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クラウドファンディングとは?経理担当者目線でのポイント

HUPRO 編集部
クラウドファンディングとは?経理担当者目線でのポイント

近年、資金調達の方法も多様化してきております。そこで今回は、クラウドファンディングにおける会計上の処理について、現役の公認会計士が経理担当者向けに詳しくわかりやすく解説していきます。クラウドファンディングの概要から説明してますので、ぜひご参考にしてみてください。

新しくもメジャーな資金調達「クラウドファンディング」

クラウドファンディング。みなさまご存知とは思いますが、金融機関などから直接お金を借りるのではなく、インターネットを通じて不特定多数の人からお金を集める資金調達です。一時はメディアを賑わせていましたが、もはや資金調達方法の一つとしてすっかり定着したように思います。地域活性化や社会貢献など特定のジャンルに特化したものや、大手メディア企業が参入したものなど、クラウドファンディングのプラットフォームも乱立状態ですよね。

経理担当者としては、クラウドファンディングの会計処理や税務処理が気になるところですが、新しいスキームであることもあり、執筆時点では会計基準や国税庁通達等において明確な指針は出ていません。実例が積み上がっているのが現状です。
そのような前提ではありますが、今回はクラウドファンディングの会計処理及び税務処理について、基本的なポイントをご紹介したいと思います。

クラウドファンディングの基本類型

実務上のスキームを見るに、大まかに「寄付型」「購入型」「投資型」の3つの類型に分類できます。会計・税務処理においてもこの分類で対応ができますので、はじめにこの各類型について触れておきます。

(1)寄付型

「寄付型」と「購入型」は「非投資型」としてひとくくりに表現されることもあります。まずは寄付型。文字通り寄付として資金を受け取るものであり、募金に近い感覚で行われています。資金調達の目的としては、慈善事業や被災地支援など、社会貢献の側面が強い事業等において行われることが多いです。

募金と異なる点として、受け取ったらありがとう終了、とはならず「活動報告書」等の資料を作成しその後の進捗や成果を報告することが求められます。活動報告書はインターネット上に公開されている場合もあります。

(2)購入型

非投資型のもう一方、購入型です。まず資金を受け取った後、その対価として完成した製品やサービスを引き渡します。昔ながらの言い方をすれば予約販売に近いイメージです。一般的な企業で商品やサービスを新たに開発するプロジェクト等において、この資金調達のスキームが用いられることがあります。

この購入型のクラウドファンディングが今のところ最も一般的な印象です。大手クラウドファンディングのプラットフォームはこの様式を想定しているものが多いです。

(3)投資型

最後は投資型です。モノやサービスの取引を行うためではなく、投資として資金を受け取り、利息や配当等でリターンを支払います。株式型・ファンド型(公開前の株式やファンド持分が対象)のほか、融資型(金銭が対象。貸付型、ソーシャルレンディングともいいます)などいくつかの小分類があります。共通する特徴としては、リターンがモノやサービスでなく配当金や利息などの金銭である点が挙げられます。

スタートアップ企業において、金融機関からの借入の代わりに用いるケースが増えているようです。

なお、リターンが配当金である株式型・ファンド型の場合は、通常の出資等と同様返済義務はありませんが、リターンが利息である融資型の場合は借入ですので返済義務があります。

(3)投資型

クラウドファンディングの類型に応じた会計・税務処理のポイント

このようにクラウドファンディングは「寄付型」「購入型」「投資型」に大別されます。では私たち経理担当者は、これらクラウドファンディングを企業が実行することとした場合、どのように会計処理をすべきでしょうか。また、税務上の留意点等はあるのでしょうか。前述の類型ごとに確認していきたいと思います。(なお、企業目線ということで資金調達サイドについて記載しています)

(1)寄付型

会計処理上は、一般的な寄付金の取り扱いと同様です。基本的には、

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
現金預金 90 受贈益 100
手数料他 10

といったシンプルな仕訳を起票するのみです。
一方税務上も、同様に寄付金の受贈益について課税されるのみです。プラットフォーム手数料やその他諸経費はもちろん差し引きできます。このように、寄付型は全体として単純な会計・税務処理で足りると考えられます。

(2)購入型

会計処理上は、つまるところ通常のモノやサービスの販売と特に変わるところはありません。具体的には、資金調達時及びリターン支払時それぞれにおいて、
【資金調達時】

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
現金預金 90 前受金 100
手数料他 10

【リターン支払時】

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
前受金 100 売上高 93
消費税 7

といった仕訳を起票すると考えられます。
一方税務上も特段複雑ではありません。計上された売上高に応じて課税されるのみであり、消費税課税される点も通常の販売と同様です。

このように購入型もシンプルです。一点そもそもの留意事項として、購入型のような取引であっても寄付型とみなされることがあります。たとえば、目標金額やリターン等が明示されているプロジェクトであっても、資金調達額とリターンが乖離している場合は寄付型と判断されるケースもあるようです。実態判断というわけですね。

(3)投資型

投資型は少しだけ複雑です。調達先に対して支払うリターンが何かによって会計・税務処理が変わります。
まず、リターンが利息の場合。前述の融資型が該当します。こちらの場合、通常の借入に関する処理と同様の会計処理をすることになります。
【資金調達時】

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
現金預金 100 借入金 100

【リターン支払時】

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
支払利息 5 現金預金 5

リターンが配当金の場合

前述の株式型・ファンド型ですね。こちらの場合は新株発行として扱われます。
【資金調達時】

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
現金預金 100 資本金 100

【リターン支払時】

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
利益剰余金 5 現金預金 5

なお、税務上の取扱いも借入・新株発行のそれぞれに応じた税務調整が必要に応じて行われるのみです。

会計基準・税制改正には要注意

クラウドファンディングの分類及びそれに応じた会計・税務処理を一通りご紹介しました。ここまででご認識されたかと思いますが、個別の会計処理や税務上の調整に難しい内容はなく、どの分類に該当するか適切に判断することが最も重要です。

そして、これは冒頭にも触れましたが、クラウドファンディングという比較的新しい資金調達方法に会計基準や税制が追い付いていないことも意味します。従来から存在する取引類型に当てはめているだけですからね。

今後の会計基準や税制改正にクラウドファンディングに関する内容が織り込まれないか、経理担当者としては留意しておくことが望ましいでしょう。

この記事を書いたライター

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