士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所|HUPRO MAGAZINE
士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所

カテゴリ

これからの管理部門の役割は進化します!攻めの管理部門になろう!

公認会計士 荒井薫
これからの管理部門の役割は進化します!攻めの管理部門になろう!

皆さんは、管理部門という言葉の響きに、どのような印象を持っているのでしょうか?従来は、「守り」に徹するというイメージが管理部門には付いて回っていたと思います。しかしながら、最近は変わってきています。「攻めの管理部門」に生まれ変わる必要性について解説していきたいと思います。

管理部門の種類

管理部門はバックオフィスともいわれますが、多くの企業がその役割によって部署を分けています。それぞれが重要な役割を果たしていますが、主な部署を見ていきましょう。

人事(人事労務)

人事は、企業の人材を確保したり、育成したりします。人事と言えば採用のイメージがつよいと思いますが、その他にも新入社員の育成や社員の評価制度の策定や運用、人員配置の決定に伴う人事異動の通達など、業務は多岐にわたります。また、人事が労務もあわせて担当している場合は、入退社手続きや労使協定の締結、勤怠管理などの業務も追加されます。

経理

経理は企業のお金の出入りのすべてを可視化し、収支の数値を確定させた上で、経営者や対外的に情報を提供します。記帳などの日次業務を実施した上で、月次決算を締めます。1年の総決算として企業の締め日に合わせて年次決算の締め作業も行います。その企業のお金に関わる情報を扱うため、高い正確性が求められます。

法務

法務は企業において法律の専門家として、クライアントとの契約や商品の商標に問題が無いかなどあらゆる視点でチェックします。意図せず不当な利益を上げてしまったり、違法な企業活動を行ってしまうことがないよう、幅広い知識を持っておく必要があります。

総務

総務は他の管理部門が手が回らない様々な業務を担当します。具体的には受付、備品や書類の管理などから、他の管理部門のサポートまで行っています。専門的な知識が必要なわけではありませんが、会社を運営するにあたって必要不可欠な部署です。

昔の管理部門とこれからの管理部門

一昔前の管理部門といえば、「固い」、「保守的」、「融通が利かない」という印象が強かったと思います。しかし、最近はかなり変わってきています。それは、ベンチャー企業だけではなく、一部上場企業などの大企業の管理部門も同様です。何故、管理部門は変わってきているのでしょうか?そして、それはどのように変わっていくのでしょうか?
管理部門というと、長い間「利益を生まない仕事」という捉え方が長く日本には根付いていました。しかし、少子高齢化時代を迎えた日本は、目下、働き方改革が重要なテーマとなり、それに伴い管理部門に期待される役割も変わってきています。 更に、年功序列賃金制度と終身雇用制度が事実上崩壊した中で、適切な「人材の新陳代謝を促進する」のは管理部門が音頭を取るべき重要なミッションとなっています。

利益を産まない管理部門から利益に貢献する管理部門

「人材の新陳代謝」であれば、人事部だけの課題のように捉えられてしまいますが、人材を効率よく代謝させるためには、どこの部署で人材が硬直化しているのか、どこの部署のコストパフォーマンスが悪いかなどをタイムリーに把握する必要があります。従って、人事部単独では難しく、予実管理を行っている経理部門なども巻き込む必要があります。その結果として、管理部門は、利益に貢献する部門にブラッシュアップすることになります。

利益に貢献する管理部門とは

では、具体的に利益に貢献する管理部門の在り方を考えてみたいと思います。 利益に貢献するということには、2種類のやり方があります。収益を生むことと、収益の機会ロスを無くすことです。利益に貢献する管理部門とは、主に後者の「収益の機会ロスを無くす」ことに資すると考えると分かり易いと思います。

具体的には

  1. 企業のミッションと事業計画と連動させて、先回りした人事戦略を遂行するために、事業計画の進捗状況を営業部門とは違う視点で定点分析をして、人材のミスマッチの予兆を早めに把握し先回りした人事配置や新規採用を行う。

  2. 経理部や財務部でも同様に、特に費用科目の実態を分析して、固定費化しているコストが生じている業務を見つけ出して、総務部などと連携して、業務の効率化を立案して営業部門に提案をする。

未来の攻めの管理部門に必要な知識

攻めの管理部門になったからといって、従来から担当している業務がなくなるわけではありません。人事部であれば、人事査定や給与計算業務などの業務、総務部であれば、備品管理や保存書類の管理などの業務、経理・財務部であれば、月次決算、税務申告書の作成、各種納税手続き、年末調整などのルーティンワークはなくなることはないでしょう。しかしながら、同じ業務であっても、近い将来、そのやり方が変わっていくことは確実です。

AIの活用

かなりルーティン化された業務に関しては、今後はAIの活用が本格化してくると思われます。近い将来として具体的に考えられるのは、次のような業務です。
・採用時の一次面接や職務経歴書の分析業務
・月次決算における極めてルーティンな入力業務
・社員からあがってくる経費精算書の精査業務
・各種規程類の中でも、法改正に伴い修正が必要な部分の精査業務
このような業務は、AIに学習させたツールを使うことで、人の手を介さないでかなりの範囲までこなすことが可能になると予想されます。従って、AIを使った具体的な作業ツールの進歩に関しては、常にアンテナを張っておくことが今後の管理部門、特にその責任者に課せられたミッションと言えます。

柔軟性に富む人事制度

先に、攻めの人事について言及しましたが、雇用体系の多様化が進むにつれて、また新しい分野での人材の円滑な新陳代謝を目的として、正社員であっても、有期や勤務時間が短い正社員を上手く活用して、効率よい人件費の配分を模索する必要が出てくると思われます。
今は旧来型の人事制度と新しい人事体系の過渡期にあり、長年正社員で働いてきた高齢者の定年退職年齢を引き上げる必要があると共に、新しい動きについていくためには、最先端のノウハウを持つ人材も採用しないといけないという難しい局面に直面しています。この過渡期をスムーズに乗り切るために、両者をバランスよく併存させて、過去に蓄積したノウハウが途切れることなく、新しいノウハウの基盤にすることが必要です。そのためには、採用形態も、アウトソーシングや、短時間勤務正社員などを組み合わせて、機会ロスを最小限に抑えることが必要になると考えられます。

まとめ

「攻めの管理部門」と聞くと、収益を生むことと勘違いしてしまいそうですが、管理部門の本質はこれからも変わりません。特に公開企業の場合、マーケットから要求されるガバナンスは厳しくなっているわけですから、管理部門の本質が守りであることは実は変わらないのです。
ポイントは、「発想の転換」だと思います。同じ守りという業務であっても、過去を見て古いやり方に対して疑問を持つことなく繰り返すのではなく、管理部門でも新しい技術やノウハウを活用して、積極的に改善を図り、結果として利益に貢献をすることが出来るようにすることが、正しい攻めの管理部門と言えると思います。

この記事を書いたライター

公認会計士としてIPO準備支援業務に従事後独立。M&A業務や中小企業支援業務を行い、その後事業会社のCFOに就任。ブランドプリペイドカード発行事業の立上げなど行う。現在は主に海外Fintech企業への日本市場のサポート業務などを行っている。
カテゴリ:コラム・学び

おすすめの記事