公認会計士の勉強をしている人の中には、監査法人での就業を検討している方も多いでしょう。監査法人は専門性の高い監査業務をメインとして行っていますが、未経験でも転職できる可能性はあるのでしょうか?今回は実務未経験者が監査法人に転職できる可能性について、分かりやすく説明していきます。
まずは、監査法人について解説します。
監査法人とは、公認会計士が5人以上集まって設立された法人で、企業や団体の財務諸表等の監査を行うことを主な業務としています。
監査法人の業務には監査業務と非監査業務があります。
監査業務とは、企業や団体の財務諸表などの会計情報について、公正かつ独立した立場から検証・評価し、その正確性や信頼性について報告する業務です。
一方で非監査業務とは監査以外の業務のことであり、企業や団体が直面する様々な問題に対して、専門知識を活用したアドバイスや支援を行う業務です。
税務調査や内部統制の設計や改善、財務コンサルティングや情報システム監査、M&Aのデューデリジェンス業務などがあります。
監査法人は、大きく分けて大手監査法人、準大手監査法人、小規模監査法人に分類されます。
中でも、大手監査法人は「BIG4」とも呼ばれる、有限責任あずさ監査法人、新日本有限責任監査法人、有限責任監査法人トーマツ、PwCあらた監査法人を指します。
BIG4監査法人はグローバル市場における財務監査のシェアが50%以上であり、世界的な大手企業や公的機関を含む多数の企業の財務監査を行っています。
結論から申し上げますと、未経験でも監査法人への転職は可能です。その一因として、監査法人が売り手市場であることが挙げられます。
売り手市場とは、その市場で働きたい人の数が採用募集人数よりも少ないことをいい、働きたい人の方が優位な状態であるといえます。
監査法人の場合、求職者の数はその年の公認会計士試験の合格者数に大きく影響されます。例えば、2007年と2008年は合格者数を無理やり大きく増やしたことで、監査法人においては就職難の時代となりました。その影響で公認会計士試験の人気が高まり、2010年~2011年にかけて公認会計士の受験者数が大きく増加しますが、合格者数を大きく絞り、同時に監査法人が飽和状態となり、監査法人ではリストラ問題などが発生しました。
しかし、これらの流れから近年では、試験の難化や、受験者数の減少に伴い監査法人は売り手市場の状態が続いています。
監査法人の採用は公認会計士試験の発表後に一気に行われる傾向にあるため、ライバルも多く短期間での転職活動となるので、きちんと対策を練って臨む必要があります。
監査法人の仕事のうち、監査業務は公認会計士の独占業務です。独占業務とはその人にしか行えないと定められている業務のことなので、公認会計士を持っていないと監査業務は行えないということです。
そのため、やはり有資格者の方が積極的に採用される傾向にあります。一方、非監査業務であるアドバイザリー業務などは、資格がなくても行うことができますが、その分実務経験を重視される傾向にあります。
先ほど述べたように監査法人への転職は、公認会計士の資格を持っているかどうかが重視される傾向にあります。
米国公認会計士(USCPA)の資格も有利には働きますが、USCPAでは公認会計士法にもとづいた独占業務を行うことはできないため、即戦力としては採用されにくいこともあります。
資格がなく、実務経験がない場合でも、経理職や金融機関、税理士法人での実務経験などがあれば、評価される可能性は十分にありますので、キャリアステップの一環として考えてみるのも良いでしょう。
ただし、経験も資格もない場合はポテンシャルを見込まれての採用となることが一般的です。転職エージェントを活用するなどして、選考通過率の高い書類を作成したり、面接対策で面接に慣れておきましょう。
監査法人への転職について、経験のあるなしに関わらず年齢制限はありません。ただ、一般的に未経験で監査法人でのニーズがあるのは30代までと言われています。
40代以降になると、未経験の場合は経理職や会計事務所での業務経験や+αのスキル(英語力など)があれば、採用において評価されることがあるものの、そうでない場合はかなり難しくなってきます。
監査法人への転職を目指す方のほとんどが、Big4監査法人への転職を検討したことがあると言っても過言ではないかもしれません。なぜなら、監査法人においてBig4の認知度は圧倒的に高いからです。
