公認会計士を目指す受験生の人なら、「補習所」の存在については知っていると思います。しかし、実際にどのようなことが行われているか詳しく知っている人は少ないと思います。
そこで、この記事では補習所の授業内容やスケジュールについて解説していきます。
公認会計士の2次試験に合格すると、肩書としては公認会計士準会員となります。
つまり公認会計士の試験に合格してもまだ正式な会員ではなく、すぐに公認会計士として仕事ができるわけではありません。
公認会計士試験に合格した人が、公認会計士として登録するために3年間ほど通う研修施設が補習所です。
なお、「補習所」の正式名称は、「実務補習所」です。
補習所の研修は、公認会計士として相応しいだけの品位と素養を養うことを目的として行われ、授業内容は以下のとおりです。
具体的な科目名としては、「リスク評価及び評価したリスクへの対応」、「実査・立会・確認」、「現預金・借入金」、「販売」、「固定資産」、「人件費」「ディスカッション」などがあります。
補習所の授業形態は、公認会計士協会に通いライブ授業を受ける方法とeラーニングによりWebで授業を受ける方法の大きく2つに分けられます。
ライブ授業の出欠確認は、「補習生カード」により行われます。講義開始前と講義終了後にカードリーダーに補習生カードを通して出欠を記録します。この記録を基に単位が付与されます。
一方eラーニングは、システムにログインし、講義視聴、確認テスト、アンケート回答をもって受講完了となり、その記録を集計し単位が付与されます。
また授業には出席が必須の「ゼミ」と「ディスカッション」があります。3年間で4~5回行われ、小さな班ごとに様々なテーマで議論し発表を行います。
それ以外に合宿での授業も行われますが、こちらは出席は任意です。
合宿は夏と冬の2回行われますが、冬に行われるゲーム方式の授業は人気があるようで、夏の合宿より出席率が高いようです。
合宿は2日間に渡って途中工場見学も行われます。
また単位として加算されます。
授業は3年間にわたり実施されますが、カリキュラムのおよそ70%は1年目に実施されます。
そのため1年目は週1~2回のペースで行われる授業に通う必要があります。
授業は、平日の夜にも行われ 前半(12月~3月)は土日どちらかが潰れる日もあります。
また会計士業界の繁忙期である4~5月は、ライブ授業は開講されません。
当然のことながら1年目が一番ハードです。
そして2年目は全カリキュラムの20%、3年目は10%と年次が上がるにつれて、授業の量は減っていきます。
年次が上がるほど各自が所属する会計士事務所での業務が忙しくなることを考慮してカリキュラムが組まれています。
実務に関する講義及び実地演習については、1年目に180単位以上、2年目に40単位以上、3年目に20単位以上の単位取得が必要になります。
またディスカッション、ゼミナールの単位も15単位以上の取得が必要となります。
これら以外にも。必須科目があり単位が必要になります。
考査は3年間で計10回実施されます。単体で4割、トータルで6割を以上を得点しなければならず、合格点に満たない場合は追試を受け続けなければなりません。
3年間の補習期間を終え、必要な単位をすべて取得すると、修了考査の受験資格が与えられます。
受験科目は、会計に関する理論および実務、監査に関する理論および実務、税に関する理論および実務、経営に関する理論および実務、公認会計士の業務に関する法規および職業倫理の5科目です。
合格率はおよそ7割程度といわれています。3割は不合格になる試験であり、きちんとした対策をして臨む必要があります。
この考査に不合格になると、せっかく超難関の公認会計士試験に合格しても実務に付くまでにさらに時間的・金銭的な負担を負うことになります。
無事合格すると、公認会計士団体は修了考査に合格したことを証する書面を交付します。その書面をもって公認会計士の登録手続きを済ませて、正式に「公認会計士」となります。
日中勤務した後に、授業を受けるスケジュールはなかなかハードでしょう。しかし、実際に受講した人からは、実務に直結する知識を得られる貴重な機会であるといった声が聞かれます。
また一緒に授業を受けている人は、同期ということで人脈作りのいいチャンスでもあるようです。
そういう意味では大変ではあるけど公認会計士として本格的にデビューする前の充実した時間であるのかもしれません。