就業規則を作る際は、「絶対的必要記載事項」「相対的必要記載事項」「任意記載事項」の3つがあります。本記事ではそのうちの「絶対的必要記載事項」について中心に解説します。
絶対的必要記載事項とは、就業規則に絶対に記載しなければならない事項です。
就業規則に記載する内容としては、必ず記載しなければならない絶対的必要記載事項と当該事業場で定めをする場合に記載しなければならない相対的必要記載事項が、労働基準法第89条により定められています。
絶対的必要記載事項は以下のようなものになります。
・始業及び終業の時刻
・休憩時間
・休日
・休暇
・就業時転換に関する事項
・賃金の決定、計算方法
・賃金の支払方法
・賃金の締切り及び支払時期
・昇給に関する事項
・退職に関する事項
それぞれについて、具体的な内容と就業規則の例を確認しておきましょう。
休憩時間については、長さや与え方、休日については日数や与え方を記載します。
年次有給休暇、産前産後休暇、生理休暇、特別休暇等の休暇の与え方や基準を記載します。シフト制や交代勤務を行わせる場合には、シフト表の通知や交代をルールを記載します。
・始業及び終業の時刻・休憩時間
・始業及び終業の時刻・休憩時間・就業時転換に関する事項
・休日
出典:厚生労働省労働基準局監督課:モデル就業規則 平成31年3月版
賃金がどのように構成されるのか、手当の種類や金額、割増賃金の計算方法などを記載します。
・賃金の構成、通勤手当、役付手当
・割増賃金
出典: 厚生労働省労働基準局監督課:モデル就業規則 平成31年3月版
退職する際のルールや懲戒解雇などの解雇事由、定年はいつなのか、定年後の継続雇用についてなどを記載します。
・定年に関する事項
出典: 厚生労働省労働基準局監督課:モデル就業規則 平成31年3月版
モデル就業規則のひな形がありますので、作成時には参考にしてみてください。
参照:厚生労働省WEBサイト:モデル就業規則について
参照:東京労働局
相対的必要記載事項とは、社内規定などで定めをする場合には就業規則にも必ず盛り込む必要がある事項です。
具体的には以下のような内容です。
・退職手当に関する事項
・臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項
・食費、作業用品などの負担に関する事項
・安全衛生に関する事項
・職業訓練に関する事項
・災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
・表彰、制裁に関する事項
・その他全労働者に適用される事項
任意記載事項とは、任意に取り決めをしたいことがある場合に記載する事項です。ただし、就業規則では法令や労働協約に違反する内容を記載しても無効になる可能性があります。
出典:厚生労働省 リーフレットシリーズ労基法89条 就業規則を作成しましょう
就業規則は、労働者の賃金や労働時間などの労働条件に関することや職場内の規律などについて定めるものです。
労働基準法第89条・90条により、常時10人以上(パートタイマー・アルバイト含む)の労働者を使用している事業所では、就業規則を作成し、過半数組合または労働者の過半数代表からの意見書を添付し、所轄労働基準監督署に届け出る必要があります。
また、就業規則を変更した場合も同様です。
就業規則の届け出については、電子申請で提出可能です。詳細は「e-GOV」電子申請システムをご確認ください。
せっかく就業規則を作成しても、記載事項にもれがあった場合、作成義務を果たしていないと判断される場合があります。ここでいう「作成」とは、たんに「作った」ことではなく、必要事項をすべて盛り込んだものを作成することを意味しています。
そのため、必要事項の内容を盛り込まなかった場合は、それが絶対的必要記載事項ではなく、相対的必要記載事項であっても、労働基準法第120条において違反とみなされ、「30万円以下の罰金」という処罰対象になってしまいます。
こうしたことがないよう、就業規則作成時には専門家である社会保険労務士(社労士)に相談することをおすすめします。