「現場の実態にあった付加価値額ってどうやって求めればいいの?」
「経営改善のために生産性を向上しろと言われるけど、どんな指標を使えばいいの?」
このような実務で使える「付加価値額」の算出方法や生産性を計測するための指標についての疑問をお持ちではないでしょうか?「付加価値額」をうまく活用することで、経営状況を正しく認識し改善のきっかけを見つけ出すことができます。「付加価値額」が理解しにくいのは様々な算出方法があるからです。それぞれの業界や業務内容によって正しく修正を加える必要があります。今回の記事を読むことで、業務の実態に合った適切な「付加価値額」の算出方法を理解できるでしょう。
そもそも「付加価値」とは、企業が事業活動で社会に対して生み出した価値のことを指します。分かりやすい例を挙げると、山小屋で売られている水はコンビニで購入する水よりかなり高いことがあります。これは、山を登ってきた登山客はそこに水があって飲めることに価値を見出しているので、値段が高くても購入します。
他にも、高級ブランドの例も分かりやすいです。そのブランドが抱えるデザイナーが時間をかけて洗練したデザインを考えること、素材にこだわって作ることが価値となります。このように商品やサービスに対して、お客様がそれらを選んでくれるための付加価値を出すことが必要とされています。
この付加価値を金額として算出する方法の一つとして、企業が生み出した売上高から、他の企業が生み出した金額(仕入れなど)を差し引く方法があります。
最も簡単な「付加価値額」の算出方法は「控除法」と呼ばれる下記の計算方法となります。
総売上高から売上原価を引いて算出されるのは売上総利益(粗利益)ですので、付加価値≒粗利益と捉える計算式です。
「付加価値額」は企業の事業活動の生産性を表す指標としても利用されています。社会に対して生み出した価値を従業員数などで割ることで労働生産性の算出などに用います。「控除法」による「付加価値額」の計算が最もシンプルですが、単純な計算式のため生産性の向上のための適切な指標にはならないことが多いです。「控除法」以外のさらに正確な計算方法は、後ほど紹介します。
日本では「中小企業庁」が、日本の中小企業の生産性を計測するために毎年「法人企業統計年報」を作成しています。その集計のために、中小企業庁の規定している「付加価値額」の算出方法は「加算法」と呼ばれる以下の式となります。
参考:中小企業庁 企業規模別の付加価値額、TFPの推計方法について
この算出方法では、営業利益(営業活動で企業が生み出した価値)に流出した費用を足し戻しています。今回の指標ではそれぞれの費用が、どのような理由で足し戻されているのかを確認してみましょう。
このように、その企業が生み出した価値を正確に算出するために、営業利益に足し戻しをおこなっています。「控除法」では指標に含めることができない正確な情報を落とし込める方法といえます。
上記では、中小企業庁の定める「付加価値額」を算出する方法を計算しました。しかし、業界や企業ごとに正確な「付加価値額」を算出する方法は異なります。利用目的を明確にすることで「付加価値額」を用いた「生産性」が現場の実態にあった数値で算出されるように指標を決定しましょう。
関連記事:労働生産性を測る指標とは?
例えば製造業では、部品の仕入れの定義が企業によって異なっていることが多いです。具体的には、サプライヤーが製造現場内で部品の運搬をおこなったり、業務請負の会社が製造の一部を代行していたりします。そのため、工場全体の生産性を算出したいのか、社員の生産性を算出したいのかなどの目的によって集計するべき「付加価値額」が異なります。
このように、企業によって生産性として算出したい「付加価値額」は異なっています。「付加価値額」は経営改善に役立つ正しい計算方法があるのではなく、それぞれの企業や部署が目的を明確にして指標を作る必要があります。生産性の向上のための活動が生産性の指標に反映されるようにしましょう。
現場の社員が業務改善のための活動をした結果が、生産性の指標に数字として正しく反映されることが現場のモチベーションの向上にもつながります。「付加価値額」や「生産性」の指標づくりは現場の実態のあわせてつくるようにしましょう。
「付加価値額」の算出方法をご紹介してきましたがいかがでしょうか。中小企業庁の定める「付加価値額」の算出方法だけが正しいということではなく、経営改善のために企業内部で正確な生産性を活用するために変化させる必要があることが理解していただけたと思います。
「付加価値額」は経営改善に役立つと同時に、製造現場などでも利用可能な幅広い指標なので正確に算出できるように計算方法を工夫しましょう。「付加価値額」を算出することで、それぞれの業務がどのような価値を算出しているのか明確となり、改善活動がスムーズに進みます。「付加価値額」を正しく活用して、生産性を向上させましょう。