2018年から試験範囲の見直しが行われた簿記2級。2018年度の合格率は15%前後とそれまでの20~30%の合格率が半減。傾向が読みづらく相当難易度が上がったと話題になっていました。しかし2019年度になり6月試験の合格率は25.4%と従来並みになったと思いきや、11月の153回試験において、歴代一の難問と言われるような難しい問題が出題されました。今回は第153回日商簿記2級の問題の難易度と、これからの対策について解説します。
2019年11月17日。日商簿記検定2級の第153回試験が行われました。簿記検定2級といえば、経理や税務、内部監査実務者だけでなく、商業高校でも「簿記専門職の入口」として広く推奨されており、毎年15~20万人が受験する人気資格です。
しかし、2018年に試験範囲の見直しが行われ、それまで簿記1級の範囲だった法人税等の計算に係る税務会計、およびグループ企業を前提とした連結会計なども範囲に加わったことで難易度がぐんとアップし、2018年度の合格率は軒並み15%前後に落ちました。2019年2月の第151回試験では12.7%とここ数年では最低。特に第3問の連結会計の問題は、今までにないものでした。
しかし、その後の第152回試験では、合格率が25.4%に持ち直し、第153回試験でもその傾向が続く?と思われたのですが、再び第3問に連結会計の問題が出題。しかもそれが第151回の難易度を上回る難問であったことから、試験終了後のTwitterでは受験生のつぶやきが炎上。その日のトレンド入りする事態になりました。(なお、第151回試験の2月24日はトレンド入りしていません)
また、各予備校の解答速報などでも、解説講師陣の困惑が見て取れます。
第153回の簿記2級について、日本商工会のWEBサイトに掲載されている「出題の意図」によると、以下のように記載されています。
なお、連結決算については、前述の第151回試験でも出題されており「これからも出題します」という意図はあったといえばそうなのですが、第153回でも格段に難易度も上がっており、他の問題も含めて試験時間内に解き切るのは難しいと言える問題でした。
試験勉強であるからには、ある程度傾向と対策を練ったうえで、出題される確率が高い問題を重点的に勉強することになります。
あえてそのスキをついたような、範囲としては含まれているものの、今まで出題されたことがなかったため、対策を立てられる事がなかった論点の出題がされたわけです。
11月25日より、各商工会議所で第153回の日商簿記検定の合格者発表が行われています。
第153回簿記検定試験を受験された皆様へ
つまり、第3問は確かに難問でしたが、それ以外は逆に難易度は低めで、内容的には解答しやすい問題でした。仮に第3問を落としたとしても他の問題をきっちりと押さえた人がちゃんと合格できたということになります。
かつては過去問題を数回繰り返せば合格できると言われた簿記2級ですが、ここ数回の状況を見ていると、明らかに難易度が高まっています。
また、出題意図を見ていると「試験対策」として特化するのではなく、ちゃんと簿記を実務に生かすために勉強してきた人であれば解答できるという前提にたって、受験者を振るい落とすような、ある意味マニアックな難問がこれからも出題されるかもしれません。
2月の試験では今回の受験者や予備校の荒れぶりに応えるような出題になるのか、また反発して難易度が高まるのかはわかりませんが、試験において難問は後回しにして、できる問題から解答するのは試験のセオリーです。
簿記2級で満点を目指すというのは、現在の難易度では無謀な挑戦でしょう。
むやみに手を広げず、まずは基本と基礎をしっかりと押さえること、難問が出ても慌てずに時間配分を守ることが合格点を取るコツといえます。