損益分岐点について色々とお話するのですが、「どうも計算式が覚えられない」「もっと簡単に覚える方法はないの?」というお話をよく聞きます。
そこで今回は損益分岐点の公式について解説します。
損益分岐点とは、会社の損益が分岐する時の売上高を言います。簡単に言うと、赤字でもなく黒字でもなく、ちょうど利益が0円となる売上高です。
計算式は次の通りとなっています。
損益分岐点売上高=固定費÷売上利益率
損益分岐点売上高は低ければ低いほど利益体質であると言えます。損益分岐点を下げるには、固定費を下げる、売上利益率を上げる、つまり売上単価を上げるか変動費率を下げることが必要です。
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しかし、このような計算式だと思い出せずに全く違うものを求めてしまうリスクがあります。よって、もう少し具体的に計算式を表すとすると次のようになります。
損益分岐点売上高=固定費÷{1-(変動費÷売上高)}
これでも、やはり忘れてしまうことがあります。私自身も急に聞かれると自信がなくなる時もあるので、自分でいつでも求められるようにしておくことが良いです。その際は自分で例を作って式を生み出すのが良いでしょう。
損益分岐点の公式を導くには、簡単な例を挙げると良いでしょう。例えば次の通りです。
(例)
1,000円の商品を1つ販売するのにかかる変動費が700円の商品があります。この会社は何もしなくても固定費として900円かかります。この会社の損益分岐点はどうなるでしょうか。
(解説)
公式を覚えていれば、利益率が(1,000-700)÷1,000で0.3とわかるので、900÷0.3=3,000円が損益分岐点売上高とすぐにわかるでしょう。
しかし、地道に計算するのであれば、1つの商品を売ると得られる利益1,000-700=300円をまず計算しておきます。
ここで、損益がゼロになる売上数量をxと置くと、300xが利益となります。しかし、固定費の900円が存在するので会社の利益がゼロになるためには次のように計算されます。
(計算式)
300x-900=0, x=3
あとは算数の要領で、x=3と求められます。よって、損益分岐点の売上数量が3ということがわかるため、売上単価の1,000円とかけることで3,000円が損益分岐点売上高として求められます。
これでもわかりづらい、という皆さんにはもっと直球で損益分岐点の公式をご紹介します。
損益分岐点売上高=費用の合計
つまり、かかった費用の合計だけ売上を獲得すればちょうど損益分岐点になります。イメージとしては、通帳に入ってくるお金と通帳から出ていくお金が一致するところです。これは、主に一人でサービス業を行っている業種でわかりやすい概念かと思います。
右側の費用をもう少し分解していきましょう。
損益分岐点売上高=費用の合計=変動費+固定費
変動費には、材料仕入、外注費、運送費などがかかってきて、固定費には家賃、リース料等がかかります。よって、具体的には次のような式に代わります。
損益分岐点売上高=(材料費+外注費+運送費+その他変動費)+(家賃+リース料+その他の固定費)
この数式を見てわかる通り、損益分岐点売上高を下げるためには右側の費用を下げれば良いのです。よく、公式を使っても結局何をすれば損益分岐点が下がるのかわからない人にとってはかえってこのほうがわかりやすいかもしれませんね。
ただ、同額変動費を下げることと固定費を下げることでは実際に下がる損益分岐点売上高は変わってしまうので、あくまでもイメージするための式として考えましょう。
損益分岐点売上高は売上高から見るよりも、限界利益から考えることも多いです。以前紹介しましたが、限界利益とは売上高から変動費を差し引いて計算された利益です。
よって、次のような計算式が成り立つような売上高が損益分岐点と言えます。
限界利益=固定費
固定費が上がったら限界利益を上げなければなりませんし、限界利益を上げれば固定費も上げることができます。小売業のように利益率が低い商売ですと、限界利益を稼ぐのも大変なので、初期投資はなるべく抑えて固定費を下げておくことが必要でしょう。
反対にコンサル業等は利益率が高い為、オフィスにお金をかけているところも多くなります。ただし、この計算式は限界利益「額」であって、限界利益「率」ではないので、自身の商売の利益率がいくら良いからと言って固定費が先行してしまうと損益分岐点を大きく下回る可能性があります。
損益分岐点は色々な計算式があり、公式として覚えておくのも大事ですが、迷っても自分で導けるようにしておきましょう。業種や会社によって損益分岐点は異なりますが、まずは自社の損益分岐点を知り、ここからさらに売上を伸ばしていくのか、戦略的に固定費を変化させていくのか、利益率を上げていくのか等、具体的に経営に生かしていくと良いですね。
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