リストラクチャリング。「リストラ」と言った方が聞き覚えのある方は多いですよね。リストラというと、会社の経営が苦しくなった際の人員削減をイメージする方がほとんどだと思いますが、実は本来の意味はそれとは違っているのです。今回はリストラクチャリングについて簡単に解説します。
リストラクチャリングは、英語では「Restructuring」。日本語に訳すと、事業の構造を再構築したり、改革したりすること。「え、人員整理や削減じゃないの?」と思った方も多いことでしょう。
本来のリストラクチャリングの意味は事業構造を再構築することです。その中の一環として、人員整理や人員削減があります。日本では「リストラ=人員削減」としてイメージが定着してしまっていますが、そちらとは別物だと考えた方が理解しやすいでしょう。
日本でこの言葉が活発に使われるようになったのは、バブルが崩壊した時代のこと。日本では、リストラは余剰人員の整理や解雇といった意味で使われています。会社都合で退職させるほかに、早期希望退職者を募ったり子会社へ転籍させたりする場合もあります。
ここ数年、日本では頻繁にリストラのニュースが世間を騒がせています。三菱UFJ銀行やみずほ銀行といった銀行、日産や富士通といったメーカー、そしてキリンや朝日新聞など多くの大企業でもリストラや早期退職の募集が行われています。そのこともあり、バブル期以降に生まれた世代にも、「リストラ=人員整理」のイメージが根付いています。皆さんご存知の通り、あまりいい意味で使われないのが日本の「リストラ」の特徴です。
本来のリストラクチャリングは事業の構造を再構築することです。主に、経営が悪化した事業を立て直すときや、事業を整理するときなどに行われます。
具体的には、うまくいっていない事業や部門を廃止・撤退したり、不採算となっている工場や支店を閉鎖したりします。M&Aも手法のひとつとして含まれます。企業が企業構造ーつまり、持っている資源や人を再分配しなおして新しい構造に作り変えることがリストラクチャリングなのです。そうすることで、企業の状態を立て直し、経営をよりよい方向へと導いていきます。
リストラクチャリングで支出が必要となるとき、引当金を計上することができる場合があります。リストラクチャリングに関する引当金は「事業構造改善引当金等」として計上することができます。
リストラクチャリングで引き当てることができる支出には、下記2つが大きなものとして考えられます。
まず1つ目は、希望退職者に支払う退職金。通常の退職金には日頃から引当金が計上されていますが、イレギュラーである割り増し分ーつまり、リストラクチャリングによる早期希望退職者に支払われることになる退職割増金の割り増し部分に関しては、通常の退職引当金には当然含まれていません。この退職引当金に含まれていない部分の退職金に対して、引当金を計上することが可能となっています。この際気を付けなければならないことは、引当額の計算は算出が困難であること。希望退職者を募っている途中や退職者がまだ確定していない場合などでは、いくら支出が増えるのか正確な額を把握することは難しいです。算出の際は、正確な情報に基づき試算を行うようにしましょう。
次に2つ目。こちらは、リストラクチャリングによって閉鎖することになった工場や子会社、支店などを引き上げる際の賃貸借契約の解約違約金に対する引当金です。これらは、リストラクチャリングを行わなければ支出する必要がなかった費用。そのため、事業構造改善引当金等に計上することができます。引当額を算出する際は、1件1件物件ごとの賃貸借契約書を確認しながら行うようにしましょう。
リストラクチャリングは、日本的な「リストラ」の考え方とはその意味が少し違っています。本来のリストラクチャリングの意味は、事業構造の再構築。採算が取れない事業を廃止したり、M&Aを行い会社の構造をよりスリム化したり効率化したりすることです。リストラで考えられる人員削減や人員整理は、その一環にすぎません。
日本ではリストラはネガティブな意味で捉えられがちですが、リストラクチャリングは必ずしもネガティブな意味だけを内包した言葉ではありません。それは、「これから」を見据えた事業構造の再構築だからです。リストラクチャリングの正しい意味、しっかり覚えておきましょうね。