それだけでなく、大企業の担当ができたり、ここでしか得られない高度な業務経験を積むことができることができることも、人気の理由です。
そんなBig4に未経験から転職することも可能ではあるものの、やはり公認会計士資格を所持していないとかなり難しいでしょう。
監査法人の年収については、Big4監査法人とそれ以外の中小監査法人で多少差があり、Big4では平均788万円、中小が平均652万円と言われています。ただし、未経験の場合はこの平均値よりは下がるのはもちろんですが、公認会計士資格有無によっても変わってきます。
実際、資格を持っている未経験者は400~500万円、持っていない未経験者は300~400万円が相場とされています。前職の年収から大きなギャップを生みたくない場合は、資格を取ってから転職するのがよいでしょう。
ここまででご紹介した通り、未経験から監査法人に転職するのは決して簡単なことではありません。転職に失敗しない、有利に進めるためのポイントを3つご紹介します。
まずはなぜ監査法人で働きたいと考えているのか、自分自身でも理解しておく必要があります。人それぞれのきっかけや志があって応募するので、志望動機に正解はありません。しかし履歴書への記載はもちろん面接時にも聞かれることが多いポイントなので、なんとなくで作成するのではなく、「なぜそう思ったか?」を自問し続けることで明確な志望動機を見つけましょう。また、それを面接時にもアウトプットできるよう準備しておきましょう。
次になぜその法人に応募したのかという理由も落とし込みましょう。同じポジションの募集は沢山ある中でなぜその監査法人を選んだのかは、書類選考でも面接でもほぼ必ず選考基準に入っています。志望動機の完成度が低かったり他の監査法人でも通用するような内容だと、志望度が低いもしくはもし入社してもすぐ辞めてしまうかもしれないという懸念に繋がってしまいますので注意が必要です。企業情報や求人を仔細に確認し、相手に熱意が伝わるような内容を作りましょう。
転職活動にあたって、自分で応募する求人を探したり面接の日程調整をするのを面倒に感じる方も多いはずです。そこで活用すべきなのが人材エージェントです。希望の条件やご自身の経歴などを伝えることで効率的に求人を提供され、日程調整もエージェントが実施してくれます。内定を複数社もらった際に断りをいれてくれるなど、心理的負担のある対応もする必要がありません。そういったサービスを無料で受けられるエージェントが多いのも特徴です。
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監査法人へ転職をした場合、その後どのようなキャリアを積むことができるのか見ていきましょう。
Big4をはじめとした大手監査法人は扱う案件の規模感も大きく、ネームバリューがあります。
大手監査法人で実務経験を積んでおけば、その後の転職などにおいても非常に有利に働くことでしょう。
また、大手監査法人は年収帯が高いことも特徴です。スタッフという立場からキャリアを始め、その後シニアスタッフ→マネージャー→シニアマネージャー→パートナーと昇格をしていく仕組みになっています。平均的に4年ほどで1ポジション上がっていくことができ、ポジションによって年収も変わってきますので、順調に年収アップしていくこともできます。
中小の監査法人は、Big4に比べるとクライアントの規模が小さくなり、業務量も比較的少ない傾向にあります。
年収こそ大手監査法人には劣りますが、働き方という面では待遇が良く、産休育休後の復帰などもしやすい環境にあります。
中小監査法人内で役職アップしていくことも良いですが、中小監査法人で実務経験を積んだ後に大手監査法人に転職してキャリアアップを目指すこともできます。
近年、人手不足により監査法人の採用活動は積極的に行われているため、未経験の転職も可能な場合が多いです。
しかしながら、基本的には公認会計士やUSCPAの資格を有している人が優遇される傾向にあるため、資格取得した上での転職がオススメです。
しかしながら、未経験、無資格の場合でも前職の経験や勉強経験を生かすことは可能なので、監査法人への就職を諦めず、是非チャレンジしてみてください!!
監査法人への転職・就職をお考えの方は、エージェントの活用をしてみることもオススメです。
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