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海外転勤中に株式を譲渡したらどうなる?

公認会計士 大国光大
海外転勤中に株式を譲渡したらどうなる?

日本国内で株式を譲渡した場合は、その譲渡した株式の種類に応じて確定申告をしたり証券会社で完結したりと納税について色々と考えなければなりません。これが海外転勤中だとなおさらどうしたらよいのか悩むところでしょう。
そこで、今回は海外転勤中に株式を譲渡したらどうなるかを解説します。

居住者と非居住者

以前居住者と非居住者で課税関係が異なるという話をしました。そこで、居住者と非居住者について簡単におさらいします。
居住者とは、国内に住所があるか、現在まで引き続き1年以上「居住」を有する人を言い、居住者以外の人を非居住者と言います。
住所というのは、生活の拠点であるかどうかであり、住民票があるかどうかだけでは判断されません。水道代を払っているか、手紙のやり取りをその地で行っているか等、客観的な要素を組み合わせて判定されます。

また、居所を有するというのは、その人の生活の本拠ではないが、その人が現実に居住している場所とされています。
実務上は1年のうち半分以上を日本で過ごす人は居住者となり、それ未満であれば非居住者となることが多いですが、慎重に判定する必要があります。

非居住者の納税関係

非居住者の場合は、原則日本では課税されませんが、日本法人の役員が海外勤務した時のように源泉所得税だけは課税されることとなります。
また、非居住者の場合は日本国内に恒久的施設を有するかどうかで課税の方法が異なります。ちなみに、日本の法人で勤務している人が海外出向をした場合は一般的には恒久的施設を有しない非居住者という判定となります。

恒久的施設とは?

ここで、恒久的施設について解説します。恒久的施設とは次のようなものを言います。
・支店、出張所、事業所、事務所、工場、倉庫業者の倉庫、鉱山・採石場等天然資源を採取する場所
※ただし、資産を購入したり、保管したり、事業遂行のための補助的活動をしたりする用途のみに使われる場所は含みません。
・建設、据付け、組立て等の建設作業等のための役務の提供で、1年を超えて行うもの。
・非居住者等のためにその事業に関し契約を結ぶ権限のある者で、常にその権限を行使する者や在庫商品を保有しその出入庫管理を代理で行う者、あるいは注文を受けるための代理人等(代理人等が、その事業に係る業務を非居住者等に対して独立して行い、かつ、通常の方法により行う場合の代理人等を除く)。

(参照)国税庁 タックスアンサー No.2881 恒久的施設(PE)(平成28年分以前)

恒久的施設を有するかどうかは形式的ではなく、機能面を重視して判定します。

恒久的施設を有しない非居住者が株式を譲渡した場合

ここで本題に入ります。日本国内に恒久的施設を有しない非居住者が株式を譲渡した場合は、日本国内で源泉所得税がかかります。

①買集めによる株式等の譲渡

株式等の買集めとは、取引所等がその会員に対して特定銘柄の株式の価格変動の原因となるほど株式を買い集め、報告資料を求められることを言います。これほど影響のある株式の買い集めが行われた際に、その株式についてその内国法人や特殊関係者等に対して譲渡したことによる所得は源泉所得税が課されます。

②事業譲渡類似の株式の譲渡

内国法人の特殊関係株主等である非居住者が行うその内国法人の次の株式等の譲渡による所得については、日本国内の源泉所得税が課されます

・譲渡年以前3年以内に、その内国法人の特殊関係株主等がその内国法人の発行済株式又は出資の総数又は総額の25%以上に相当する数又は金額の株式又は出資を所有していたことが前提条件となります。
・譲渡年において、その非居住者を含むその内国法人の特殊関係株主等が最初にその内国法人の株式又は出資の譲渡をする直前のその内国法人の発行済株式又は出資の総数又は総額の5%以上に相当する数又は金額の株式又は出資の譲渡をしたこと。

簡単に言えば、今まで25%の株式を保有していた大株主が会社全体の5%以上の株式を譲渡した場合に源泉所得税が課されるということとなります。

③ストックオプションに関する事項

税制適格ストックオプションの権利行使により取得した特定株式等の譲渡による所得について源泉所得税が課されます
税制適格ストックオプションかどうかは、無償であることや権利行使価格の制限など様々となっていますが、ストックオプションが付与された際に案内がされているはずですので確認しておきましょう。

④不動産関連法人の一定の株式の譲渡による所得

不動産関連法人とは、株式譲渡日から1年以内に保有する資産の価額の総額のうちに、国内にある土地等の価額の合計額が50%以上である法人など、一定の資産の価額の合計額の占める割合が50%以上である法人をいいます。

一定の株式の譲渡とは、次のどちらかの株式又は出資の譲渡をいいます。

・株式譲渡(上場株式)した年の前年末に、その株式又は出資に係る不動産関連法人の特殊関係株主等がその不動産関連法人の発行済株式の総数の5%を超える数を有し、かつ、その株式の譲渡をした者がその特殊関係株主等である場合
・株式譲渡(非上場株式)した年の前年末に、その株式に係る不動産関連法人の特殊関係株主等がその不動産関連法人の発行済株式等の総数の100分の2を超える数の株式を有し、かつ、その株式の譲渡をした者がその特殊関係株主等である場合

前者は上場会社で5%、後者は非上場で2%の株式を有する人が特殊関係株主に譲渡した場合に適用されます。

⑤その他の譲渡

この他、日本に滞在する間に行う内国法人の株式等の譲渡による所得や、日本国内にあるゴルフ場の株式形態のゴルフ会員権の譲渡による所得については源泉所得税が課されます。今まで紹介したものは分離課税となりますが、ゴルフ会員権のみ総合課税となります。

まとめ

海外転勤をしている際の株式譲渡は、居住者か非居住者か、恒久的施設を有するかどうか、それぞれの要件を満たしているかどうかを順番に考える必要があります。
生活をしている上で頻繁に行うような行為ではないため、頭の片隅にいれておいていざという時に再度要件を当てはめるというくらいで良いのではないでしょうか。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
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