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J-SOX/SOXの導入背景と対応について解説します

HUPRO 編集部
J-SOX/SOXの導入背景と対応について解説します

企業の上場審査の過程では、上場会社としてふさわしい体制を整備することが求められます。日本では2008年より、企業の内部統制強化を義務付ける規定であるJ-SOXが金融商品取引法に盛り込まれ、上場企業にその対応が義務付けられました。本記事ではJ-SOXの導入背景と、企業における対応について解説します。

J-SOX/SOXが導入された背景

もともと、SOX法とは、アメリカで巨額の粉飾決算が判明したエンロン事件などを機に、不正会計の防止策として2002年7月に成立した米企業改革法のことで、法案を提出した議員の名前を取った「Sarbanes‐Oxley act」(サーベンス・オクスリー法)の通称です。監査法人の独立性・情報公開の強化などの企業改革が行われました。

日本でも、2000年以降に西武鉄道の株式名義偽装や、カネボウやライブドアなどの粉飾決算が明るみに出たことから、2008年度より日本版SOX法(J-SOX)と呼ばれる会計監査制度の充実と、企業の内部統制強化を義務付ける規定が金融商品取引法に盛り込まれ、2008年4月から適用されています。

J-SOXの内容・アメリカのSOX法との違い

アメリカのSOX法は、該当する企業から独立した取締役で構成する監査委員会の設置を上場企業に義務づけ、監査法人の任命や報酬、監督に責任を負わせたほか、匿名の告発を処理するよう定めています。

最高経営責任者(CEO)や最高財務責任者(CFO)は財務諸表の内容に責任をもち、その内容を不適切に修正させた場合にはボーナスの返還、故意の虚偽記載には最長20年の禁錮刑(きんこけい)や500万ドル以下の罰金を科しているなど重い刑罰が課せられるのが特徴です。

日本版SOX法であるJ-SOXは、上場企業が管理すべき範囲をアメリカの場合よりも限定・簡素化した内容となりました。

社内での不正を防ぐ管理体制を強化するとともに、管理体制を点検・評価した「内部統制報告書」を、公認会計士または監査法人の監査を受けたうえで決算時に公表することを義務付けています。

J-SOXは上場企業に義務づけられており、違反した場合の罰則は、金融商品取引法によると「(責任者は)5年以下の懲役または500万円以下の罰金またはその両方(法人の場合は5億円以下の罰金)」と定められています。
内容によっては、その他関連法案の罰則にも抵触する恐れがあります。また株主から株主代表訴訟として責任追及されることも考えられるでしょう。いずれにしても企業としての社会的信頼は失墜し、今後の企業の存続自体に多大な影響を及ぼすことは間違いありません。

J-SOX対象企業について

J-SOX法では、すべての上場企業が「内部統制報告書」の提出対象となります。また、財務報告と同様にJ-SOX法についても連結ベースが適用されますので、以下の企業も実施対象です。

上場企業の子会社
上場企業の関連会社
上場企業の在外子会社
上場企業の外部委託先

今まで上場企業でないから関係ないと思っていたら、M&Aなどにより子会社や関連会社になることは十分考えられます。

また、これから上場を目指している企業は、社会・経済的影響力の大きな新規上場企業(新規上場時の資本金が100億円以上又は負債総額が1,000億円以上を想定)を除き、 新規上場後3年間に限り「内部統制報告書」に対する公認会計士監査が免除されていますが、内部統制報告書の作成・提出は行わなければなりません

そして上場審査では、財務報告に関わる内部統制の評価・報告体制の整備状況又は準備状況(対応部署、準備スケジュール、現状の課題など)について確認されます。
つまり、IPOを目指す会社は、準備段階からJーSOX対応ができるように内部統制を整備しておく必要があるのです。

 J-SOX対象企業について

J-SOX対応は何を行うのか

J-SOXの対象企業は、内部統制に関する整備を行い、運用状況について把握評価を行った後、評価内容についてまとめた内部統制報告書を作成します。作成された内部統制報告書は監査法人や公認会計士によって規制内容が適正かどうかという点についての監査を受けることになります。

内部統制報告書は、金融庁によってその書式が定められており、会社名や所在地などの基本的な企業情報のほか、以下の項目について記載が必要です。

財務報告に係る内部統制の基本的枠組みに関する事項
評価の範囲基準日及び評価手続きに関する事項
評価結果に関する事項
付記事項
特記事項
出典:[金融庁WEBサイト 内部統制報告書 ]

(財務諸表監査における監査報告書の記載区分等が改定されたことに伴い、内部統制監査報告書についても令和2年に変更されるもようです)

これに加え、
業務記述書
フローチャート
リスクコントロールマトリックス(RCM)と呼ばれる3種類の書類を用意するのが通例です。

書類として提出するにあたり、内部統制システムを企業内にしっかりと構築する必要があります。

内部統制の整備というのは、目先の報告書作成のために、財務報告の信頼性を確保することだけに目的として整備しようとすると、実際の業務負荷が多大になり、企業運営の足を引っ張ってしまうことにもなりかねません。内部統制は本来、業務の有効性及び効率性を高めるという目的もありますので、財務報告リスクを軽減しつつも業務改善を行うというバランスを取るためには、それなりの時間とコストが必要になります。

しかし企業は内部統制システムを構築し運用することによって、法令違反や情報漏えいといったようなリスクから自身を守ることにもなるのです。

当コラム内では、J-SOX/SOXの導入に関わる記事を他にも公開しています。併せてぜひご一読ください。
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