毎年7月1日に国税局より「路線価」が発表されます。普通に暮らしていると特段気にしないものですが、土地の相続や贈与が行われるときには必ずチェックする内容となります。ここでは、そんな路線価とはそもそも何か、またその計算方法や使い道を現役の公認会計士が解説していきます。
路線価には、「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の2種類が存在します。相続税路線価は、相続時の計算に使われる路線価、固定資産税路線価は、固定資産税の計算に使われる路線価となります。また、路線価というのは、公道に面している土地の価格を算定するために用いられる価格となります。
毎年7月1日に発表されるものですが、基準となるのはその年の1月1日時点での価格となります。これは、相続税は本人が亡くなってから10か月以内に申告をしなければならないため、あまりに遅い時期に発表すると申告に間に合わなかったり、あまりに早い時期に発表しようとしても、全国の価格を発表するわけですから、発表そのものが間に合わないことが考えられたりします。
なお、路線価は一般的に公示価格の80%で評価されているとされています。
路線価図は、国税局のホームページにて見ることができます。ホームページは丁寧に解説がついていますので、地図さえ読めれば入手したい地域の図まではすぐにたどり着けるでしょう。
すると、路線価を調べたい土地の横に、200C等の記号や存在することがわかります。これは、1㎡あたりの土地単価が200千円、つまり20万円のであり、借地権割合が70%であるということを意味します(Aは90%、Bは80%という風になっています)。通常調べたいのは先の坪単価の部分となります。
先ほどのように路線価によって㎡当たりの土地単価とあわせて知っておかなければならないのが、評価対象の土地の広さや形です。長方形なのか正方形なのか変形しているのかで土地の価値が大きく異なってきます。
路線価による土地の評価の方法は数えきれないくらいありますので、今回は単純な例を用いて評価をしていきましょう。
<前提条件>
1.自用地であり、長方形
2.道路に面しているのが20m、奥行きが35mで、面積合計700㎡
3.路線価は200Cと書かれている(㎡あたり20万円)
まず、路線価20万円に奥行距離35mに応じた奥行価格補正率0.97を乗じた1㎡あたりの価額194,000円を1㎡あたりの価額として算出します。
なお、ここで奥行価格補正率というものがありますが、これは道路に面していない部分が長ければ長いほど使い勝手が悪いと考えられる為、補正してディスカウントするというものです。距離によって使われる率が異なるので留意しましょう。
先ほど求めた194,000円に、地積の700㎡を乗じた価額が135,800,000円となります。これが、路線価で求められた土地の価額となります。
先ほど求めたような路線価に基づく不動産価額は、主に相続税や贈与税の算出の基礎として使われます。これは、国税局が一斉に全国の路線価を公表するために、客観性が保たれるからです。一方で路線価以外にも固定資産を評価する方法としては、不動産鑑定士による鑑定額や、近隣の売買実績等もあります。ですが、これらは客観性が無かったり、路線価よりも高額となったりすることがほとんどのため、相続税評価の際には通常用いられません。一方で、倍率方式というものが用いられることがあります。これは、検索によっても路線価が出てこず、「倍率地域」というものに該当する場合です。この際の土地の評価額は、固定資産税評価額×地域ごとの倍率を用いて計算されます。固定資産税評価額は市役所から毎年送られてきますので、これを参考にします。
形状が正方形をしていたり、通常の場所にある土地であったりすれば路線価を用いて簡単に土地の評価額を計算することができます。しかし、形がいびつであるとそのまま評価することができません。そこで、代表的な補正を行わなければならない土地を紹介します。
先述の通り、標準的な土地よりも奥行きが長いもしくは短い場合は補正率によって価値を減額します。
土地の形が正方形や長方形ではなくいびつである場合も、正方形に直した際に整理すべき部分について補正率を用いて価値を減額します。
土地が道路に面している部分が極端に小さい場合に用いられます。間口の小ささによって、0.8~1.0の範囲で補正が行われます。
間口の幅の割に奥行の長さが長い場合は、この補正が行われます。奥行の長さが間口の2倍以上であれば、その割合に応じて補正が行われ、土地の価値を低下させます。
そのままでは建物が建てられない等、がけになっている場合はこの補正が行われます。また、日照りの問題で、がけ地が向いている方角によっても補正率が異なります。
それ以外にも、角地であれば活用しやすいため評価が上がったりします。実際に相続税評価額を計算するにあたり、素人が計算すると間違えたり不利な計算を行ってしまったりするリスクがあるため、通常は税理士に依頼することがほとんどです。相続税については、高い割合で税務調査に来ますので、保険と思って税理士に依頼をすることが望まれます。