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ショートレビューとは?どんな時期に何をするの?公認会計士が解説

公認会計士 大国光大
ショートレビューとは?どんな時期に何をするの?

企業が上場をしようと考えた時に、外部に様々なことを依頼しなければなりません。このうちの一つとして、ショートレビューというものが挙げられます。では、ショートレビューとはどのようなもので、どんな時期にやるものでしょうか。
今回はそんなショートレビューについて解説します。

ショートレビューとは

ショートレビューとは、企業が上場(株式公開)したいと決めた時に、監査法人が行う企業の調査の一つです。

ショートレビューでは、監査法人の公認会計士がヒアリングや各種資料の閲覧を経て上場までに解消すべき諸問題を列挙し、経営者に報告をします

経営者はそのショートレビュー報告書を見て、企業の改善すべき事項について各部署に指示をして上場会社として必要な内部の体制を構築することとなります。

ショートレビューは通常現地の調査やヒアリングを規模に応じて2日~一週間程度で行い、報告書をプラス1週間程度で作成して提出されます

ただし、証券会社などの外部の人間も見れるような内容にするために監査法人内の審査の状況によってはさらに時間がかかることが考えられます。

ショートレビュー報告書は主に証券会社が上場までに必要とすることが多く、このショートレビュー報告書が無いと証券会社が企業と契約をしないことがあります。よって、上場の際には必ずと言っていいほどこのショートレビューが必要となってきます。

ショートレビューの時期や費用は?

では、ショートレビューはいつ行うのか、またその費用はどのくらいとなるのでしょうか。まず通常の株式市場であれば監査法人からの監査報告書が2期分必要となります。

よって、上場申請をしたい2年前にはこのショートレビューを受けていることが基本となります。

また、費用については監査法人によって異なります。一時、大手監査法人では100万円~200万円が相場とされていて、中小監査法人であれば100万円程度が相場となっていました。

しかし、現在は証券取引所の審査も厳しくなったことや大手監査法人の人手不足を背景として、ショートレビューを積極的に受注したがらない監査法人もあります。そのため、相場も多少上がっているとも言えます。よって、個別具体的なショートレビューの費用は監査法人に事前に見積りを取らなければわからない、というのが現状です。

ショートレビューで良くある問題点

では、ショートレビュー報告書ではどのような改善事項が書かれるのでしょうか。

ショートレビューで良くある問題点

①上場会社なみの経理処理

最も多い改善事項としては、上場会社並みの経理処理をすることや、経理人員の確保となります。

通常、中小企業は税務申告や銀行に提出するためだけに財務諸表を作ることが多いので、ほとんどが法人税法に準拠した財務諸表が作成されます。

よって、減損会計、繰延税金資産、各種引当金等上場会社では当然のように行われている経理が行われていないことがたくさんあります。よって、まずはこれらを上場会社と同様の水準にするように報告書に記載されます。

②各部門への必要人員の配置

また、中小企業では記帳をする人と銀行で振込をする人が同じであるケースが多いです。

しかし、上場企業では記帳をする人と銀行で振込をする人を分けなければなりません。これは、企業の預金について不正が起きないように相互でチェックする仕組みが求められるからです。

よって、経理担当と財務担当をわけるように報告書に記載されることが多くなります。この他、内部監査担当を入れることや常勤監査役の設置、取締役会の充実などを記載される会社が多くなっています。

③内部統制監査制度の実施

①と②は少なからずクリアしている会社もありますが、この内部統制監査の実施までできている会社は見たことがありません。

これは、上場会社に義務付けられている制度で、企業が構築している内部統制について、内部監査室等の独立した人員が企業そのものの内部統制の状況について評価する制度です。

例えば、売上を計上するまでに2人以上の目を通しているか、重要な意思決定は取締役会や稟議、各種申請に沿って行われているかどうかを自身でチェックをして評価をしたりします。

とはいえ、自身で内部統制監査制度を導入するにも時間やノウハウがあまりないことから、公認会計士等の外部の人にコンサルティングを頼むことも多くなっています。

④予算実績の乖離

企業が上場企業となると、3か月に一回は決算短信などで企業の財務諸表を公開しなければなりません

その時に一緒に予算も公表されます。通常、企業の予算に応じて株価も変動しますが、この予算があまりにも実績と乖離している企業の株価は混乱してしまいます。

よって、上場の為には月次での予算と実績があまり乖離していないことが条件となり、予算の組み立て方については入念にチェックされます。

まとめ

ショートレビューは企業が上場したいと思う2年前には受けておいた方が良いと考えられます。ショートレビュー報告書に記載されていることはとてもハードルが高いものもあれば、簡単に修正できるものもあります。

金銭的に余裕があるものの、企業を上場できるかどうかを知りたい、という場合であれば一度周りの公認会計士や監査法人に費用も含めて聞いてみるというのも一つの手でしょう。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
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