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2020年度税制改正大綱「オープンイノベーション税制」とは?

HUPRO 編集部
2020年度税制改正大綱「オープンイノベーション税制」とは?

令和2年度の税制改正大綱に、新たに企業の事業革新につながるオープンイノベーション促進のための税制が盛り込まれました。次世代のイノベーションを担うとされるベンチャー企業への出資に関わる新たな税制です。本記事では「オープンイノベーション税制」について解説します。

オープンイノベーションとは?

そもそも「オープンイノベーション」とはどういう意味なのでしょうか。
「イノベーション」は「技術革新」といった意味合いで使われることが多い言葉ですが、本来は「新しいアイディアや手法を利用すること」で、そこまで大々的なものではありません。ちょっとしたアイディアでも「イノベーション」となりえます。

そしてそこに「オープン」が付いたらどうなるのでしょうか。
オープンイノベーションは、2003年に、ハーバード・ビジネス・スクールのチェスブロウ 助教授(当時)によって提唱された概念です。

それによるとオープンイノベーションは、以下のように定義されています。

「企業が研究開発を行う際に、他社が開発した技術を特許のライセンシング(実施許諾)や企業そのものの買収などによって導入することや、他社に自社の知的財産権を使わせて、新しい製品等を開発させること」

出典『ヘンリー・W・チェスブロウ著、大前恵一朗訳『Open Innovation――ハーバード流イノベーション戦略のすべて』(2004・産業能率大学出版部)』

これまでのイノベーションは、全て自社で開発していた、ある意味クローズドな環境でした。しかし既に確立されている他社の技術を取り入れる方が一から開発するより、リスクを軽減することができ、開発期間も短縮できます。

代表的なのが「iPhone」です。携帯電話に、インターネットとタッチディスプレイという
既存の技術を組み合わせ、すぐれたデザイン性を持たせた商品は、瞬く間に世界を席巻しました。

オープンイノベーション税制とは?

これまでも、企業のオープンイノベーションを支援するために「特別試験研究費税額控除制度(オープンイノベーション型 )」がもうけられていましたが、この度新設される予定の「オープンイノベーション税制」はまったく別のものです。

具体的には以下のような違いがあります。

・特別試験研究費税額控除制度(オープンイノベーション型 ):企業が共同試験研究、委託試験研究を⾏った場合など、その共同試験研究、委託試験研究に要した費⽤等に⼀定の控除率(20%⼜は30%)を乗じた額を法⼈税から控除できる制度

出典 経済産業省:特別試験研究費税額控除制度(オープンイノベーション型 )

・オープンイノベーション税制:イノベーションを担うベンチャー企業への出資について一定の所得控除を認める新たな税制

出典 令和2年度税制改正大綱

次世代のイノベーションを担うのは、専門的に開発に取り組むベンチャー企業です。しかしベンチャー企業においては資金調達が難しいため、研究開発が滞ることも起こりがちです。それを打破するために、ベンチャー企業への出資について新しい税制を設けることになりました。

オープンイノベーション税制の内容について

オープンイノベーション税制の内容については以下の通りです。

「この税制の対象法人が、令和2年4月1日から令和4年3月31日までの間に特定株式を取得し、かつ、これをその取得した日を含む事業年度末まで有している場合において、その特定株式の取得価額の25%以下の金額を特別勘定の金額として経理したときは、その事業年度の所得の金額を上限に、その経理した金額の合計額を損金算入できる。」

【対象法人】

・新規性・成長性のある事業を行う設立後10年未満の未上場ベンチャー企業(新規企業は対象外となります)
・出資を行う企業又は他の企業のグループに属さないベンチャー企業

【税制の対象】
・国内の事業会社
・コーポレート・ベンチャー・キャピタル

※投資法人などによる出資は認められません。

【要件】
①1件当たり1億円以上の大規模出資 (※)海外ベンチャー企業への出資は5億円以上
中小企業からの出資は1,000万円以上

②株主間の株式売買ではなくベンチャー企業に新たに資金が供給される出資
(※)発行済株式の取得は対象外

税制の優遇については、その事業年度の所得の金額が上限となります。ただし、取得した特定株式をすぐに手放したり、対象法人が解散するなどの場合によっては、特別勘定を取り崩して益金として算入する必要があります。

出典 令和2年度税制改正大綱

※本稿の情報は令和2年1月13日現在のものです。実際の法案については本稿の記載とは異なる内容が制定される場合もありますのでご注意ください。

この記事を書いたライター

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