20代公認会計士にとって転職は重要な分岐点です。監査以外の経験や年収アップ、将来の独立を見据えたスキル習得など理由は様々でしょう。本記事では転職理由や年収相場、転職先、メリット・デメリット、成功のコツまで解説します。
20代の公認会計士が転職を考える理由には、年収アップやキャリアの幅を広げたいなどさまざまな理由があります。他の会計士がどのような動機で転職を検討しているのかを知ることで、あなた自身が「今転職すべきか」を判断するヒントが得られるでしょう。
20代の公認会計士が転職を考える理由として最も多いのが、監査業務などのルーティン業務からのステップアップです。監査法人での業務は基本的に監査がメインとなり、数年経験すると業務内容に飽きを感じる方が多くいます。より多様な業務経験を積みたいという思いが転職の動機となるケースが多く見られます。
また、専門分野を広げるために転職をする方もいます。会計・監査以外の専門性である税務、M&A、IPO支援、内部統制などを身につけ、市場価値を高めたいという動機で転職する方も多くいます。
監査法人の給与体系は安定しているものの、急激な年収アップは期待しにくい場合もあります。外資系コンサルティングファームや事業会社のCFO候補ポジションなど、より高い報酬を求めて転職を検討する方が増えています。
公認会計士として将来独立を目指す場合、監査業務だけでは限界があります。特に税務業務の経験を積むため、税理士法人への転職を検討する方が多くいます。独立後の安定的な収入源として税務顧問業務は欠かせないためです。
監査法人は繁忙期の激務で知られており、プライベートの時間を確保したい、長期的に働き続けられる環境を求めて転職を検討する方もいます。
20代公認会計士の年収は、勤務先や経験年数、年齢により幅があります。20代前半と後半に分けて解説していきましょう。
20代前半の公認会計士の年収は、監査法人に勤務している場合、スタッフレベルで年収450万円から600万円程度、シニアスタッフで年収600万円から750万円程度となっています。
転職先別に見ると、税理士法人では年収400万円から650万円程度、一般企業の経理・財務部門では年収500万円から700万円程度となっています。ベンチャー企業の場合は年収450万円から800万円程度です。FASやコンサルティングファームでは年収600万円から900万円程度と、比較的高い水準となっています。
20代前半では実務経験が2年から4年程度のため、転職により大幅な年収アップよりも、将来性やスキルアップを重視した転職が一般的となっています。
20代後半になると、監査法人勤務の場合、シニアスタッフで年収700万円から850万円程度、マネージャー候補で年収800万円から1,000万円程度まで上昇します。
転職先別では、税理士法人で年収600万円から800万円程度、一般企業の経理・財務管理職候補で年収700万円から1,000万円程度となります。ベンチャー企業のCFO候補では年収800万円から1,200万円程度です。外資系コンサルティングファームでは年収900万円から1,500万円程度、投資銀行では年収1,000万円から1,800万円程度と、非常に高い水準となっています。
20代後半になると、マネジメント経験や専門性が評価され、転職により大幅な年収アップが期待できる時期となります。特に外資系企業や成長ベンチャーでは、能力次第で1,000万円を超える年収も十分に可能です。
税務業務の実務経験を積むことで、独立後に安定的な収入源となる税務顧問業務のノウハウを身につけることができます。税務の実務経験が積めることに加え、独立後のクライアント獲得のノウハウを学ぶことができます。一方で、監査法人と比較して年収が下がる可能性があることや、事務所によって労働環境にばらつきがある点には注意が必要です。
M&A、財務デューデリジェンス、企業再生、株価算定など、より専門性の高い財務コンサルティング業務に携わることができます。高い専門性が身につき、年収アップが期待でき、多様なプロジェクトに参画できる点が魅力です。ただし、激務になりがちで、高いプレッシャーとアウトプットが求められる環境であることを理解しておく必要があります。
経営戦略の策定から実行まで、経営に関する幅広い知識と経験を積むことができます。経営に関する総合的なスキルが身につき、高年収が期待できます。しかし、極めて高いパフォーマンスが要求され、長時間労働が常態化している厳しい環境であることも事実です。
IPOを目指すベンチャー企業では、CFO候補として管理部門全般の業務に携わることができます。財務だけでなく、IR、法務、人事など幅広い経験を積めることに加え、若いうちから責任のあるポジションに就けること、ストックオプションによる大きなリターンの可能性があることが魅力です。一方で、会社の将来性に不確実性があることや、一人あたりの業務負荷が大きいことも考慮する必要があります。
