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税理士試験における簿記論の難易度や勉強時間を徹底解説!

HUPRO 編集部
税理士試験における簿記論の難易度や勉強時間を徹底解説!

税理士試験の入り口となっている科目の簿記論。税理士を目指そうかなと考えている人が、一歩を踏み出すのに気になるのがその難易度です。税理士試験全般が合格率の低い難関試験ではありますが、受験者数や合格者数といった数字を並べられても、実際のところ自分はどのくらい努力すれば合格できるのか、なかなかイメージできないものです。

また、勉強を始めるのにも勉強時間や教材費・授業料を考えると、気軽に挑戦するというわけにはいかないと思います。本記事では、税理士試験受験への第一歩を踏み出そうか迷っている方に向けて、税理士試験の最初の入り口である簿記論を中心に解説していきます。

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簿記論(税理士試験)とは

簿記論は、税理士試験における必須科目のうちの一つです。選択必須科目や選択科目とは異なり、簿記論は必須科目なので、避けては通れない科目となっています。

税理士試験には、簿記論・財務諸表論・所得税法・法人税法・相続税法・消費税法・酒税法・国税徴収法・住民税・事業税・固定資産税の11科目があります。税理士になるためには、11科目のうち5科目の合格が必要です。

簿記論と財務諸表論の2科目が必須科目で、法人税法と所得税法が選択必須科目、残りの相続税法・消費税法・酒税法・国税徴収法・住民税・事業税・固定資産税の7科目が選択科目になります。

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簿記論(税理士試験)の勉強時間は?

一般に、簿記論合格に必要な勉強時間は450時間と言われています。日商簿記1級合格直後であれば450時間は必要ないかもしれませんが、そのようなバックグラウンドがなければ、最低でも授業込みで450時間必要と考えておいたほうが無難でしょう。
財務諸表論とのダブル受験の場合は勉強する内容が重なるため、2つ合わせて合計900時間あれば合格できる可能性は高くなると考えられます。
 
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簿記論(税理士試験)の難易度は?

過去の簿記論の合格率は以下の通りです。

2020年 22.6%
2019年 17.4%
2018年 14.8%
2017年 14.2%
2016年 12.6%
2015年 18.8%
2014年 13.1%

簿記論をはじめとする税理士試験は相対評価と言われています。国税庁がそのように明言したことはありませんが、どんな超難問が出題された年であっても合格率が安定していることから受験指導業界では相対評価だということが暗黙の了解(あるいは公然の秘密)となっており、相対評価を前提とした予想配点とこれによるボーダーラインが10点単位で大きくはずれることはありません。

税理士試験が相対評価の試験でありながら合格率の推移が一定の上下幅を持っているのは、ボーダーライン付近に得点者が集中しており、1点ボーダーを下げると合格率が大幅に上がってしまう、あるいはその逆、という事情があるため、そこに落ち着かせる必要があるから、とも言われています。ケアレスミスに泣く人が多いのは、1点が合否を分けるからです。

簿記論(税理士試験)は独学で合格できるのか?

この質問に対して「完全な独学で十分合格できます!」と答える受験経験者はごく少数派でしょう。「独学」の定義を「市販教材のみで勉強する」とするならば、それは一層難しいものとなります。

もし独学で挑戦1年目にして合格できるとすれば、日商簿記1級を合格し、まだその知識が定着したままの人が、独学用教材等を使って勉強し、春からの直前期だけでも受験のための実践テクニック獲得と自分の相対評価を知るために受験指導校(予備校)の通学or通信講座を受講して、さらに答練(本試験と同形式の問題)をたくさん解いて場慣れする、というようなケースでしょう。

なぜ場慣れが必要かというと、試験本番の解答時間の与えられ方が簿記論と日商簿記で異なるからです。日商簿記1級は合格レベルに到達している人にとっては解答時間が十分に与えられているといいますが、簿記論では120分間で全ての問題を解いて自分の中では正解と思える数字で解答用紙を埋める、ということは合格レベルの人でもまず不可能です。

たとえ解答時間を延長して本試験の問題を解いてみても満点を取ることは難しく、全体のスピードアップのほかに、制限時間内に自分の解ける問題を取捨選択して解ける問題から確実に得点していくことが必要です。その練習を積むためには、実践形式の問題を、自分の相対評価がその都度知れるような講座または模試で解くのが望ましいです。

また、簿記論は担当科目の試験委員によって出題傾向が異なるため、試験委員対策をしておくことも重要となります。自分で試験委員の著書を読んで出題分野の予想をするよりは、これも受験指導校で直前期に試験委員対策の指導を受けるほうが効率的と言えます。

