「bis規制」「バーゼル規制」という言葉が金融機関の間で耳にすることがあるでしょう。日本の金融機関へどういった影響を及ぼすのかと様々な憶測がなさり、混乱を防ぐために安全網を整えようとする動きがあります。
では、「bis規制」「バーゼル規制」とは何なのでしょうか。今回はその意味、経緯、今後の影響について考えます。
bis規制(Bank for International Settlements rule)…銀行の自己資本比率に関する国際基準のこと
返済不要の自己資本が資金調達の内、何%を占めているかを示す数値が自己資本比率であり、この自己資本比率が小さければ小さい程、不安定な会社経営を行っていることになります。(自身での資金体力がなく、外部に頼らざるを得ない不安定な状態とみなされるため)一般的な自己資本比率で倒産しにくいとされる基準は40%以上とされています。
この自己資本比率について、国際的に活動する銀行に対して規制を設けたのが前述のbis規制です。(以後バーゼル規制と呼ぶ)なぜこのような規制が国際的に設けられているかというと、過去に国際的に業務展開をする巨大な金融機関が経営破綻した際の教訓からきているものです。
国際的に展開する金融機関の影響は世界経済への影響は多大なものです。時には戦争まで引き起こしてしまう程の影響力があります。そういった事態を防ぐために、金融市場の変化対応のため、自己保有資産をどれだけ適切に保つのかを定めているのがこの規定となります。
バーゼル規制も1回だけできてそのまま適用、というわけではありません。設定されてから、何度か見直しが行われてきています。次に来るのがバーゼル規制Ⅲと言われており、2022年に適用開始とされています。
最初に策定されたバーゼル規制です。策定されたのは1988年、主要国の中央銀行が加盟する銀行監督委員会がスイスのバーゼルにある国際決済銀行に籍を置いていることからこの名前がつきました。
このときに定められた銀行の自己資本比率は8%以上、海外拠点を持たない場合は4%以上と定められました。1933年から3月末から日本では適用されました。
その後、2004年に公表されたのが「バーゼル規制Ⅱ」です。「バーゼル規制1」の抜本的な見直しをして行われました。自己資本比率については前回の「バーゼル規制1」と変更はなかったのですが、以下の3点をより具体的に定めたものとなりました。
①最低自己資本比率規制(リスク計測の精緻化)
②銀行自身による経営上必要な自己資本の額の検討及び当局によるその妥当性の検証
③情報開示の充実を通じた市場規律の実効性向上
日本での適用開始は2006年からの開始となりました。
2008年に起こったリーマンショック以降の金融危機を受け、新たな枠組みの設定が行われ始めたのが、これから導入されるといわれているバーゼル規制Ⅲです。
教訓としているのはリーマンショックを受けての金融危機の内容であり、今後に多様な事象が発生した場合にも経営危機に陥ることのないよう、自己資本比率の定めはキープしつつも、新たにリスク抑制のためのレバレッジ比率規制等が導入されることになっています。日本では2022年から段階的に導入され、27年には完全実施される予定となっています。
これから段階的に導入される「バーゼル規制Ⅲ」。では、身近にはどういったところへの影響が予測されるのでしょうか。
第一には海外にも拠点を持っているメガバンクたちです。バーゼル規制Ⅲでは、銀行の保有する国債に対し、リスク資産としてみなされます。そのため、その分を自己資本比率を保つために自己資本を増やさなければならないこととなり、メガバンクにとってかなりの負担になることは間違いありません。
また、現在は国際的に海外拠点を持たない場合の銀行・金融機関(地方銀行や信用金庫)は4%以上であればよいとされていますが、将来的には国際基準と同等の基準が国内適用される可能性もあるといわれています。そうなった場合、資金的体力がメガバンクと比すると乏しい地方銀行や信用金庫は存続の危機に直面するリスクが生じます。そうなれば、地方銀行や信用金庫から融資を受けている地方の中小企業も同様の打撃を受けることとなり、経済的な影響は小さいとはいいがたい状況となります。
一方で懸念すべき内容としては、上記のような事態を避けるために、一斉に国債の手放しが発生した場合の混乱リスクです。国債が暴落し、それこそ金融市場への大打撃、不景気へのまっしぐら、といった最悪の事態も予想されます。バーゼル規制はあくまで金融経済の健全化を目的としたものであり、その基準を守ることでより良い方向へ生まれ変わっていくことが可能と考えられます。
これまでの旧態依然のままで残っている銀行等があり、その変化に耐えうる体制をつくる前にその波が来てしまうと大きな打撃を受けることは避けられません。今、それが試されるときがきつつあるといえるのでしょう。
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