社会保険労務士と行政書士、どちらの士業も独占業務を持つスペシャリストとして人気が高く、社会保険労務士と行政書士の資格をダブルライセンスされる方もいらっしゃるほどです。
今回はこれから資格取得に向けスタートされる皆さまに役立つ、社会保険労務士と行政書士、二つの士業の受験資格などの比較を解説していきます。
社会保険労務士と行政書士、各々試験を受けるのに必要不可欠な受験資格についてご紹介したいと思います。
社会保険労務士の受験資格は「学歴」「実務経験」「厚生労働大臣の認めた国家試験合格者」の3つに大きく分けられます。
この受験資格の1つである「厚生労働大臣の認めた国家試験合格者」のなかに「行政書士となる資格を有する者」と明示されています。
行政書士の受験資格はありません。
学歴、職歴、国籍など一切の制限がなく誰でも受験することができます。
以上より、社会保険労務士試験を受けたいけど、高卒で実務経験もなく「学歴」「実務経験」の受験資格を満たせない方でも、行政書士の資格を持っていれば受験資格を得ることができます。
つまり、はじめに受験資格のない行政書士の資格取得を目指し、次に社会保険労務士を受験すれば、高卒の方でもダブルライセンスを狙えることになります。
社会保険労務士と行政書士はどちらも年1回開催される国家試験です。
難易度がよく比較されていますが、どちらのほうが高いのか合格率と試験の特徴で比較してみましょう。
※2019年度の行政書士試験の合格発表は2020年1月29日に行われるため、比較は2009年~2018年の過去10年間で行いました。
過去10年間(2009年~2018年)の平均合格率は「6.5%」です。
※ちなみに2019年度の合格率は6.6%ですので、過去10年間(2010年~2019年)の平均合格率は「6.4%」です。
過去10年間(2009年~2018年)の平均合格率は「10.2%」です。
社会保険労務士試験の出題科目は、主に「労働保険」と「社会保険」の二つです。
その中から「労働基準法」「労働安全衛生法」「労働者災害補償保険法」「雇用保険法」「労働保険徴収法」「労務管理その他の労働に関する一般常識」「社会保険に関する一般常識」「健康保険法」「厚生年金保険法」「国民年金法」の10科目に分かれて出題されます。
出題形式は、選択式が1時間20分で8問、択一式が3時間30分で70問、計4時間50分で78問を解くことになり、記述式は一切なく、すべてマークシートによる回答となります。
試験時間がとても長いですが、問題数の多さ、問題の長文化が進んでいるため、問題を解くスピードも要求されます。
また、各科目とも合格基準点が決められており、どれかひとつでも達しなければ不合格となりますので、出題範囲全ての科目をバランスよく学習し、苦手科目を作らないことも必要となります。
行政書士試験の出題科目は、主に「行政書士の業務に関し必要な法令等」と「行政書士の業務に関連する一般知識等」の二つです。
その中から「憲法」「行政法」「民法」「商法」「基礎法学」などの法令5科目と行政書士の業務に関する一般知識など1科目の計6科目に分かれて出題されます。
出題形式は、「行政書士の業務に関し必要な法令等」は択一式及び記述式(40字程度で記述解答)で46問、「行政書士の業務に関連する一般知識等」は択一式で14問、計60問が出題され、午後1時~午後4時までの3時間で解くことになります。
また、「法令」及び「一般常識」という二つの大枠で各々約5割前後の合格基準点が定められていますので、例えば「法令」のうち、「行政法」や「民法」などの重点科目を集中的に勉強するなど効率良く学習することも可能です。
合格率でみると、社会保険労務士試験は一桁代であるのに対し、行政書士は二桁代であるため、社会保険労務士試験のほうが高難易度の資格と言えますが、それほど大差はありません。
また、試験の特徴をみると、社会保険労務士のほうが出題科目が広範囲に渡り、各科目とも合格基準点が存在するところから、行政書士のほうが低難易度の資格と言えますが、行政書士試験の出題形式には「記述式」があることから、論述に馴染めない方は全マークシート形式の社会保険労務士のほうが向いているかもしれません。
社会保険労務士と行政書士は基本的に独立開業系の資格ではありますが、会社員として資格を活かしながら就職・転職したい方のほうが数多くいらっしゃるのではないでしょうか。
社会保険労務士と行政書士を比較して最大の相違点は「就職・転職に有利な資格はどちらか」ということだと思います。
社会保険労務士の資格を取得したら、全国社会保険労務士連合会へ登録することで「社会保険労務士」と名乗ることができます。
社会保険労務士の場合、登録区分に「勤務」があり、会社員として企業に勤めながら社会保険労務士と名乗り、社内実務に携わることができます。
またネットで検索すると、社会保険労務士の求人はすぐに見つかります。
社会保険労務士は「人事労務管理のスペシャリスト」ですので、企業に人事部がある限り、仕事は山のようにあるのです。
行政書士の資格を取得したら、日本行政書士会連合会の審査を受けて登録することで「行政書士」と名乗ることができます。
行政書士の場合、登録区分は「開業」だけですので、必然的に開業することとなります。また、会社員として行政書士の仕事をすることもできますが、その場合、会社員の業務と行政書士の業務を完全に切り離す必要があります。
そのため、行政書士と名乗り、社内実務に携わることができません。
またネットで検索しても、行政書士の求人はほとんどありません。
つまり会社員が行政書士の資格を取得しても、企業内で活かせないのが現実です。
いかがでしたか?
就職・転職に資格を活かせるのは社会保険労務士に軍配が上がりましたが、社会保険労務士と行政書士、この二つの士業の受験資格や難易度を比較したことで、それぞれの良し悪しがおわかり頂けたのではないかと思います。
皆さまがこれから目標とされる資格取得の道、迷うことなくお進み頂ける材料となりましたら幸いでございます。
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