「偶発債務」「簿外債務」のように、通常の会計では必ずしも用いることはない、あまり聞きなれない言葉の項目が存在します。普段の業務の中で大きく何か左右する等があるわけではないのですが、M&A等の大きな動きが生じた際、これらの項目は当事者にとってチェックを欠かしてはならない大きな負債として登場します。内容が混同しがちだがよくわからないこの項目たち、今回はこちらに焦点をあてて考えてみます。
偶発債務とは上述のとおり不確定で偶発的に発生する可能性のある債務の総称です。仮に発生する可能性が高まった場合には引当金の設定等が必要になりますが、債務として確定した時点で負債に計上されるものとなります。記帳、仕訳の方法は主に2つです。ひとつは対照勘定を用いる方法、もうひとつは評価勘定を用いる方法です。
なお、財務諸表等規則においては、偶発債務について以下のように規定されています。
また、偶発債務が発生する例として以下が挙げられます。
・債務保証
・裁判係争中の損害賠償義務
・手形の裏書譲渡
上記について、ルールの通り、引当金として計上しない理由についてですが、発生可能性が高いことと合理的につまり具体的に金額を見積もることが可能である場合に引当金は計上できる、とされているため、偶発債務が不確定な段階では引当金には計上できないこととなっております。
引当金として計上できないため、帳簿を見るだけでは把握はできません。上述のとおり、注記を見る必要があるので、パッと見ではわからないというデメリットがあります。
偶発債務と混同されがちなものに、簿外債務があります。
文字通り「帳簿外の債務」が簿外債務です。税務会計、つまり税金を計上する対象の収入費用を主な対象とする会計方法をとる場合は発生しやすくなります。なぜかといえば、税務会計では可能な限り税金にかかる対象を少なくするため、また、国自体も実際に支払い義務が生じていないものについては利益への加算を求めているためです。
簿外債務の中には上記の偶発債務も含まれますし、退職給付債務や役員退職慰労引当金、賞与引当金も対象となります。
これらは何が懸念となるかというとM&Aの際です。元々の帳簿に簿外債務があった際、そこを見落としてしまった場合の買主の損失は大きなものとなります。M&Aにおいて書かせてはいけないチェックの中に(デューデリジェンスの中で)重要となってくる項目にも当てはまります。
前述で偶発債務と簿外債務について説明しました。M&Aを行う際に特に問題となりやすい事項であり、買主となる立場となった際には注視すべき項目です。
それを如実に表す、教訓ともいえる事例が2016年に発生した鴻海によるシャープの買収を延期した事例です。理由としては、約3500億円に達する財務のリスク=偶発債務(退職金や他社契約に関する違約金、補助金の返還等)があることが判明したためです。
M&Aの際には、売主に対して買主がデューデリジェンスを行います。上記のような将来的に発生する恐れのあるコストはいくらか、買収した際にどういった利益を得ることができるのか、等をしっかり調査し見定めし判断するためです。そういった買収におけるリスクを顕在化させた上でM&Aを行わなければ、経営改善にも到達せずに債務超過で経営が地に落ちてしまいます。
特に、前述のとおり、貸借対照表には引当金を必ずしも計上するわけではないのが偶発債務です。※そもそも引当金の定義を満たしていないため
そのため、注記をしっかり読み込み、漏れがないかどうかをしっかりチェックすることが重要となります。負債が大きい程、企業価値は低下します。隠れているみえない負債は存在しないか?この事例は今後のM&Aにとって欠かせない教訓といえます。
偶発債務はあまり聴き慣れず、理解し難い用語ですが、契約などの際に、偶然発生した債務(借金)という意味です。馴染みがない単語だからこそ、この検索した機会に学び、次に活かしましょう!
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