ジョブローテーションにより、財務以外の部門も経験できる可能性があります。安定した労働環境、充実した福利厚生、様々な部門を経験できる可能性がメリットですが、年功序列の文化が残っている場合があることや、専門性よりもゼネラリストとしてのスキルが重視される傾向があることは理解しておく必要があります。
20代公認会計士が転職する最大のメリットは、多様な経験とスキルの獲得です。監査業務だけでは得られない幅広い経験を積むことで、市場価値の高い人材になることができます。税務、M&A、経営戦略、事業運営など、様々な分野のスキルを身につけることが可能になります。
年収アップが期待できることも大きなメリットです。上記でも示した通り、適切な転職先を選べば、監査法人時代を大きく上回る年収を実現できます。特に外資系企業やベンチャー企業では、能力次第で大幅な年収アップが期待できます。
将来のキャリアパスが広がることも大きなメリットです。早い段階で多様な経験を積むことで、将来の独立、CFO、起業など、様々なキャリアパスの選択肢が広がります。一つの分野に特化することも、複数の分野を経験して幅広い知識を持つ人材として成長することも可能になります。
20代公認会計士の転職はメリットがある一方でデメリットもあります。
まず初めに、20代での転職はキャリアの柔軟性が高い反面、早期に職場を変えることで「専門性が定まっていない」「経験が少ない」と見られる可能性があります。特に監査や会計業務の実務経験が浅い段階での転職は、スキルの深掘りが不十分なままになってしまうリスクもあります。
また、年収アップやワークライフバランスを求めて転職するケースも多いですが、転職先が自分に合うとは限りません。特に会計士は専門職のため、企業文化や求められる役割が合わないとストレスの原因になります。転職後に「こんな職場だと思わなかった」と後悔するケースもあります。さらに、20代前半〜中盤は、まだキャリアの土台を築く段階です。この時期に方向性を変えることで、中長期的にどの分野で強みを伸ばすのかが曖昧になってしまう恐れがあります。結果として「何ができる人なのか」が明確でなくなり、将来の選択肢を狭めてしまうこともあります。
転職で後悔しないために最も重要なのは、明確なキャリアビジョンの設定です。転職前に、5年後、10年後にどのような働き方をしていたいかを明確にしましょう。独立志向、CFO志向、起業志向など、将来のビジョンによって選ぶべき転職先は大きく異なります。漠然とした転職では、期待する成果を得ることは困難です。
スキルアップ計画の策定も重要な要素です。転職先で身につけたいスキルと、そのための具体的な行動計画を策定しましょう。受け身で仕事をするだけでは、期待するスキルアップは実現できません。積極的に学習機会を求め、新しいスキルの習得に取り組む姿勢が必要です。
転職の適切なタイミングの見極めも重要です。監査法人でのある程度の経験(3年から5年)を積んでから転職することで、転職先での評価も高まります。早すぎる転職は市場価値を下げる可能性があり、十分なスキルや経験がないまま転職すると、転職先で苦労する可能性があります。
収入面だけでの判断も避けましょう。年収の高さだけで転職先を決めるのは危険です。働きがい、成長機会、労働環境なども総合的に判断しましょう。短期的な年収アップよりも、長期的なキャリア形成を重視することが、結果的により良い転職につながります。
後悔しない転職をするには転職エージェントの活用も効果的です。専門性の高い転職エージェントを活用することで、非公開求人へのアクセスや転職先との条件交渉をスムーズに進めることができます。特に、公認会計士などの士業に特化したヒュープロでは、業界の動向や求人情報に精通しており、適切なアドバイスをお伝えできます。
また、転職先の詳細な調査は必須です。企業の財務状況、組織文化、労働環境、キャリアパスなどを事前に詳しく調査しましょう。面接だけでは分からない情報は、転職エージェントや既存社員から収集することが重要です。特に、実際の労働時間や職場の雰囲気、昇進の可能性などは、事前に確認しておくべき重要な要素です。こうした重要な要素を確認するためにも転職エージェントの利用は欠かせません。
20代公認会計士の転職は、将来のキャリアを大きく左右する重要な決断です。監査業務以外の経験を積み、より高い年収や専門性を求めて転職することは、キャリアアップの有効な手段となります。しかし、転職にはメリットだけでなくデメリットもあることを理解しておきましょう。一度きりの人生のおいて、後悔しない転職をするためにも、明確なキャリアビジョンの設定、転職先の詳細な調査、適切なタイミングの見極めなど、十分な準備と検討が不可欠です。
公認会計士としての専門性を活かしながら、さらなるキャリアアップを目指す20代の方にとって、転職は大きなチャンスです。十分な準備と検討を重ね、自分に最適な転職先を見つけることで、理想のキャリアを実現しましょう。転職は単なる職場の変更ではなく、人生の新たなステージへの挑戦であることを忘れず、前向きに取り組むことが重要です。