法人の資本金を減らすことを「減資」と言います。資本金は事業を営む上で出資者から受けた事業の元となるお金です。
ただその事業の元になるお金を減らすことは、事業を縮小させることになるのでは?売上を伸ばすのに資本金を減らしていいの?と疑問に思っている方もいます。
ここで今回は、減資方法の一つである無償減資とその目的・手続きの方法・デメリットについて解説していきます。
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## 減資の方法
減資には、「有償減資」と「無償減資」の2種類があります。
有償減資とは、配当などで資本金を出資者に払い戻すことを言います。逆に無償減資とは、欠損金が出た場合に欠損金と資本金を相殺させ決算書上の資本金を減らすことを言います。
有償減資と無償減資の大きな違いは、「実際にお金が動くかどうか」という点です。有償減資は事実上の減資、無償減資は名目上の減資と言わる所以です。
欠損金を補填する無償減資の場合、次の仕訳が考えられます。
(借方)資本金100万円 (貸方)繰越利益剰余金100万円
資本を減らす資本金が借方、欠損金を減らす繰越利益剰余金が貸方にきます。
無償減資を行うには、「株主総会の特別決議」「債権者保護手続き」「変更登記」の3つの手続きが必要になります。
株主総会の特別決議では、次の3点を決める必要があります。
(1)減額させる資本金の額
(2)減額させる資本金の額を準備金とする場合は、その旨と準備金にする額
(3)効力発生日
1ヶ月以上の期間を定め官報で減資の内容を公示し、債権者へ個別に通告をしなければなりません。
債権者が異議申し立てできる期間を1ヶ月以上設けなければいけないため、「1ヶ月以上」という期間設定が必要になります。
効力発生日から2週間以内に行う必要があります。
ここで効力発生日は、株主総会の特別決議で定められた効力発生日となります。ただし債権者保護手続が少なくとも1ヶ月必要になるため、効力発生日までに債権者保護手続が完了していない場合は、債権者保護手続が完了したときが効力発生日となります。
このように無償減資を行うには社内の取り決めで簡単に完結するものではありません。かなりの労力と時間を消費することになります。
無償減資の目的は、「欠損金の補填」と「節税」です。
欠損金の補填は、資本金と繰越利益剰余金を相殺させることです。ではなぜ欠損金を補填させるようなことをするのでしょうか。
1番は、「決算書上の見た目をよくする」ことです。取引先に開示する、融資を取るときに銀行に出す決算書が欠損金の積み上がっている赤字企業だと法人の収益性、安定性を疑われて、取引停止、融資を取れないということになりかねません。決算書の見栄えをよくすることを目的に欠損金と資本金を相殺させるというのは、よくあることです。
無償減資による節税効果を国税と地方税に区分して説明します。
法人税法では、資本金が1億円を超えると「大企業」という扱いになり、資本金1億円以下の「中小企業」とは税金面で大きなダメージを受けます。
(1)税率が増える
(2)交際費の上限が厳しくなる
大企業では上記のようなデメリットが発生します。
さらに法人住民税の均等割でも無償減資の恩恵を受けることができます。均等割の税率区分の基準となる資本金等の額が、無償減資を行った金額を加味されるようになりました。
法人住民税は、資本金の大小によって税額が異なるため、均等割の基準となる資本金等の金額が少ない方が節税になります。
従来は法人住民税も、法人税法上の資本金で均等割の基準としていました。しかし平成27年の税制改正で、上記のように基準となる資本金等の金額が変更されたことで、無償減資を行うことによる節税の恩恵を受けられるようになりました。
無償減資を行うことによるデメリットは、信用力の低下です。現状、会社の良し悪しを資本金で判断する人が多いのは事実です。
会社のホームページなど、多くの法人は「資本金」を表示しています。売上高、当期純利益を公開している法人は多くありません。このような状況の中、ホームページを見た方が法人を判断する材料は「資本金」になります。
そうなると資本金を減少させる無償減資は、会社の信用力を下げるデメリットの要因になってしまいます。
最近はホームページに、資本金だけでなく「資本金(資本準備金を含む)」と表記する法人が増えました。資本金のみの表示より資本準備金をあわせた表記にすることで、会社の信用力を上げる効果があります。
これにより先ほどの資本金を減少させる無償減資を行うことによる信用力低下のデメリット防止になります。
今回は無償減資についてまとめました。
減資をするメリット・デメリットをしっかり把握し、適切な手続きを踏まえ、減資を行うようにしましょう。