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政治献金を支払った場合は寄附金控除の対象となる!?

公認会計士 大国光大
政治献金を支払った場合は寄附金控除の対象となる!?

世の中には様々な寄付がありますが、そのうちの一つが政治献金となります。この政治献金は寄付金控除として税額が安くなる可能性があるということをご存知でしょうか。
そこで、今回は個人が政治献金を支払った場合の寄付金控除等について解説します。

政治献金とは

政治献金とは、政治家がその活動のための資金として広く募る寄付をいいます。政治献金には企業が行う企業・団体献金、個人が行う個人献金があります。ただし、企業献金については、政治家個人へ行うことは禁止されていて、政党に対してのみ行うことができます
しかし、税法上は政治献金を幅広く解されている為次の5つを指しています。

・政治資金規正法第3条第2項の政党
・政治資金規正法第5条第1項第2号の政治資金団体
・政治資金規正法第3条第1項第1号の団体のうち、国会議員が主宰するもの又は主要な構成員が国会議員であるもの
・政治資金規正法第3条第1項第2号の団体のうち、公職に既についている人の後援会
・政治資金規正法第3条第1項第2号の団体のうち、これから公職に就こうとする候補者の後援会

よって、政党や政治資金団体、国会議員の団体、後援会への寄付が税法上影響のある政治資金とされています。

政治献金をした後の手続

個人が政治資金として先ほどお話した団体等に金銭を支出した場合の税務上の取扱いはどうなるでしょうか。
個人が政治献金をした場合は、その支出があった年において寄附金控除等が受けられます。この控除を受けるためには、選挙管理委員会が確認印を押した「寄附金(税額)控除のための書類」を添付しなければなりませんが、それに間に合わない場合には「寄附金の領収書(写)」を添付して申告します。その後、「寄附金(税額)控除のための書類」が到着したのちに、速やかに税務署に提出することとなります。

個人が政治献金をした場合の寄附金控除

では所得控除や税額控除は具体的にどのような計算で受けられるのでしょうか。
寄附金の恩恵は、次の2通りのうち有利な方を選択することができます。

・寄附金控除の適用を受ける場合、その年に支出した特定寄附金の額の合計額またはその年の総所得金額等の40%相当額のいずれか低い金額から2千円を引いた金額を所得から控除する方法
・次の算式で計算した金額(その年分の所得税額の25%相当額を限度とする)について税額控除の適用を受ける方法
(計算式)
(政党等に対する寄付金額の合計額―2千円)×30%=政党等寄附金特別控除額(100円未満は切り捨て)

前者は所得から控除する方法ですので、高所得者ほど恩恵を受けやすいですが、最も税率が低い所得者となると、5%しか恩恵は受けられません。一方で後者は税額控除ですので、計算された税金から控除できるため所得には関係なく控除できる点に違いがあります。

政党等寄附金特別控除によく似た支出は?

ここからは、よく政党等寄附金特別控除の対象になるかどうか間違えやすい項目について説明します。
まず、政党の党費や後援会の会費については、政党等寄附金特別控除の対象にはなりません。これらは、継続的、定期的に支払うものであり、元々の規約に基づいて払うものであり入会した人にとっては義務となるようなものであるためです。元々寄附金というのは義務ではなく、あくまで善意で行われるものなのです。

また、政治資金パーティーのパーティー券を購入した場合もその費用は寄附金とは認められません。この支払額は単なるパーティーの参加費用であり、出席者も何らかの恩恵を受けていることが考えられるためです。
この他、政治団体に労務の無償提供や事務所の無償提供等は政党等寄附金特別控除にはなりません。これらの行為は租税特別措置法に照らして寄附とは認められていないことによります。

有利な選択をせずに申告してしまった場合は?

先ほど、税額控除の政党等寄附金特別控除と寄附金控除で有利な方を選択できるというお話をしました。では、本来有利な方を選択できるのに不利な方で申告をしてしまい、後から間違いに気づいて申告をし直すことができるのでしょうか。
確定申告の期限内であれば最後に提出した申告書が正式な申告書として認められますので問題ないのですが、期限後に再度申告することは認められません。
税額を納めすぎた時に再度申告をし直すことを更正の請求といいますが、更正の請求は税額計算が法律に従っていなかった場合や計算が誤っていた場合に行うことができる制度です。今回の事例では意図していない方法を採用してしまっていても、正しい計算であったことから更正の請求の対象外となってしまいます。

まとめ

支払おうとしている政治献金が寄附金控除や政党等寄附金特別控除にあたるかどうかは事前に調べておくことが大事です。また、寄附金控除か政党等寄附金特別控除のどちらが有利かを計算し、間違えて不利な方法を選んでしまわないように慎重に選択しましょう。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
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