昨今、会計士受験生の数が減少している話を聞き、さらに会計士の監査法人離れが加速している話もよく聞きます。一昔前、会計士といえば稼げる花形資格の代表でもありました。
それがなぜ会計士不足、監査法人離れが起きるようになったのでしょうか。今回は会計士の監査法人離れが起きた原因を分析しました。
監査法人離れとは、会計士の方々が就職先として監査法人を避けることを言います。
以前は会計士の就職先と言えば、Big4と言われる監査法人に人気が集まり会計士合格者の9割はBig4の監査法人に就職していました。
ところが最近は、会計士自体の数が減少し会計士受験生の数も減少する負のスパイラルが続いているため、監査法人の人手不足が浮き彫りになりました。
そこで出てきた言葉が「監査法人離れ」です。監査法人を避け企業・会計事務所に就職する方が増えています。監査法人離れが起こるには監査法人の仕事に起因していると考えます。では監査法人ではどのような仕事をしているのでしょうか。
監査法人は、企業の決算書など財務諸表が会計基準どおりに作成されているか違法がないかを確認する「監査」をメインにしている組織です。監査だけでなく、会計のコンサルティング業務を行うところもあります。
監査・会計コンサルティングと聞くとやりがいのある仕事と思われそうですが、実際の業務はそうでもありません。
ある会計士の話ですが「監査と言えば響きはいいですしかっこいい仕事と思われがちですが、実際はマニュアルに沿ったルーチンワークの繰り返しであり、書類作成や数字のチェックなど今後は機械に取って変われる代表的な業務をこなしているだけです。」
実際に働いている人の声が、今の監査法人、会計士業界を物語っているとも言えます。この言葉からある程度監査法人離れが起きている理由が分かるのではないかと考えます。では監査法人離れが起こる理由を見ていきましょう。
会計士の監査法人離れが起こる主な理由は、次の3点です。
(1)失敗した時のリスクが高い
(2)監査法人に残って偉い立場になると、さらにリスクが高まる
(3)リスク回避の仕事になってしまい、仕事が面白くない
監査で不正を見抜けなかった後のリスクの高さを懸念して、監査法人を離れる方は多いです。しかし監査法人を離れる一番の理由は、「仕事が面白くない、つまらない」です。
現在の監査は、完成されたマニュアル通りに淡々と業務をこなすだけになっています。ミスをして後から起こるリスクヘッジでしょうが、マニュアルどおりにやることは仕事ではなく作業になってしまいます。
「昔は会計士も自由に裁量を持って仕事ができていた」との言葉をベテラン会計士からよく聞きます。防衛のための仕事をしているのなら、自分で裁量を持って仕事をしていきたいと考える会計士が増えているのが現状です。
監査法人離れが起きている会計士業界ですが、監査法人に残ったいわゆる監査法人離れをしなかった会計士たちはどうなっているのでしょうか。監査法人の現状を見ていきましょう。
大手監査法人は、マネージャークラスの中堅職員が抜け新人が多くなったこともあり、仕事の質が落ちている問題に直面しています。人手不足にも陥り労働時間も長くなっています。
人手不足を解消するために、若手会計士や将来会計士になりたいと考えている人を採用しているのも現状です。成長した中堅職員が辞める→人手を補うため若手を採用する→仕事の質が落ちる・労働時間が長くなる→監査法人離れがさらに起きる、というデフレスパイラルに陥っています。
このデフレスパイラルは、監査法人離れが加速する原因にもなっています。では監査法人を離れた会計士たちは今、何をしているのでしょうか。監査法人離れをした会計士たちの現状を見ていきましょう。
監査法人を離れた会計士たちの多くは、独立し監査業務だけでなく、税務の道へ進む方もいれば、コンサルティング業務をメインにしている方もいます。みなさん会計士として活躍の場を広げています。
監査法人を辞め独立したある会計士の方は「独立当初は金銭面で大変でしたが、自分のやりたいことを自分で裁量を持って働ける今の環境がいいです。ただ監査法人で学んだことは無駄ではありませんでした。今の業務はやはり監査法人で得たことが大きい。だから最初はやはり監査法人を経験すべき!」とおっしゃっていました。
本来会計士の仕事は、「監査」だけでなく経理、税務など幅広く活躍できるチャンスがあります。「監査」という仕事をメインに行ってきた監査法人から離れ、自分のやりたいことで活躍する会計士が増えていけば、また人気の職業になる日も近いことでしょう。
会計士の監査法人離れについてまとめました。監査法人離れが起きている主な原因は、「仕事のやりがいのなさ」だと思います。リスクヘッジのためのマニュアルをこなすことが仕事になっている現状を変えるにはどうすべきか。今後IT化が加速しさらに会計業務は機械に取って変わられることになった時、会計士の仕事はどうなるのでしょうか。会計士業界の今後に注目です。
▶︎ 士業・管理部門でスピード内定|最速転職HUPRO はこちら