IFRS(国際会計基準)というのは、ヨーロッパが主体となって出来上がった国際的な会計基準で、現在全世界において標準とされる会計基準の一つです。
日本においてもじわじわとIFRSを適用している企業が増えてきています。しかし、IFRSって何?導入するにはどうしたらよいの?といった声が良く聞こえてきます。
そこで今回は、IFRS導入支援とは?具体的にどのようなことをするのか、解説します。
IFRSとは、International Financial Reporting Standardsの略で、日本語では、国際財務報告基準や国際会計基準等と訳されます。ちなみに読み方は「アイエフアールエス」であったり「イファース」であったりします。海外や海外でのIFRS経験がある会計士は前者で呼ぶことが多く、実務上は後者で呼ぶことも多いです。ようは、呼びなれている方に合わせています。
IFRSと日本の会計基準はどう違うのかよく聞かれます。
大きな考え方で言うと、IFRSは細かい規定はなく、どちらかというと大まかな会計の考え方を示しており、細かい内容については企業で会計方針を作って処理をしていきます。反対に日本基準では細かい規定を設けていて、その規定に沿っていれば間違いではないというスタンスを取っています。
細かい話で言うと、IFRSでは土地と建物を同時に借りている場合には土地も建物も資産計上しなければなりません。一方で日本基準では建物は資産計上すべき場合があるのに対して土地は資産計上しなくても良いことになっています。
この他にも様々な違いがあるため、日本基準の財務諸表をIFRSに組み替える際には様々な会計知識が必要になります。ですが、今まで日本基準しか見てこなかった経理担当者にとっては難しい論点もたくさんあるため、IFRS導入支援を契約することがあります。
IFRS導入支援は誰でもできるわけではありません。ある程度の規模のある監査法人や、大手監査法人で国際会計に携わっていた会計士でなければ独学で勉強しなければなりません。よって、企業がIFRS導入支援を契約するのは、一定規模以上の監査法人や、そのような監査法人で携わっていた個人の公認会計士、大手の会計コンサルティングファームとなります。
では、IFRS導入支援はどのように行っていくか順を追って説明します。
まず、日本基準の財務諸表とIFRSに組み替えた財務諸表と、どの程度乖離があるかを調査します。通常この分析をGAP分析というのですが、公認会計士がチェックシートのようなものを会社に投げかけて、それに一つずつ会社が答えることでどれだけGAPがあるかを確かめます。
この乖離が多ければ多いほどIFRS導入に時間がかかることとなります。
先ほどIFRSでは細かい規定はない為会社で独自に会計方針などを細かく決めるということをお話しました。そこで登場するのが会計方針書というものです。
この会計方針書はグループでの会計方針を定めるもので、基準に明記されていない事項についてはどのような会計方針を採用するかを記載しておくものです。この会計方針書が明確になっていないと、なぜその会計処理を採用したかが明確になっていないことになるため、基準に沿った会計処理が行われているかどうかがわからなくなってしまいます。
また、モデル財務諸表をこの時点で作成します。IFRSは日本基準よりも注記が膨大になってくるため、日本基準の時よりもグループ会社から収集しなければならない情報が多くなってきます。よって、注記として何を記載すべきかどうかをこの時点である程度把握しておけば、後でバタバタしなくても済みます。
例えば、IFRSでは売上の計上方法が日本基準とは異なるところがあります。例えば日本では工場から物が出荷された都度売上計上されていたものが、IFRSでは先方に物が届いた時に売上計上される場合があります。
通常、このような売上は出荷したら自動で計上されることが多いのですが、IFRSに合わせようとするとシステムを変更しなければならないこともあります。
よって、適切な会計処理をするためにシステムそのものを作ったり改善したりする助言をしなければならないケースが出てきます。
IFRS導入支援を①~③に沿って行っていても、最終的な財務諸表がIFRSに準拠していなかったら意味がありません。経理担当者が間違えるリスクだけではなく、そもそも開示の能力が備わっていないのに本番を迎えてしまうこともあるかもしれません。
そんな時、IFRS導入支援の一環として、財務諸表を代わりに作成したり、子会社に配賦する情報収集のためのシートを作成したりすることがあります。
IFRS導入支援はGAP分析から実際の開示まで幅広く行われることを解説しました。全てを外部に依頼することもありますし、お話した一部を依頼することもあります。どれだけ優秀な経理人員の集まりであったとしてもほとんどは外部にIFRS導入支援を依頼していると考えられます。どの程度の支援をしてもらったほうが良いかは会計士との話し合いの上で決めることとなるでしょう。