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個人事業主の所得税確定申告の一連の流れについて

公認会計士 荒井薫
個人事業主の所得税確定申告の一連の流れについて

最近は、フリーランスの人が増えています。フリーランスは個人事業主に該当し、税務署に必要な届け出を提出して青色申告を選択することで、様々な税務上の優遇措置が受けられます。会社設立は要らず、税務署へ届け出をするだけです。この記事では、初めて青色申告で所得税申告をする人向けに分かり易くその作成手順を説明します。

個人事業主と会社員の所得税確定手続きの違いについて

最近、会社を辞めてフリーランスになる人、複数の仕事をこなすために個人事業主になる人が増えています。会社の組織に縛られずに働けるという利点に価値を見出す人や、定年がないので長く続けられることも、高齢化社会において利点と見られていることも影響していると思われます。
会社員時代は、基本的に会社が12月に年末調整と呼ばれる手続きをして、社員の所得税額を確定させて納税も完了します。けれども、名称に関わらず、企業に勤めないで収入を得る人は、原則として確定申告が必要になります。その場合、事業所得額を算出、管理するために、白色申告と青色申告のどちらかを選択することになります。 そして、一定の条件を満たす場合には、様々な税務上の優遇措置が受けられる青色申告の方が有利なのです。

1. 青色申告を選択できる人は以下に該当する人です。

事業所得
不動産所得
山林所得
この3つのいずれか一つ以上の所得がある人となります。

2. 青色申告を選択する場合に必要な手続は以下の通りとなります。

(1)税務署に開業届を提出する
(2)青色申告を行う年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を提出する

この2つの届け出を行い、それが税務署で受理されることで青色申告を行うことが可能になります。 そして、青色申告を行うことで、最大65万円の青色申告特別控除を受けられるのですが、そのためには**複式簿記で帳簿を付ける必要があります。

青色申告書作成の手順

青色申告で確定申告を提出する場合、基本的に「青色申告決算書」と「確定申告書B」を作成して期限内に税務署に提出をする必要があります。
そして、青色申告決算書は全部で4枚あります。

その内容は以下の通りとなります。
・ 1枚目 損益計算書
・ 2枚目 月別売上と仕入額、貸倒引当金繰入額、給与の内訳、青色申告特別控除額
・ 3枚目 減価償却費の明細、地代家賃の内訳、税理士、弁護士等の報酬の内訳など
・ 4枚目 貸借対照表、製造原価計算書

これらは、簿記を知らない人でも比較的簡単に使いこなせる個人事業主向けの会計ソフトを使えば、すべての記載事項を自動的に作成してくれるようになっています。最近では、クラウドベースで利用できる会計ソフトが安価で提供されています。一度、一通り作成をしてみれば、2回目からはスムーズに作成できると思います。 「海外との取引がある」、「複数の事業を行っている」など複雑な事業でない限り、税理士に依頼をしないで自分で対応することが可能です。

所得税額の算出

青色申告決算書が完成すると、事業所得額が確定します。そして、所得税額は、「確定申告書B」を所定の手順で記入していくことで算出することが出来ます。 毎年1月中旬を過ぎると、税務署には、その前年の所得について確定申告書を作成するために、「所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き」という説明書が準備されていて、誰でも貰うことが出来ます。この「手引き」もいくつか種類があるのですが、その中に、「確定申告書B用」という手引きがあるので、それを貰ってきて、一通り目を通すのが、その内容を理解するための近道になります。

この手引きには、確定申告書Bに記載すべき内容(社会保険料控除、生命保険料控除などの各種控除額の計算方法や、それぞれの控除額等に関して必要な記載事項など)のすべてについて、順序だてて、それぞれの項目説明と計算方法が書かれています。 更には、確定申告の提出に必要な添付書類が何なのかも説明されています。初めて確定申告を自分でする場合には、この手引書に沿って確定申告書Bを完成させましょう。

そして、これらの確定申告に必要な書類は、税務署で書類を貰うことも可能ですし、国税庁のHPでダウンロードすることも可能です。パソコンで作成をしたい場合には、e-Taxのサイトを利用することも出来ます。

まとめ

フリーランス、個人事業主と呼び名は様々ですが、企業などと業務委託契約をして個人で仕事をする人は、税務上は個人事業主に該当します。そして、最近では副業をする人も増えています。副業として事業をしたり、業務委託契約を交わして仕事をしたりする場合には、その所得が20万円を越えた場合には、ここで説明したのと同様に確定申告が必要になります。

なお、副業をしている人の場合に注意しないといけないのは、20万円という基準は収入ではなく所得となります。この所得の額を把握するためには、帳簿を付ける必要があります。20万円を越えるかどうか微妙な人は、個人事業主用の会計ソフトを使って帳簿を作成しておくことをお勧めします。 そして、所得が20万円を越えた場合には、ここで説明をした手続きを行い個人事業主として青色申告を選択することが出来ます。青色申告には、65万円の青色申告特別控除以外にも様々な税務上の利点があるので、その時になって慌てないように、この記事に書いてある提出書類や、説明書は予め目を通しておくことをお勧めします。

この記事を書いたライター

公認会計士としてIPO準備支援業務に従事後独立。M&A業務や中小企業支援業務を行い、その後事業会社のCFOに就任。ブランドプリペイドカード発行事業の立上げなど行う。現在は主に海外Fintech企業への日本市場のサポート業務などを行っている。
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