貸借対照表の中にみられる「資産の部」。中でも「流動資産」に分類されるものは、現金預金や売掛金など1年以内に回収される資産のことです。
しかし、会計の解説書だとそこからいきなり「当座比率は当座資産を流動負債で割ったもの」というような解説が出てきて「当座資産とは?流動資産と違うの……?」と混乱された方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、当座資産とは一体何か?また混同されがちな流動資産についてあわせて解説します。
当座資産とは、流動資産の中の多くの割合を占める資産で、現金、預金、受取手形、売掛金、一時所有の有価証券など、特に短期間に現金化できる資産のことを指しています。
要するに「現金そのもの、もしくはすぐに売れるものか回収待ちのもの」です。
それぞれ費目として貸借対照表に記載されているので、足し合わせることで当座資産を出すことができます。
流動資産1年以内に現金化の見込みがあるという概念ですが、「今すぐ現金が必要!」となった場合にいくらぐらいを用意できるのかということが当座資産からはわかります。
その支払い余力を表す比率が「当座比率」です。
すぐに返さないといけないような負債(流動負債)がある場合、どのくらいの支払い余力があるかが当座比率によってわかります。
つまり、当座比率が100%を下回っている企業というのは、すぐに資金がショートするため、早急に何らかの方法で現金を得る必要があるということです。
当座資産はあくまで「すぐに現金化できるもの」が対象になります。前受金や未払金であっても回収に時間がかかるようなものは、当座資産から外した方がより正確な指標が得られます。
例えば、建設業など工事に長期間を要するような業種では、未成工事受入金などは前受金ですが当座資産から外して計算します。
当座比率については以下の記事で解説しています。併せてぜひご一読ください。
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当座資産に対し、流動資産は1年以内に現金化の見込みがある「棚卸資産」を含むものです。
つまり流動資産=当座資産+棚卸資産(+回収に時間のかかる前受金など) となります。
棚卸資産とはすなわち「在庫」であり、製品・原材料・仕掛品などを指します。製品を作っても売れないと現金になりません。
「今すぐ現金が必要」という状況なのに「1年以内に~」とのんびり構えていると必要資金がショートしてしまって、資産があるはずなのに黒字倒産という事態もあり得ます。
流動資産と流動負債の関係を表す「流動比率」は、企業の安全性・安定性を図る上でも重要な目安として考えられています。
流動比率は、少なくとも100%以上が必要です。1年以内に払わないといけない負債に対して、資産がないということになると、資金繰りができずに赤字になってしまいます。
100%を下回っている場合は、何らかの資金調達の方法を考えないといけません。
企業の分析を行うにあたっては、流動比率の数値だけでなく、当座比率や貸借対照表を確認して内訳についても目を配った方が良いでしょう。
流動資産・流動比率についての記事を他にも公開しています。併せてぜひご一読ください。
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当座資産を元に当座比率を計算したほうが、企業の資金繰りについてより正確に見られるというのは事実です。
しかし、それでなぜ流動資産・流動比率の指標も残っているのでしょうか。実は、健全な企業経営を行っている会社であれば、在庫管理を適切に行っており、棚卸資産は売上高の1ヶ月程度なのです。
つまり、流動比率で計算しても、そこまで計算結果が当座比率と大きく変わりません。
流動比率が高くても、実際には資金繰りが苦しいという場合は、棚卸資産の割合が大きく、過剰在庫になっているということがわかります。
在庫を以上に多く抱えてしまうというのは、商品が消費者のニーズを読み取っていないということが上げられます。
在庫管理というと、商品の倉庫で数を数えるというような地味な作業を想像しがちですが、実は企業にとって非常に重要なタスクなのです。在庫管理の重要性については、以下の記事でも解説しています。あわせてご一読ください。
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