅力があるからです。
ここでは、社労士が女性に人気の理由として以下3点をご紹介します。
社労士の仕事は、給与計算の手続きなどの事務作業やコンサルティングが中心であり、体力勝負の仕事ではありません。そのため、年齢や性別に関係なく活躍できる仕事である点で、女性が活躍しやすい資格であり取得する人が多いと考えられます。
〈参考記事〉
詳しくは後述しますが、独立開業から企業に所属して働くというように、社労士としての働き方は多岐にわたります。
他の士業資格であれば開業するという選択が多いですが、独立開業すれば社労士としての業務に加えて経営の管理などを行う必要があり、子育てや介護中の場合には時間の確保が難しいことが懸念されます。
しかし、社労士の場合には必ずしも独立開業する必要がなく、企業に勤めるという選択肢もあるため、女性でも安心して働けることが人気の理由の一つでしょう。
社労士はワークライフバランスを実現しやすい資格です。
社労士という職業柄、子育てや介護に理解のある事務所が多いため、短時間勤務なども選択しやすく、家庭との両立を目指しながら短時間で働き、状況に応じてフルタイムに切り替えることも可能です。さらに、開業することによって自分のペースで仕事をすることも可能なため、ライフステージに合わせて働き方を選べるといえます。
また、社労士資格は一度取得すれば生涯有効のため、出産や育児、介護などのライフスタイルの変化により仕事から離れる期間があっても、復帰しやすい点も魅力の一つでしょう。
社労士の仕事には、出産や給与、年金など実生活に関わる分野が多いため、出産や育児、介護などを経験したことがある女性であれば自身の経験が活かしやすいという点も人気の理由の一つでしょう。
そうした自身の経験をもとに、当事者目線で改善策を提案して、顧客の気持ちに寄り添うことができるのは女性ならではの強みといえるでしょう。
社労士としての働き方としては、独立開業以外にも、企業に所属して正社員や契約社員などとして働く方法があります。
「開業社労士」とは、自身で開業をし、事務所を開くなどして事業主となり働く方法を言います。
大阪大学の社労士科研報告書第2部に記載されている開業社労士の比率調査を見てみると、社労士資格保持者のうち約8割以上の人が開業社労士であることがわかります。
開業であれば、自分のペースで仕事の量を調整することができるため、子育てなどを優先したい場合には件数を押さえたりと融通をきかせられます。
ただ、自身の営業力や事務所の売り上げが収入に直結しているため、収入が安定しづらい点には注意が必要です。
〈参考記事〉
「勤務社労士」とは企業や事務所などに所属し働いている社労士のことを言います。
社労士事務所や一般企業の人事・総務部などに所属して働きます。
勤務社労士として働くことのメリットは、給与や福利厚生が安定していることが挙げられます。開業よりは高年収を望めない場合が多いですが、労働時間を増やさずともコンスタントに安定した収入を見込める点は魅力といえるでしょう。
〈参考記事〉
では、気になる女性社労士の年収について見ていきましょう。
男性の平均年収 | 約514万円 |
女性の平均年収 | 約434万円 |
同じ士業資格である公認会計士の男性の平均年収が766万円、女性が509万円と約257万円の差があることを考えると、社労士は男女格差の少ない職業であるといえるでしょう。
これは社労士が専門性の高い国家資格であるためニーズが高く、子育て中などにも柔軟に働けたり、復帰しやすいことが要因として考えられます。
また、基本的に社労士業界の転職や就職では経験やスキル、そしてなんといっても資格の有無が重視されるため、女性の社労士が活躍できる点が考えられます。
〈参考記事〉
社労士は性別による年収の差が少ないことが分かりましたが、さらに高い年収を実現するには、どのような方法が考えられるでしょうか?
