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遺産税と相続税との違いとは?

HUPRO 編集部
遺産税と相続税との違いとは?

自分の家族にもしものことがあった場合、相続税がかかるのか、その額がいくらになるのかというのが心配されている方も多いでしょう。相続税は遺産そのものにかかる遺産税ではなく、遺産を取得した人にかかる税金という性格を持ちあわせた税金です。本記事では、遺産税と日本の相続税の違いなどについて解説します。

日本における遺産にかかる税金について

日本では、相続の際にかかる税金はまとめて「相続税」と呼ばれます。実は相続によって遺産を受け取った人が全て相続税を支払わなくてはならないかというと、そうではありません。相続税は税額が高い上に、収められずに土地を売却したり、自宅を手放したりといった話が良くありますが、日本においては、相続税を収めなくてはならない対象になる人はおおよそ10%以下といわれています。

相続税に関する詳しい内容はこちらの記事をご覧下さい。

関連記事:資産税と相続税の違いとは?評価額や計算方法について解説!
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相続税における財産評価

この相続税は遺産税(estate tax)と遺産取得税(inheritance tax)の2種類に分けられます。つまり遺産税とは相続税の種類の1つであると言えます。
相続した財産を評価する方法は2つあります。遺産税方式と遺産取得課税方式です。

遺産税方式

遺産税方式は、相続人の人数や相続の配分などに関係なく、被相続人の財産に一括して課税する方法で、税金を差し引いた残りの財産を相続人で分ける方式です。多くの国ではこちらの方式が採用されています。

遺産取得税方式

遺産取得税方式は、それぞれの相続人が相続した財産の額に応じて課税する方法です。この場合は、遺産の分割割合に応じて相続税の合計額が変動し、より多くの遺産を相続した人がより多く課税されます。日本ではこちらの方式が採用されています。

相続税がかかるかどうかは控除の金額にもよる

日本においては、相続税がかかる人は全体の10%以下とお伝えしましたが、課税対象になるかどうかは以下の2点によって決まります。

(1)個人の遺産総額
(2)法定相続人の人数

まず、日本の相続税においては、遺産が一定額以下の場合は課税されない「基礎控除」があります。基礎控除は何回か改正を経て、現在は、

基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の人数

となっています。

つまり、法定相続人が1名のみでも3600万円の控除があります。そのため、遺産総額が3600万円未満の場合は相続税は課税されません

また、残された遺産相続人に配偶者が含まれる場合は、1億6000万円もしくは配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額までは課税されません。

なお、遺産にかかる税金の計算については、以下の式で求められます。

遺産額=遺産総額-債務-葬式費用-非課税財産(※)+(相続開始前3年以内の暦年課税に係る贈与財産の価額)

(※) 非課税財産とは以下のものが該当します
・墓所、仏壇、祭具など
・国や地方公共団体、特定の公益法人に寄附した財産
・生命保険金のうち次の額まで 500万円×法定相続人の数
・死亡退職金のうち次の額まで 500万円×法定相続人の数

こうして求められた遺産額から基礎控除額を差し引いたものが、課税対象になる遺産総額です。この課税遺産総額がマイナスになる場合は相続税を払う必要がありません。

課税遺産総額=遺産額-基礎控除額

日本では個人の財産の規模も小さく、非課税枠が大きいので、ほとんどの人は相続税を払う必要が生じません。
また、遺産相続で得た資産は所得ではありませんので、確定申告は不要です。
しかし、故人が生前に事業をしており毎年の確定申告をされていた場合や、亡くなる直前に土地などを売却して収入を得た場合には、亡くなられた日から4ヶ月以内に故人の確定申告をおこなう必要があります。これを準確定申告といいます。

なお、日本の相続税の申告期限は相続発生から10ヶ月以内となっていますので、万が一の場合は速やかに対応をする必要があります。

世界の相続税・遺産税はどうなっている?

世界には相続税がある国とない国があります。

《相続税(遺産税)がある国》
アメリカ、韓国、台湾、英国、フランス、ドイツなど

《相続税がない国》
ヨーロッパ:スウェーデン、イタリア、カナダ
アジア:中国、香港、シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア、インドなど
オセアニア:オーストラリアやニュージーランドなど

《遺産税を採用》
アメリカやイギリスなど

※ドイツやフランスは日本と似ており、遺産を取得した人に課税する方式

遺産税のケース|アメリカ

アメリカは2010年に1年だけ相続税が停止したことがありますが、現在は課税されています。しかしその非課税枠が広がっている状況です。(米国遺産税の基礎控除額は2018年現在で1118万ドル(約12億円)とかなり高額)

アメリカでは相続が起きた時に「Estate Tax(遺産税)」が課せられます。これは、亡くなった方が残した遺産に対して課税され、残った金額を相続人で分ける形です。実務としては、遺産管理人等が借金の整理、諸経費や米国遺産税の支払いといった一連の手続きを行うことになります。また遺産税とは別に、各州の法律に基づく税など、多くの煩雑な手続きがありますので、一般的に海外の相続手続きというのは年単位で時間がかかります。

日本の相続税と遺産税の考え方の違い

日本ではあくまで、遺産を取得した人にはその分の所得があったという考えで課税するのに対し、アメリカをはじめとした諸国で導入されている遺産税は、亡くなった方の生前の所得を清算するという意味合いがあります。
なお、外国在住の日本人が外国で相続が生じた場合の税金については「在外財産に対する相続税額の控除(いわゆる外国税額控除)」があり、日本の相続税から控除されますので、二重課税にはなりません。

まとめ

いかがでしたでしょうか。日本では相続税という言葉は聞いたことがあっても、遺産税という言葉に聞き馴染みはないのではないでしょうか。海外は相続が起きると「遺産税(estate tax)」が発生し、故人の生前の所得を生産することで、日本での個人の財産から税金を引いて相続人に与えるという意味合いとは少し変わってきます。
前述したように、日本では10%未満しか相続を経験しませんが、知っておくともし相続が起きたときに適切に対処できるでしょう。

この記事を書いたライター

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