経理職を目指す人が転職前のファーストステップとして取得しておきたい資格が、日商簿記3級です。そんな簿記3級を1ヶ月の勉強で合格することは、可能なのでしょうか?本記事では、1ヶ月で合格するための勉強法や具体的なスケジュールについて解説します。
簿記3級は1ヶ月での合格が十分に可能な資格であるといえます。これまでの会計知識や理解度の速さによって左右されるものの、実際に士業・管理部門特化の転職エージェントである当社ヒュープロのご登録者のなかでも、1ヶ月という期限を決めた中で期限内で合格される方は多くいらっしゃいます。
ただし、ただやみくもに勉強しているだけで1ヶ月での合格できるとは限りません。そこでここからは、1ヶ月で合格するためにやるべきことを解説していきます。
はじめに、簿記3級を1ヶ月の勉強で合格する「ハードル」がどれくらいのものなのかを、把握しておく必要があります。
簿記検定を主催する日本商工会議所は「簿記3級のレベル」を以下としています。
出典:簿記3級のレベル│日本商工会議所
ある程度抽象的な表現なのでこれを難易度に落とし込むのは難しいですが、「経理・会計の業務を行うための最低限の知識」といった理解が良いかと思います。そのような簿記3級の合格率と合格に必要な勉強時間は、以下の通りです。
合格率 | 33.13% |
勉強時間 | 30~100時間 |
※合格率は2021年の第157回から2025年の第169回までの平均値
平均の合格率は33.13%と、他の資格試験に比べてことさらに低いというわけでは無く、かつ受験資格なども無いため、十分な勉強をすれば合格しやすい試験だと言えるでしょう。
勉強時間については、30~100時間とかなりばらつきがあります。ただし、経理についての知識が全くない初学者でも30時間での合格は可能であり、実際に合格した方の体験記やスケジュールも広く紹介されています。
そのため、30時間の勉強で試験範囲の学習が完了できる方であれば、1日1時間程度の勉強でも1ヶ月での合格が可能ということになります。
簿記3級のおおよその難易度が分かったところで、試験までの1ヶ月で勉強にどの程度の時間を使えるのかを考えます。社会人なら仕事があるのはもちろん学生も授業の時間などを踏まえると、勉強時間はある程度限られてしまいます。
特に社会人に関しては勉強時間がかなり限られてしまいますが、多くの合格者が「少しずつでも毎日勉強を続けるべき」としています。1日1時間でも1ヶ月あれば30時間程度の勉強時間が確保できるので、継続して勉強するのがオススメです。
簿記3級合格者の話を聞くと、様々な方法で合格していることが分かります。
最も多いのがテキストや問題集を購入し、独学で勉強を進めているケースですが、近年コンテンツが充実しているYouTubeで勉強を進めるという方も少なくありません。またCPAラーニングという無料で視聴できる動画教材を使ったという意見もあります。
また、学生で簿記に関する単位を取っていて授業を受けた内容を振り返っただけで「実質的な勉強時間は0」という合格者もいらっしゃいました。
なお通信講座という手段も検討できますが、基本的に1ヶ月での合格を想定していないことが多いため、1ヶ月で合格したいなら独学がオススメです。
独学で勉強する場合、いつ勉強するかに加えどの範囲にどのくらいの時間をかけるという戦略も立てなくてはなりません。知識や用語を頭に入れるインプットを前半、演習問題などでそれらの理解度を確認するアウトプットを後半に実施する形が基本です。
まず、知識を入れるためにテキストをざっと読みます。売れ筋のテキストは簿記検定を研究し尽くしているだけあって、かなりわかりやすく解説しているので、2~3度通しで読めばある程度理解できるはずです。
もし読むだけでは退屈という事であれば、講座のDVDが付いているテキストもありますので、そちらを見るのもおすすめです。
もし、読むだけのインプットではとても時間がかかってしまいそう、という場合は、実践しながら理解する方が向いているのかもしれません。早々に問題集に取り掛かりましょう。
テキストで流し読みしていたような箇所について、問題を解くことで知識の定着化を計ることができるのが問題集。いきなり問題集を見てもわからない部分は、テキストを読みながらでも問題を解いてみましょう。
