早期退職優遇制度とはどのようなものなのか、詳しくご存知ですか。会社からいつ提示されるかわからない退職に関する条件について、知識を深めておきましょう。今回は、早期退職優遇制度の内容や、早期退職優遇制度を活用して退職の時期を早めた方がいいのかについて解説していきます。
早期退職優遇制度とは、早期退職することで有利な条件で退職ができる制度です。退職金が多くもらえたり、再就職の支援が受けられたりするなどの優遇措置が取られることが多いです。企業から提示された有利な条件に応じて、自分の意思で労働契約を解除する制度を早期退職優遇制度と言います。
企業の業績が悪化したときに人身削減を目的として早期退職優遇制度を導入することが多いですが、近年では減少傾向にあります。希望・早期退職者を募った上場企業は、2009年に191社でしたが、2012年は63社、2015年は32社、2018年には12社と少なくなっています。
早期退職優遇制度は、大きく分けると以下の2つになります。
・希望退職制度
・選択定年制度
それぞれの内容を紹介します。
希望退職制度は、会社側の都合により希望者を募集する退職制度です。希望退職制度を利用して退職すると会社都合退職となり「特定受給資格者」として扱われるため、すぐに失業保険を受け取ることが可能です。受給期間も長いので、その間に教育訓練を受けたり、再就職先を探したりすることもしやすくなります。
選択定年制度は、あらかじめ設定されている勤続年数や年齢から自分で選択して退職する制度です。内容や条件が就業規則に明記され、人事制度として常設されています。早期退職制度と同じく退職金の割増などの優遇を受けることができるので混同されやすいのですが、こちらは自己都合退職になるので失業保険を受け取るまでには待機期間があるうえ、受給期間も短いです。
会社が早期退職者を募集した企業が、増加傾向にあります。東京商工リサーチの調査によれば、2018年の1年間で早期退職を募集した上場企業は、12社で4,100人ほどが対象となっています。
ところが2019年に入ると、上半期のみにも関わらず、早期退職を募集した上場企業は17社で8,200人ほどが対象となっているのです。この数字から、早期退職の募集を行う上場企業の数が大きく増加している傾向が読み取れます。2019年の下半期も含めると、さらに数は増加し前年の3倍である36社、対象人数は1万1,351人と急増しています。
このように企業が早期退職を募集する理由としては、まずは業績不振が挙げられます。また、近年では、事業縮小や業務のアウトソーシング化を進めるために早期退職の募集が行われることもあるそうです。企業側としては、業績不振で悩んでいる状況ではないものの、将来を見越したうえで決断していると考えられます。
では、実際の事例を用いて早期退職優遇制度の内容をご紹介しましょう。
以下のような内容によって、早期退職優遇制度を利用する従業員の募集は行われます。該当の従業員は、この内容を見て、早期退職すべきかどうかを判断し、決断することとなるのです。
《募集人数》 定めなし
《募集期間》 2019年2月12日~2019年3月15日
《退職日》 2019年6月20日
《対象者》 勤続年数が10年以上の国内営業部門またはスタッフ部門に所属している45歳以上となる一般社員と50歳以上となる管理職社員
《優遇措置》 退職時、所定の退職金に特別加算金を上乗せして支給(総費用の予定額は26億円)。また、希望者には再就職支援をする。
1) 対象者: 2020 年2 月29 日(土)現在、当社に在籍する 40 歳以上の社員(他社出向中の社員を含む)
2) 退職日: 2020 年3 月31 日(火)
3) 募集者数: 約800 名
4) 募集期間: 2020 年2 月3 日(月)から 2020 年2 月7 日(金)まで(※)
5) 支援内容: 今回の制度を利用して退職する社員に通常の退職金に割増退職金の加算を行います。また、本人の要望に応じて再就職のための支援を行います。
参照:構造改革に伴う早期退職優遇制度の実施結果に関するお知らせ
約800人という募集人数は、ファミリーマートの全社員数の約1割です。募集の結果としては、募集人数を大きく上回る1,111人が応募し、1,025人(正社員924人・非正規社員101人)が退職しています。
(1)対象者:2020年6月30日時点にて満50歳以上の基幹職社員全員
(2)募集人数:100名程度
(3)募集期間:2020年1月6日~2020年3月13日(予定)
(4)退職日:2020年6月30日
(5)支援内容:通常の退職金に「特別加算金」を上乗せすることに加え、本施策適用者に対して再就職支援を実施
希望退職者を求める理由は「事業環境の激しい変化のなかを勝ち抜いていくため、黒字である今だからこそ構造改革を進めていく必要がある」(広報)としています。
人員削減や経営の立て直しを目的として早期退職優遇制度を導入する企業が多いなか、業績が安定しているときに希望退職者を求めるのは珍しいことです。実際に、発表がおこなわれた際には人員削減が必要なほど経営が厳しいのかと驚きの声があがったほど。味の素の2020年3月期の売上高は1兆1385億円、事業利益は880億円、純利益は180億円となる見通しだったので、業績が安定している中で希望退職者の募集がおこなわれたということになります。
2019年の希望退職者の募集は前年の3倍でしたが、その多くは味の素のように経営が堅調であるにも関わらず戦略的に希望退職者を募集しています。2009年にピークを迎え減少傾向にある早期退職優遇制度ですが、目的が人員削減や経営の立て直しから変わりつつあることがうかがえます。
早期退職優遇制度を活用して退職をするメリットは、退職金がわずかである場合もあるものの割増額で受け取ることができることです。そして、再就職の支援が受けられる場合もあります。
特に、業績悪化によって早期退職優遇制度の利用をする従業員を募集している会社の場合は、そのまま働き続けたとしても経営戦略の変化などがあり、それまでと同じように働くことが困難となるケースもあるようです。
よって長期的に考えると、必ずしも会社に残る選択がベストだとはいえません。むしろ、早期退職優遇制度をうまく利用して、転職をしたり、培った経験を活かして起業したりする良い機会となる場合もあるのです。
早期退職優遇制度を利用して退職をすれば、割増の退職金を受け取ることができ、再就職の支援も受けられる可能性があるとお伝えしました。しかし、早期退職優遇制度にはデメリットも存在します。
早期退職優遇制度のデメリットは、自分の希望する条件に合う再就職先が思うように見つからない場合もあることです。早期退職優遇制度の内容の提示は急にされることが多く、転職に関する知識も少ないまま決断を迫られることもあります。そして、転職準備が不十分なまま転職活動をするため、再就職先の雇用条件が劣ってしまったというケースは多く見られます。
特に、早期退職優遇制度の対象者にされやすい50代などの世代においては転職をすると年収が下がることが多く、住宅ローンや教育費がかかる時期でもあるので、慎重に決断した方がいいでしょう。
早期退職優遇制度をうまく利用して早期退職ができればいいのですが、必ずしもこれが良い選択とはいえません。早期退職優遇制度を活用して早期退職すべきかどうか迷った際は、慎重に判断するようにしましょう。ただし、申し出の時期が遅くなると、どんどん条件が悪くなる場合もありますので、その点についても気をつけなければいけません。
士業・管理部門に特化!専門エージェントにキャリアについてご相談を希望の方はこちら:最速転職HUPRO無料AI転職診断
空き時間にスマホで自分にあった求人を探したい方はこちら:最速転職HUPRO
まずは LINE@ でキャリアや求人について簡単なご相談を希望の方はこちら:LINE@最速転職サポート窓口