行政書士という資格は、難関資格であるにも関わらず、その就職や転職に関してはかなりネガティブな情報が多いのが特徴です。業務の幅が広いため、活躍できる分野も実は多く、経験を積んで開業することができればそれなりの収入も見込めます。最近では、行政書士としての経験を積むために、税理士と提携して会計事務所で働くというのも選択肢の一つです。本記事では、会計事務所で働く行政書士のメリットやその求人について解説します。
行政書士試験に合格した後、実際に行政書士の登録をするかどうかは悩みどころかもしれません。というのも、行政書士の登録と資格の維持には入会金や会費などがかかり、いきなり独立しても仕事を取ることが難しく、すぐに支払った会費分を取り戻せるかと言うと難しいところがあるからです。
そこで、どこかの事務所に雇用してもらうことを考えるかもしれません。 しかし、行政書士事務所で雇用してもらう(使用人行政書士といいます)のは、とても求人が少なく、かつ待遇面でもあまりよろしくないところがほとんどなので、行政書士全体の1%ほどしか使用人として働いている行政書士はいないのが現状です。
こうしたことから、仕事に直結しやすく将来独立した際の提携も望める、公認会計士・税理士・司法書士・社会保険労務士の事務所などで働く行政書士が多くいます。
特に、税理士が働く会計事務所については、かなり行政書士と業務が被ることが多いです。ほとんどの会社には顧問税理士がいますので、担当している企業からは、日々様々な相談事が持ち込まれます。
行政書士の業務は幅広いため、自分が「この業務がしたい」と思っていても、実際に来る依頼内容とは異なる場合が多くあります。様々な依頼を受ける中でどのように仕事を回していくか、税理士を始め他の士業の人とどのように関わっていくのかを、実務を通じて学ぶことができるのです。
将来的に独立を考えている人にとっては、またとない環境であると言えるでしょう。
税理士は試験を受けなくても行政書士登録をすることができます。そのため、税理士と行政書士のダブルライセンスで業務を行っていることも多いのです。
こうした事務所であれば、行政書士業務の知識を学ぶことができる機会はより多いでしょう。
しかし、会計事務所のメイン業務はあくまで税務であって、行政書士業務についてはおまけのようなサービスとして行なっているところがほとんどです。
実際の手続きがらみの業務は、提携している行政書士の事務所にそのまま渡しているような事務所も少なくありません 。
そのため行政書士業務をメインで行いたいということであれば、雇用関係ではなく会計事務所内で開業するということが必要になってくる場合があります。
さらに気を付けたいのは、本来は税理士でも行政書士でも行えないような業務を、雇用関係をタテにやらせようとする事務所が存在することです。
例えば、会計事務所で法人成りの業務を行う場合、行政書士として行える業務には制限があり、登記申請は司法書士の領分です。しかし、法人代表者本人の申請ということにして行政書士に代行させようとするブラックな会計事務所があったりします。
行政書士の求人は普通に探してもなかなか見つけられません。というのも、行政書士は雇用されて働くための資格ではなく、事務所を開業して独立することが前提になっている資格だからです。
日本行政書士会連合会や東京都行政書士会などの都道府県ごとの行政書士会においても就職サポートは行っていません。
行政書士の資格を取得するのであれば、資格を生かした仕事をしてみたいと思っている人は多いと思いますが、肝心の求人があまりないということでなかなか経験を積むことが難しい状況なのです。
そんな中、ワンストップサービスを行っている事務所が脚光を浴び始めています。
ワンストップサービスとは、従来は内容に応じてそれぞれの事務所に行かなければならないような届出案件について、1つの窓口で受注し、それぞれの士業事務所内で手続きが行えるようになっている事務所のことを指します。
クライアントにとっては、いくつもの専門家の事務所を探して依頼する手間も省けますし、事務所側にとっては、それぞれの士業への依頼をまとめて受けられるので売上アップにつながるメリットがあるのです。
具体的には、弁護士・司法書士・税理士・公認会計士・社会保険労務士そして行政書士など専門資格を持つ人々が集まり、それぞれ事務所を運営します。
いずれにしても、就職・転職を考えている行政書士の方々と、事務所のマッチング機会というのは極めて少なく、大手の求人サイトにもほとんど掲載されていません。
そもそも求人が少ないため、多額の求人広告を出して募集するよりは、好条件の求人があったとしても紹介やツテなどで埋まってしまうのです。
こうした状況を打破するためには、士業専門の転職エージェントの活用が非常に有効な手段といえます。
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