ポイントとなるのは、スキルアップとキャリアチェンジです。
社労士の業務のうち、1・2号業務と呼ばれる書類作成等の独占業務ではなく、3号業務と呼ばれるコンサルティング業務を極めることで、市場価値が上がり年収も高くなる傾向があります。
1・2号業務は今後AIに代替される業務と言われていますが、人事制度や人事評価構築などのコンサルティングである3号業務は人しかできない業務です。もちろんコンサルティングは社労士の独占業務では無いので、社労士としての価値を上げる要因になるのか懐疑的な方もいらっしゃるかも知れませんが、労務の専門家である社労士にコンサルティングを依頼する企業が多く需要も高いため、十分に年収を上げる要素になり得ます。
<関連記事>
社労士事務所などで働く勤務社労士の場合は、開業をして独立したり、昇給していくことで大きな年収アップを狙うというケースが多くなります。
また、キャリアや経験を活かしてより収入の高い職場に転職するというのも一つの方法です。特に小規模な事務所からの転職であれば、全国展開しているような社労士法人に転職すると年収アップが実現しやすいでしょう。
転職することで、今まで培ってきたスキルや経験に見合った報酬を得ることができ、また自分の価値を高く評価される機会にもなるため、さらなるキャリアアップと年収アップを狙うことができます。
《参照記事》
ヒュープロでは、社労士の方への人材紹介サービスを展開しております。
就職・転職活動にあたって、自分で応募する求人を探したり面接の日程調整をするのは骨が折れるものです。そこで活用すべきなのが人材エージェントです。希望の条件やご自身の経歴などを伝えることで効率的に求人を提供され、日程調整もエージェントが実施してくれます。また書類添削や面接対策といった選考準備に対しても、専任アドバイザーによるサポートが充実しています。
さらに、業界特化型エージェントにおいては、士業バックグランドを持つ人材の転職支援実績を多く有しているため、企業として一定の選考に係るナレッジや企業とのパイプラインを有しており、転職に関するリアルな情報提供が可能です。
業界特化の転職エージェントを利用することで、ライバルと差別化を図ることができ、転職を有利に進めることが可能ですので、ぜひ検討してはいかがでしょうか。
将来に向けたキャリアパス・キャリアプランのご相談や、転職市場のご説明などももちろん可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。
〈参考記事〉
株式会社ヒュープロでは、士業・管理部門に特化した転職エージェントサービス「ヒュープロ」を提供しております。
ここでは、ヒュープロで取り扱っている女性の社労士向けの一部の求人をご紹介します。
社会・労働保険の諸手続き/給与計算/労働相談/就業規則作成/助成金申請
・必須業務経験:社労士事務所での実務経験
・必須資格:社会保険労務士資格
330〜450万円
手続き全般/給与計算(複数担当制あり、担当制ではあるが読み合わせ等協力体制あり)/助成金支給申請(限られたもののみ)/事務組合関係業務/電話応対・接客
・必須業務経験:給与計算経験2年程度あり
・歓迎業務経験:社労士事務所勤務経験2年程度あり
・歓迎資格:社会保険労務士
300〜500万円
・労務業務
勤怠管理/給与計算(社労士事務所との連携)/各種社会保険手続き(社労士事務所との連携)/入退社手続き(マイナンバー管理含)/住民税年度更新、労働保険年度更新、年末調整などの年次業務/雇用契約管理・派遣社員管理/休職者対応(育児休暇含む)/安全衛生関連(休職者管理、メンタルヘルス、健康管理含む)実務の運用および施策の企画/労務問題対応/人事関連規程・協定の整備、管理
・総務業務(一部担当いただく可能性あり)
PC/アカウント管理/備品管理や発注/電話、受付、来客対応/業務フローの作成/文書管理
・必須業務経験:社会保険手続き、給与計算実務経験等の労務業務経験をお持ちの方(3年以上目安)/一連の労務業務を自ら先導して進めることができる方
・歓迎業務経験:労務業務においてのリーダー経験がある方/業務設計に興味がある方
・必要資格:社会保険労務士有資格者、もしくは勉強中の方/労働基準法等の人事関連の法的知識をお持ちの方
※事業会社の経験は問いません
600〜730万円
最後に、社労士を目指す方からよく聞かれる疑問についてお答えします。
上述の通り、労務や社会保険の専門家である社労士を目指すにあたって、「やめとけ」という意見が出てくることがあります。
その理由としては、DX化で業務が削減されることによる将来性への不安や、知名度の低さ、難易度の高さが主に考えられます。
確かに、社労士試験の合格率は例年6%前後を推移しており、2024年の試験でも6.9%と非常に低い数字であるため、合格までの道のりが厳しい資格であると言えます。
しかし、上述の通り、社労士の業務の中でもコンサルティング業務については今後もニーズが高まることが予想されます。また働き方改革などに伴い、企業が対処しなければいけない労務問題は増加しているため社労士が活躍できる機会は多くあるといえるでしょう。
知名度の低さに関しても、弁護士や税理などの他の士業に比べれば低いといえますが、そのことが社労士の仕事の意味につながるわけではありません。社労士は企業と労働者が安心して活動できる環境を守る重要な役割を担っています。今後の社会においても社労士が果たす社会的な意義は拡大していくことが予想されるため、目指す意義のある資格であるといえるでしょう。
〈参考記事〉
社会保険労務士の年収は男女の差も少なく、女性が活躍しやすい仕事であるといえます。また、資格取得の際も仕事をしながら取得が可能であり、一度取得をすると一生の資格としていつでも活用することができます。よって、出産や育児などのライフイベントに合わせた再就職がしやすく、女性におすすめの資格となっています。