前回、公社債の購入から償還までの仕訳や公社債とは?を解説しました。今回は公社債やその償還金に係る税金について解説します。
前回お話した通り、公社債とは、公共債と民間債を合わせて呼んだものです。公社債は株式と違い、満期になると額面の金額が償還金として振込されます。また、額面の金額よりも多少割引された金額で発行されることもあるため、償還金額と購入金額が異なる可能性があるのも特徴の一つです。
ということもあり、公社債の償還金を獲得すると何らかの利益が発生する可能性があるため、この償還金に対して原則税金がかかることとなります。
では、公社債の償還金にはどのような税金がかかるのでしょうか。
まず、法人の場合は一度源泉所得税としていくらかの税金はかかりますが、最終的には確定申告により他の利益とのバランスにより決まりますので割愛します。一方個人では発行される公社債によって課税関係が異なります。
まず、額面よりも安い金額で発行される公社債で、その発行時に発行差金(券面金額から発行価額を控除した金額)に対して源泉徴収が行われ、その源泉徴収税額が償還時の償還差益に係る所得税等とみなされ、それだけで課税関係が終了する(源泉分離課税)ものがあります。
これは、例えば200万円の公社債を190万円で購入した場合に、10万円得することが明らかであるため、その10万円に税額かけたものを源泉徴収され、それだけで課税関係が終わるというものです。この場合は所得水準に関係なく一律の税率を掛けられて終わりとなります。
それ以外の公社債については、その償還時に償還金を上場株式等に係る譲渡所得等か、一般株式等に係る譲渡所得等の収入金額とみなして、申告分離課税として処理します。
よって、①では発行時に源泉徴収されていたことに対して、それ以外の社債では確定申告により20%及びその所得税額の2.1%を納めることとなります。
先ほど紹介した公社債のうち、発行時に源泉分離課税の対象となる公社債は次のものです。
・平成27年12月31日以前に発行された国債及び地方債
・平成27年12月31日以前に発行された内国法人が発行する社債(会社以外の内国法人が特別の法律により発行する債券を含む。)
・平成27年12月31日以前に発行された外国法人が発行する債券の一部
・平成28年1月1日以後に発行された預金保険法に規定する長期信用銀行債等及び農水産業協同組合貯金保険法に規定する農林債
よって、記事執筆時時点以降に発行された社債などについては源泉分離課税の対象とならないため、注意が必要です。逆に、該当する公社債が満期を迎えた時に間違えて税金計算しないように気をつけましょう。また、外国法人の場合は一部取り扱いが異なります。
先ほどお話した源泉分離課税される公社債以外の償還金については、上場株式等に係る譲渡所得等または一般株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなして、申告分離課税となります。申告分離課税ですので、他の所得金額にかかわらず所得税地方税合わせて20.315%の税率が課されることとなります。
ただし、特定公社債以外の公社債の償還金で、その償還の日においてその償還金の交付をした法人が同族会社に該当する場合におけるその同族会社の判定の基礎となる株主等又はその株主等と特殊の関係にある者が交付を受けるものは、申告分離課税の対象にはならず、雑所得として総合課税の対象となります。
これは、20%という低い税率に着目して同族会社が公社債を発行することで役員報酬としてもらうよりも低い税率となることを避けるために設けられた制度です。
最初にお話した、発行時に源泉徴収されると記載された公社債のうち、その発行価額が額面金額の90%以下であるもの、つまりかなりの割合で割引発行されている公社債の場合は償還時に源泉徴収が行われます。それぞれの源泉徴収額は以下の通りです。
・償還期間が1年以内のもの
償還金額×0.2%×15.315%(プラス地方税5%)
・償還期間が1年超のもの
償還金額×25%×15.315%(プラス地方税5%)
・分離利子公社債(証券会社の通知に記載されています)
償還金額×25%×15.315%(プラス地方税5%)
・償還が特定口座(源泉徴収選択口座)とされているもの
これらの割合等については証券会社を通している場合自然にわかりますので基本的に覚える必要はありませんが、頭の片隅に入れていつでも調べられるようにしておきましょう。
公社債は発行時に源泉分離課税となるもの、償還時に申告分離課税となるもの、償還時に源泉分離課税となるものが存在します。ほとんどの公社債は証券会社を通して売買されることと思いますので、実務上は証券会社がどれに当てはめるかを確認することで申告方法がわかることが多いのが実情です。