会社が保有する資産、負債はすべて貸借対照表(バランスシート)に乗っています。従って、貸借対照表を見れば、会社の財政状態や経営実態が把握できることになります。しかし、何らかの理由で貸借対照表に乗っていない(オフバランス)項目がある場合、会社の実態が正確に表されていません。特に問題となるのが、貸借対照表に乗っていない債務(簿外債務)があった場合です。
このような会社を買収すると、例えば、買収後に多額の債務が発覚した場合など、結果として大きな損失を被る可能性があります。最近では、東芝が簿外債務に気づかず米原子力大手ウェスチングハウスを買収したことで数千億円の損失を被りました。
企業を買収する際には、簿外債務の有無について細心の注意を払う必要があるのです。今回は【税理士監修】のもと「簿外債務」とその見つけ方について紹介します。
例えば、買収する予定の会社が銀行から借り入れしているにも関わらず、それが何らかの理由でオフバランスになっていたとします。貸借対照表に借入金が計上されてないのですが、正当な借入金であるため借入金の返済義務は当然あります。
このように、本来貸借対照表に計上されているはずの負債がオフバランスになっているものを「簿外債務」と言います。この借入金がしっかり貸借対照表に計上されていれば、会社を買い取るときの対価もその借入金額の分だけ安くなるはずです。
会社を買収した後で簿外債務が発見された場合、本来のあるべき対価よりも割高に買ってしまうことになり、買主は損害を被ることになります。そうならないように、簿外債務の有無については、買収条件を検討する中で慎重に調査しておかなければなりません。
この借入金のケースのように、誰が見ても負債の存在が明らかな場合に、オフバランスになっているケースは稀でしょう。それよりも、将来に起こる可能性に対する見積りが必要な項目や期間の経過に応じて発生する項目がオフバランスになっていないかどうかなどは注意が必要です。
そして、オフバランスにも意図的なものもあれば、見積もり誤りなど意図的でない場合もあることも注意してください。
簿外債務の見つけ方としては、簿外債務となりやすい大体のパターンを知っておくのがいいでしょう。代表例として以下の項目があります。
・退職金
・リース債務
・貸倒引当金
・偶発債務
簿外債務になりやすく、金額的にも多額になる項目としては、将来、従業員が退職した際に支払われる退職金(退職給付債務)が挙げられます。会計上は将来の支払額を見積り、それを現在の価値に換算した金額を負債として計上することになります。
しかし、この退職給付債務は、会計上で負債として計上しても、税務上は損金と認められないため、税金計算に影響をあたえません。従って、税金にのみ関心のある中小企業ではわざわざ計上するメリットはなく、簿外債務になりやすいという事情があります。
コピー機やパソコンなど、事務用消耗品はリースを利用している場合も多く、契約によっては、残りの年数分、リース料を支払う必要があります。しかし、それは負債として貸借対照表には乗ってない場合が多いのです。リース資産が多い会社は、そのリース残債も多額となっているケースも多いので注意が必要です。
貸倒引当金とは、得意先に対して売上代金の回収が見込めない場合にその金額を見積もり負債として計上しなければならないとされるものです。得意先に対する債権が焦げ付いている場合はその分負債として認識しなければなりません。しかし、中小企業では、売上代金の回収可能性を見積もることは困難な場合もあり、適切に計上されていない場合もあります。
偶発債務とは、まだ債務として発生してないが、将来、何らかの事象が起きた場合に債務となる可能性があるものを言います。例えば、現在係争中の場合に、将来損害賠償請求される可能性がある場合や、環境汚染対策の必要がある場合がこれにあたります。
一般的には、偶発債務は将来、債務として発生する可能性がある場合に、その金額を見積もり貸借対照表に反映させます。しかし、偶発債務が訴訟や環境汚染によって発生するものであれば、その問題の存在を隠すために意図的に簿外債務とする可能性があります。
また、他人の借金の連帯保証人となっている場合も偶発債務に該当し、これも簿外債務となりやすいものです。
実際、偶発債務は発生可能性としてはそれほど高くない場合がほとんどです。しかし、万が一その偶発債務が実現してしまった場合、かなり大きな損害が発生することも事実です。決して疎かにしてはいけないでしょう。
以上お話したとおり、簿外債務の存在にはある程度パターンがあります。そのパターンを理解することで簿外債務の存在に気付く場合もあります。
しかし、簿外債務の存在によるリスクを最小限に抑えるためには、やはり専門家の力を借りたほうがよいのは確かです。企業を買収する際には、弁護士や公認会計士に対して、こうしたリスクの存在や、そもそも買収する価値のある会社なのかを判断するための企業精査(デューデリジェンス)を依頼してはいかがでしょうか。相応のコストがかかりますが、後に多額の損失を回避できると考えれば安いものだと考えられます。
士業・管理部門に特化!専門エージェントにキャリアについてご相談を希望の方はこちら:最速転職HUPRO無料AI転職診断
空き時間にスマホで自分にあった求人を探したい方はこちら:最速転職HUPRO
まずは LINE@ でキャリアや求人について簡単なご相談を希望の方はこちら:LINE@最速転職サポート窓口