公認会計士資格を取得し監査法人での実務経験を積んだ後、昨今のベンチャーブームもあり、ベンチャーキャピタルに転職したいと考える人が増えてきています。ベンチャーキャピタルの仕事内容や会計士の強みを生かせるポイントについて解説していきます。
ベンチャーキャピタルのビジネスモデルは、機関投資家から資金を預かりその資金をベンチャー企業に投資し、数年をかけてエグジットすることで利益を得て機関投資家に利益配分することです。日本国内にも数多くのベンチャーキャピタルが設立されており、数十億円規模から数百億円規模のファンドまで様々です。投資を受けるベンチャー企業からしても、ベンチャーキャピタルの存在はなくては困る存在です。投資を受けられるのはもちろんのこと、グロースに必要なアドバイスや重要人材の紹介、次のラウンドの資金調達といった経営の重要アドバイスを受けることができます。ベンチャーキャピタルの実力により、内容が様々ですので、ベンチャー企業にとってもどのベンチャーキャピタルから投資を受けるかは非常に重要な意思決定ポイントの一つです。
ベンチャーキャピタルの売上は①管理報酬、②成功報酬の2種類の売上に分類することができます。①管理報酬は、ファンドサイズ×数%を毎年手数料として得ることができます。ベンチャーキャピタリストへの給料支払、ファンドの管理業務のための管理手数料となります。手数料率はおおむね2%程度のファンドが多いようです。②成功報酬は、ファンドが大きな成功を収めた際に追加で貰える成功報酬を意味しています。例えば100億円のファンドで200億円のエグジットを成功させた場合、100億円を原資として数%の成功報酬が設定されます。ファンドの成功度合いに応じて段階的に成功報酬率が設定されることが一般的であり、ファンド運営者のモチベーションにもなります。上記のとおり、①管理報酬の存在があるため、ファンドサイズが大きければ大きいほど、たくさんの売上収入があり、ストック報酬があるので、ベンチャーキャピタル側は資金を集めることが出来さえすれば基本的には負けのないビジネスモデルとなっています。
公認会計士は、企業の財務諸表を読むことができます。ベンチャー企業に投資する際、設立したばかりのシード期を除いて財務諸表の数字なしには投資することが基本的には難しいでしょう。その点、ベンチャー企業の価値を数字で読み取ることができる点につき、公認会計士は最初から強みを持っていると言えます。また、公認会計士で監査法人に勤めている方は、クライアントの財務部門のような数字が分かる人とのコミュニケーションに慣れていると思いますので、その点も役に立つスキルの一つです。
ベンチャーキャピタルの投資先は基本的にはベンチャー企業です。そのため、最新の技術やビジネスモデルについての知識・経験が必要不可欠です。大企業ばかり見てきた公認会計士にとっては180度違うタイプの企業に投資していくことになります。そのような企業の理解を深めるための勉強は日々必要になります。また、ベンチャー企業への投資は、過去の財務諸表の実績も大事ですが、将来に事業計画に基づきvaluationを出し、投資していくことになりますので、事業計画が達成できるかどうかを確認することが重要です。
希望するベンチャーキャピタルがある場合は、そのベンチャーキャピタルが公開している投資ポートフォリオを見てみましょう。その投資ポートフォリオにある企業について、企業と業界を研究することが、転職への一番の近道です。また、ベンチャーキャピタル業界は非常に狭い業界でもありますので、ベンチャーキャピタリストの友人や知り合いがいる場合はその人に話を聞いてみるべきです。投資が集まりやすいSaaS、AI、ブロックチェーン、フィンテック、ヘルスケア、インフルエンサー、といった今話題となっている業界への知識は日々アップデートしておくようにしましょう。
ベンチャーキャピタルの仕事は、何も投資先を見つけてきてデューデリジェンスを行い投資実行する、だけではありません。投資ファンドを適切に運営し、ファンドに投資してもらったLPへのファンド結果説明やファンド決算書の作成といった管理業務もあります。ファンドの管理業務は、通常の一般企業とは異なるルールが適用されるため、だれでも簡単にできるものではありません。そのため、監査法人からベンチャーキャピタルへ転職する際は、まずはベンチャーキャピタルの管理業務から始める人も多いです。管理業務からキャピタリストへの道も当然に開けていますのでまずはベンチャーキャピタルに入ってしまうという戦略もあります。
▶︎ 士業・管理部門でスピード内定|最速転職HUPRO はこちら