会社で使われる言葉に「経費で落とす」というものがあります。一般的に「会社が負担してくれるお金」という意味で使われることが多いのですが、正しい意味を理解している人は、そう多くはありません。今回は、そもそも経費とは何なのかということから、「経費で落とす」という言葉の正しい意味について解説していきます。
まず、経費とはどのような費用のことを指すのかというところからお話しましょう。経費とは略語であり、正式には「経営費用」といいます。この名前からも分かる通り、会社が経営をするうえで必要となった費用のことです。
そして「経費で落とす」とは、この経営をするうえで必要となった費用を経費として、会社の帳簿に計上することを意味します。ですので「経費で落とす」という言葉を「会社が負担してくれるお金」という意味で従業員側が使っているのは、本来の意味とは異なるのです。会社側としては「経費で落とす」にしても支出があることに変わりはなく、会社の支払いが減るわけでもありません。
では、「経費で落とす」ことで何が変わるのでしょうか。実は、経費として計上することによって、その支出は税金の控除対象として扱われ、節税対策となるのです。
具体的に言うと、
もし、会社が決算時までにパソコンを10万円で購入した場合、その10万円は経費となります。先ほどもお伝えした通り、経費は課税対象となりませんので、利益100万円より10万円が差し引かれ、90万円×税率40%=36万円となるので、納税額は36万円です。このように納めなければいけない税金を下げることができるようになります。
では、どのような支出であれば、経費で落とすことが認められるのでしょうか。いくつか具体的にご紹介します。
役員だけではなく社員を含めた社員旅行や、業務上で必要となる移動手段にかかった費用のことを指します。具体的には、電車代、バス代、タクシー代などです。
業務上欠かすことのできない研修にかかった費用のことを指します。
業務と関係がある接待でかかった費用のことを指します。接待の際の飲食代などが挙げられます。
出張でかかった宿泊費、往復の交通費、出張手当などのことを指します。
従業員の福利厚生に関する費用のことを指します。従業員の親族への慶弔費も含まれます。
また、飲食店であれば、食材の仕入れ費用、水道光熱費、減価償却費(業務用冷蔵庫といったような高額の資産を数年かけて経費として計上するもの)なども経費で落とすことができます。
ただ、事業とは関係のない支出や、事業主自身の給料は経費としては計上できません。他にも経費として落とすことができるもの、できないものは数多くありますので、よく確認して帳簿処理を行うようにしましょう。
経費で落とすことができる例で挙げた交通費などは、領収書がもらえない場合があります。では、領収書がなければ、たとえ業務上必要であった移動手段の交通費であっても経費に計上できないのでしょうか。
結論としては、領収書がなくても経費で落とすことが可能です。たとえば交通費の場合は出金伝票で対応できます。ただし、どのような業務に必要となった交通費なのかを記載しておくようにしてください。
また、ICカードなどの履歴を領収書代わりとすることもできます。同じく、クレジットカードを使用したインターネットショッピングなども、クレジットカードの支払明細、またはこの明細をもとにした出金伝票を領収書代わりとして扱うことができるのです。
会社が納めなければいけない法人税額を減らすことができ、節税効果が期待できます。また、捉え方によっては、経費で落とすことにより、必要な資産を安く購入できたとも考えられます。
先ほど、経費で落とすメリットとして節税効果を挙げました。経費が増えて節税ができると聞けば、経費で落とすことが会社にとってとてもメリットが大きいもののように聞こえます。しかしながら、経費で落とすとはいっても支出はあるので、経費がかさむと会社が赤字の経営が赤字になってしまうことも考えられるのです。
また、経費で落とすことができないものを経費として計上していると、あとから修正申告や追徴課税を求められる場合もあります。経費で落とすことは、このようなリスクも抱えていることを理解しておかなければなりません。
経費で落とすことにより、会社は納めるべき税金額を減らすことができます。会社としては売上が増えたことと同じですので、経費で落とすことはメリットがあるといえるでしょう。しかし、経費で落とすという意味は、決して支出がなくなるということではありません。
そのため、経費で落とすからといって何でも支出をしていては危険です。また、経費として認められないものを経費で落とすと、ペナルティが課せられることもありますので、よく気をつけるようにしましょう。
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