簿記論と日商簿記1級との違い

試験の回数の違い

簿記論をはじめとする税理士試験は、年に1度しか行われません。税理士試験改革をするべきだ、という業界の声の中に「試験回数を年に複数回にする」という改革案も少なくとも10年以上前からありますが、そのような抜本的改革は現在もされていません。年に1度しかない、というプレッシャーが、受験生の大きなストレスとなっていることは間違いないでしょう。

一方の日商簿記1級は、年に2回開催されます。日商簿記3級・2級は年に3回であるのに比べると少ないですが、それでもプレッシャーの大きさやモチベーションの維持の観点からは、簿記論よりも精神的には楽なように感じる人も多いでしょう。

出題範囲の違い

 <簿記論の出題範囲>
簿記論の出題範囲は「複式簿記の原理、その記帳・計算及び帳簿組織、商業簿記のほか工業簿記を含む。ただし、原価計算を除く。」となっています。

 <日商簿記1級の出題範囲>
日商簿記1級の科目は、「商業簿記」「会計学」「工業簿記」「原価計算」があり、会計学と原価計算は簿記論の出題範囲ではありませんが、商業簿記・工業簿記は学習すべき論点が概ね重なっています。

会計学が苦手な人は、簿記論の勉強内容が日商簿記1級に比べて楽に感じられるかもしれません。
日商簿記1級の会計学は、税理士試験の「財務諸表論」の出題範囲と重なっていますから、会計学の科目が得意な人は財務諸表論合格へのハードルも他の初学者より低いと言えるでしょう。

受験者の母集団の違い

簿記論が相対評価の試験である以上、母集団の属性が気になるところです。

簿記論の受験者には、日商簿記1級の合格者が一定数含まれています。これは、日商簿記1級が税理士試験の受験資格の一つとなっているからです。日商簿記1級の合格者には大学在学中や商業系の高校卒業後に専門学校に通っている若い受験者層も多くいます。

また、大学卒業等で既に税理士試験の受験資格は満たしている人が、何か手に職をと思って日商簿記1級まで取得し、次のステップとして簿記論を受験するケースもあります。もちろん日商簿記3級・2級までの合格者や日商簿記未受験者も多く含まれているのも事実です。

さらに、税理士試験の簿記論と財務諸表論の両方に合格すれば公認会計士試験の短答式試験のうち財務会計論の科目免除を受けられるため、公認会計士を目指す人がその傍らで簿記論を受験するケースもあります。

一方、日商簿記1級受験者に税理士試験の簿記論合格者が含まれているかというと、あまり多くはありません。というのは、日商簿記1級は2級の合格者が次のステップとして受験するのが通常で、簿記論合格後は日商簿記ではなく、次の税理士試験科目に臨むからです。また、職場での評価においても、資格手当で簿記論と日商簿記1級の重複支給がないところもあり、そういった面でも受験メリットが少ないと考える人もいるでしょう。

日商簿記1級も3級・2級とは違って簿記論同様に相対評価だという意見もあります。2つの試験いずれもが相対評価であるならば、母集団にレベルの高い受験者が一定以上いる簿記論のほうが、ハードルが高いという捉え方もできます。

まとめ~簿記論合格へのアプローチ~

簿記論合格には、日商簿記1級における商業簿記・工業簿記と同等の知識は少なくとも必要となります。日商簿記1級合格者は、知識はほぼ合格レベルに近いところに達していますので、受験テクニックを身につけなければなりません。

日商簿記2級・3級レベルの人にとっては、出題論点がかなり広がりますので、独学ではなく、受験指導校の通信・通学講座を受講したほうがよいでしょう。特殊商品売買や新会計基準など、独学では理解をするのが難しい論点が多くあるので、勉強ペースをつかんだり、論点の回転(復習)を複数回して学習内容を定着させるために有効です。

簿記という分野が未経験の人にとっては、そのまま勉強を始めても、何を言っているのか最初は全く理解できないかもしれません。仕訳の意味、資産・負債・純資産等を理解するという、概念の定着から始めなければならないものですので、まずは日商簿記3級・2級から学習されるのがよいかもしれません

日商簿記未経験で会計事務所や経理等で実務に就かれている方は、日商簿記2級から学習を始めるか、受験指導校の簿記論講座で日商簿記2級レベル到達のための入門講座を扱っているところもありますので、そちらから始めるのがよいでしょう。

簿記論は、他の税理士試験科目に比べ、努力の実りやすい科目です。「簿記は仕訳」と言われるように、各仕訳の積み重ねを答案用紙上にアウトプットできれば、合格につながります。ぜひ、税理士試験の第一歩として、挑戦されてみてはいかがでしょうか?

『Hupro Magazine』では他にも税理士試験の簿記論に関するコラムを掲載しています。あわせて是非ご覧ください。
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この記事を書いたライター

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カテゴリ:資格試験
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