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敗因分析からの税理士試験消費税法のリベンジ合格法をご紹介

税理士 井上幹康
敗因分析からの税理士試験消費税法のリベンジ合格法をご紹介

税理士試験の受験生の皆さんこんにちは。今回は税理士試験科目の中の消費税法の勉強方法について、税理士の井上幹康先生に解説してもらいます。井上先生は働きながら4回の受験で税理士試験5科目に合格されましたが、中でも消費税法は初受験では不合格(A判定)となり2回目の受験で合格されたそうです。今回は、自身の実体験や反省点も踏まえて消費税法のリベンジ合格法について詳しくご紹介していますので、是非ご覧ください。

私の消費税法合格までの道のり

まず、いきなり私の勉強法についてご紹介する前に、私が消費税法を合格するまでの道のり(前提)を以下簡単にご紹介します。というのも、税理士試験受験生は社会人受験生もいれば受験専念の方もおり、自身と置かれている環境が全く異なる方の勉強法だとあまり参考にならないばかりか、マネするとかえってよくない場合もあり得ますので、以下私の記事を読む際にもご注意ください。

私の消費税法合格までの道のり

簿記論、財務諸表論、法人税法の3科目を合格したのちに消費税法と事業税の2科目を同時に勉強開始

消費税法の勉強ツールとして、初受験時はTAC通学

独身一人暮らし(恋人有り)

社会人受験生(上場企業経理マンから税理士法人に転職するも仕事をやめて受験専念はせず)

消費税法と事業税を2科目受験するも2科目とも不合格(A判定)

消費税法の勉強ツールとして、再受験生時はTAC通信を利用

次の年に消費税法と事業税を2科目再受験生し2科目ともリベンジ合格を果たす

消費税法という科目の特徴

まず、消費税法という科目は、計算50点、理論50点で構成されており、理論暗記の分量が法人税や所得税などに比べるとかなり少ないのが特徴です。理論暗記のハードルが低いため、簿財合格後初めて勉強する税法科目に消費税法を選択する方も多いと思います。私は、選択必須科目であり学習分量が多い法人税法を最後の科目に残しておくのが嫌だったので先に法人税法をやりました。

消費税法1年目の勉強法と反省点

消費税法1年目は上記の通りTACに通学していました。基本的に授業は休まず、毎回の授業の内容は確実に次回の授業までに消化し、毎月の答練も成績上位に入っていました。計算問題、理論暗記ともに苦手意識はなく、だからと言って自分の実力を過信せずに勉強していきました。直前期の全国模試でS判定だったので合格できるかなと少し気が緩んだのかもしれないですが、この直前期に転職活動を開始してしまいました。今思えば、ここで転職活動を開始したことが最大の敗因だったと思います。

TACや大原が主宰する税理士試験の受験生向けの税理士事務所の合同説明会は、税理士試験直後(8月中旬)と税理士試験合格発表直後(12月中旬)に2回行われています。私は税理士試験直後の合同説明会に標準を合わせて、7月あたりからどの税理士事務所・税理士法人を受けようかといろいろ調べ始めました。調べる時間自体はそれほどかけてはいませんでしたが、今勤務している会社をいつ辞めようか等いろいろ悩み事が増え、どうしても試験に気持ちが100%向いていなかったのは事実です。

税理士試験受験生の中には、今の事務所よりもっと試験勉強に時間がさけそうなところに転職しようとうか、もっと給与の高い事務所に転職しようとか、もっと相続に特化した事務所に転職しようとか、様々な理由で転職活動をする方も多いかと思います。

転職活動自体は自分で自分の未来を変える手段としていいことだと思いますが、私の経験から言えば、税理士試験受験後からいろいろと転職活動を始めても全然間に合うので、せめて試験が終わるまで、特に直前期(5月~7月)はあまり動かずに試験勉強に集中したほうがいいと思います。

1点を争う1年1回きりの税理士試験だからこそ、直前期には試験以外の情報を頭の中に入れるのは極力避け、できるだけ精神状態をフラットに保つように心がけるべきです。

敗因分析を生かした消費税法2年目の勉強法

上記の通り、消費税法初受験時は直前期に転職活動を始めてしまったことなども影響して、不合格(A判定)でした。消費税法と同時に受験した事業税も同じく不合格(A判定)でした。私自身、税理士試験受験4回の受験の中で1科目も受からなかった年はこの年だけでしたので特に悔しく、辛い記憶が今でも残っています。なお、試験には落ちましたが、転職活動は無事に終わり、企業経理から税理士法人へと税務の道に本格的に進むことはできました。

