決算書を全く読めなくても経営そのもには大きな問題はないかもしれません。しかし決算書はその会社の一年間の活動の結果を表すいわば成績表のようなものです。決算書の内容が理解できれば、会社の問題点やリスクを事前に知り素早く解決できます。
今回は貸借対照表の仕組みと読み方について解説します。
貸借対照表とは、事業を行うためにお金を何に使ったのか、そのお金をどのように調達したかをまとめた表のことです。
いわば資産の運用形態と資金の調達源泉を表しています。
企業は1年間の事業年度を終えると、株主や金融期間に対して決算書という書類にまとめて1年間の企業活動の結果を報告をしなければなりません。
この決算書は、貸借対照表と損益計算書の2つから成り立っています。
貸借対照表は、ある時点のおいてその会社に現金、不動産、借入金などがどれくらいあるかを表します。
損益計算書は、ある期間に会社がどのくらいの利益を稼ぎ、また費用を支払ったかを表します。
事業期間が4月1日から翌年3月31日までの場合、貸借対照表は3月31日時点での会社の財務状態、損益計算書は4月1日から3月31日までの集計を表しています。
それ以外に、会社の活動による現金の増減を表すキャッシュフローというのがありますが、こちらは中小企業においてはあまり使われません。
貸借対照表を見れば、企業がある時点でどのくらいの財産や将来資産に変えることのできる権利を所有しているかがわかります。
貸借対照表は、決算日時点においてその会社が持っている「資産」とその会社が負っている「負債」とその差額である「純資産」から成ります。
資産は次の3つです。
・流動資産
・固定資産
・繰越資産
流動資産は、1年以内に現金化することのできる流動性のある資産のことです。
当座資産、棚卸資産、その他流動資産の3種類に分けられます。
実際の賃借対照表でも、この順番で上から記載されます。
現金・預金や売掛金、有価証券などが当たります。
固定資産は、長期間にわたって会社が保有する資産のことです。
固定資産は有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産に分類できます。
不動産、工場設備、特許権などが当たります。
流動資産と固定資産の違いは、営業活動を通じて得られるか、資金回収が1年以内に実現するか否かで分かれます。
繰越資産は、実際には費用であるものの、支出の効果が長期にわたるもので、一度資産にして、徐々に費用に振り替えるものです。
例えば会社の設立費用は、会社を設立したことによる効果が会社が存続する限り得られるので、一時的に資産します。
会計上の繰越資産と、税務上の繰越資産は、費用として計上する方法が異なります。
会計上では好きな時に償却できますが、税務上においては、税法上の償却期間に合わせて償却をしていく必要があるので注意が必要です。
負債は次の2つです。
・流動負債
・固定負債
流動負債は、1年以内に返済義務のあるもので買掛金、支払手形、短期借入金があたります。
固定負債は、流動負債の逆で返済義務が1年以上先のもので長期借入金などがあたります。
流動負債と固定負債のどちらにあたるかは、その債務の支払い期限が1年以上先か否かで分かれます。
株主が出資する資本金や過去の利益の合計額のことです。「自己資本」とも呼ばれ返済の義務がないのが負債との違いです。
なお、資産の部と負債の部と純資産の部との合計は同額になります。
流動資産、固定資産、繰越資産、流動負債、固定負債、純資産を使って、会社の経営状況に関する重要な比率を知ることができます。
・自己資本比率
・流動比率
・当座比率
自己資本比率から倒産の危険度を読み取ることができます。
資産の総額のうち、返済義務がないものが多いほど会社経営は安定するので倒産の危険性は低いといえます。
つまり負債の部の金額が小さければ、その分純資産の部の金額は大きくなるので、企業の健全性を表す自己資本比率は高いことになります。
一般に自己資本比率が50パーセント以上であれば財務状態は優良とされ、逆に10パーセントを下回るようだと危険水域にあるとされます。
流動比率は、現金化が早くできる流動資産がどれくらいあるかを示しています。短期のうちに支払期限がやってくる流動負債対しての支払能力を見ることができます。
流動比率が高いということは、1年以内に現金化できる資産が1年以内に返済すべき負債を上回っていることを意味します。流動比率が高ければそれだけ支払能力が高いことを意味します。
流動比率は、一般的には130~150であれば経営状態に問題はありませんが、理想は200パーセントを超えることです。逆に100パーセントを切ったら危険水域とみたほうがいいでしょう。
当座比率は、支払能力を流動資産ではなく当座資産だけで求めるものです。当座資産とは、
預金や売掛金など流動資産の中でより現金化が確実なものをいいます。より厳しく支払能力をチェックするのに向いています。
資産の部、負債の部、純資産の部の代表的な各勘定科目は以下のとおりです。
勘定科目が出てきたら、「資産」、「負債」、「純資産」のどこかに分類されるはずです。
次にそれがわかったら、「流動資産」、「固定資産」、「流動負債」、「固定負債」、「純資産」のどこに分類されるのかを確認してください。
知らない勘定科目が出てきた場合に覚えておくと便利です。
貸借対照表を作成したのに、左側と右側がの合計金額が一致しない場合は、どこかに間違いあるので修正しなければなりません。
以下の点をチェックしましょう。
・各勘定科目の位置は正しいか
・各勘定科目の金額に不自然な点はないか
・仕訳帳を使って、具体的な原因を特定する
「資産の部」にあるべき勘定科目が「負債の部」や「純資産の部」にないか、逆に「負債の部」や「純資産の部」にあるべき勘定科目が「資産の部」に記載されていないかをチェックします。
例えば現金は流動資産ですから、必ず左側に来る勘定科目です。それが右側にあるということは、仕訳のミスをしていることになります。
単純なミスですが、慣れないうちはやりがちです。
貸借対照表の左右の合計金額の差異が明らかに大きい場合には、各勘定科目の金額に異常がないか確認しましょう。異常な金額というのは「普通では考えられない大きな額もしくは小さな額」という意味です。
自社の経理業務に詳しければ、「こんなに大きな金額になるわけがない」、「こんなに金額が小さいわけがない」とピンとくるはずです。
大体はキーボードの入力ミスが原因です。
総勘定元帳を見て金額の間違い、重複した仕訳や仕訳の抜けがないかをチェックします。
貸借対照表を読むことができると、経営状況を客観的な数値から、リスクや問題点を把握することができます。ポイントさえ理解すれば貸借対照表を読み解くことは決して難しくありません。
わからないところは、顧問契約をしている税理士に聞いてみてもいいでしょう。