過去問題集については、受験する検定に合わせた最新版のものを購入しましょう。というのも、2019年6月に大幅に内容が変わっているので、なるべく直近のものの方が内容が新しくなる傾向があります。
また、従来であれば過去問題集を繰り返せば、ある程度出題傾向はつかめたのですが、2019年6月以降となると、圧倒的に過去問題が足りません。
そこで、過去問題集と共に手に入れたいのが、例えば以下のような直前予想問題です。出題の要点と、パターンをつかむためにはぜひ解いてみてください。
参考:2025年度試験をあてる TAC直前予想 日商簿記3級
※こちらは2025年度試験用なので、それ以降の試験を受ける方は、その回に合わせたものを購入してください。
また問題は1度解いたら終了ではなく、最低でも間違えた問題は2回以上解くようにしましょう。そして間違いの原因を知識・理解不足なのか計算ミスなのかなどを分析し、適宜テキストに戻って復習することも大切です。
最後は、テキスト・問題集・過去問で間違えた回数の多かった問題「ここは苦手」という部分を徹底的に復習しましょう。試験本番までに間違いやすい箇所や、理解が不十分な項目を洗い出し、潰すことを目標にしましょう。
試験の前日は緊張するかもしれませんが、睡眠不足は集中力の低下を招きます。しっかりと休んで当日を迎えましょう。
ここまで、簿記3級に1ヶ月で合格するためにすべきである基本的な要素について解説しました。この章では、より細かい部分で注意すべきポイントをご紹介します。
1か月という短期間ではあれこれ勉強することは難しいです。
そのためテキストと問題集1冊ずつを最初にコレと決めます。
その教材をひたすら何度も繰り返し勉強するのがおすすめです。
またテキストと問題集は同じシリーズのものを揃えましょう。問題集でわからなかった部分についてはテキストの該当ページも確認して復習しやすいです。
ここで注意点として上げたいのが「必ず最新版を購入する」ということです。日商簿記3級試験は2021年度試験から、大幅な出題範囲改定や形式変更が実施されています。
改訂内容を盛り込んだテキストや問題集ではなく、うっかり古いものを購入してしまうと、改訂後の試験範囲が盛り込まれていなかったり、改訂前のもう出題されない内容が載っていたりと無駄が多く、合格からは非常に遠ざかってしまいます。
合格者の中で、これを重要視する声はよく聞かれます。試験日を先に決めておくことで、勉強を後ろ倒しすることなくスケジュール通りに実施しようという意識が高まるようです。
簿記3級検定は年に3回実施されています。ただ勉強を開始したタイミング次第では、1ヶ月後に試験がないというケースもあるかもしれません。しかし直近では、ネット試験という試験日に関係なく受験可能な形式が存在しています。このネット試験もうまく活用し、勉強開始日に予約をしておくのがオススメです。
簿記検定といえば、電卓を使用しますが、普段から電卓を使用することになれていないと、思わぬところで押し間違いなどしてしまいます。
簿記においては、12桁まで入る電卓であれば他に条件はありませんが、あまりケチって価格優先で選ぶと、使ってみたら指が滑ったりして結局買い直しといったことになりかねません。
高額なものを選ぶ必要はありませんが、こちらもテキストと同様、できれば自分で実物を触って選ぶことをおすすめします。自分が使いやすいと思う電卓を選ぶようにしましょう。
今回は、簿記3級に1ヶ月で合格するためにやるべきことについて解説しました。
簿記は「習うよりも慣れろ」とも言われます。本を読んでざっと知識をさらったら、「わからない」と悩むよりも手を動かして問題を解くようにしましょう。
簿記3級については、難化したとは言われますが、まだまだ独学でもしっかりと計画を立てて、集中して毎日の学習をこなしていけば1ヶ月でも取得可能な資格です。
ぜひ簿記3級を取得して知識のランクアップ・キャリアの道筋に役立ててください。
当コラム内では、簿記3級についての記事を他にも公開しています。併せてぜひご一読ください。
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