とはいえ、いつまでもくよくよしている余裕もないので、すぐに消費税法の敗因分析を始めました。私が行った敗因分析の結果は以下の通りです。

【敗因分析】

➀メンタル面での敗因分析

試験直前に転職活動を始めてしまい、精神状態が不安定になり、試験勉強に集中しきれていなかった。
試験勉強だけに専念する環境作りは難しいが、特に直前期は合否を左右する重要な時期なので極力試験以外のことは考えないようにしよう。

➁テクニカル面での敗因分析

本試験の理論問題で改正条文の趣旨を問われる問題が出て解けなかった。
形式的な理論暗記にこだわりすぎ、各条文の制度趣旨や改正趣旨等の理解が不十分となっていた。
理論暗記は重要だが、なぜその条文があるのか、なぜその改正が行われたのかといった趣旨を理解する勉強を心掛けよう。
計算に関しても単に結果をあわせに行くのではなく、解答解説に記載の通達は逐条解説を読込み、その通達の趣旨を理解するように心掛けよう。

消費税法は理論暗記の分量が少ないので、成績上位の方は皆さんだいたい専門学校の理論集(TACの理論マスターや大原の理論サブノート)はほとんど丸暗記しています。その中から頭一つ抜きに出るにはどうしたらよいかという視点での勉強が初受験の時の私には欠けていたのです。

つまり、覚えている理論を繰り返し読み返して覚えている(暗記できている)ことで安心してそれ以上の勉強ができていなかったのです。上記テクニカル面の敗因分析に書いたと入り、なぜその条文があるのかの趣旨やなぜその改正が行われたのかの理由をしっかり把握することで形式的な理論暗記から脱却する必要があったのです。私自身は、こうした敗因分析を踏まえて、市販の専門書として以下のような本を購入して勉強するときに一緒に読み込むようにしていました(ほかにも使用した本がありますが、あまり紙面の都合すべて紹介できないので一部にとどめます)。

「最新版 改正税法のすべて」(大蔵財務協会)→理論対策〇
「図解 消費税(最新版)」(大蔵財務協会)→理論対策〇
「消費税法基本通達逐条解説(最新版)」(大蔵財務協会)→理論対策〇、計算対策〇

専門学校の答練では常に成績上位なのになぜか本試験で不合格(50点台)の方すべてに私と同じことが言えるとは思いませんが、私と同じように理論の形式的な暗記しかできていないため理論の解答が暗記したもののべた書きになってしまっている方は条文の趣旨をしっかり追うようにして勉強するのがさらなる成績アップに効果的だと思います。

自分が不合格だった過去問の分析が最重要

上記で敗因分析について書きましたが、敗因分析において特に重要なツールは自分が不合格だった過去問です。この点、今年初めて消費税法を受ける方は不合格の過去問はありませんので、リベンジ組の受験生に限った話になりますが、12月の合格発表で惜しくも不合格となった受験生は自分が不合格だった過去問を徹底的に分析しましょう。

おわりに

私は消費税法の合否を分けるのは、理論と計算のうちどちらかといえば理論だと思っています。

もちろん計算の序盤(納税義務の判定、課税売上割合の計算、個別・一括の判定等)で致命的なミスを犯すといくら理論ができても挽回不可能なので計算の訓練も欠かせないわけですが、消費税の計算問題は総合問題形式で出題形式がある程度固定されているため、財務諸表論の計算と同じく成績上位層では計算では差がつかない傾向にあると思います。

計算での失点を最小限にとどめ、理論勝負に持ち込めるように、日ごろから勉強を進めていくとよいでしょう。

この記事を書いたライター

大学在学中に気象予報士試験に独学一発合格。社会人として働きながら4年で税理士試験官報合格。開業税理士として税務に従事しながら不動産鑑定士試験にも一発合格。税理士試験や不動産鑑定士試験受験生向けの相談サービスや会計学ゼミも開催。
カテゴリ:資格試験

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