会計事務所などで社労士の求人を見かけることがありますが、こうした他業種の事務所で働く場合、社労士はどんな仕事をすることになるのでしょうか。本記事では、会計事務所で働く社労士の役割やその求人内容の注意点などについて解説します。
社労士には2種類の就業形態があります。「開業社会保険労務士」と「勤務社会保険労務士」です。それぞれについて以下解説します。
自身で事務所を開業している社会保険労務士のことを、開業社会保険労務士と言います。
税理士事務所内に社労士がいる場合がありますが、それは、同じフロアであっても別の事務所として開業していなくてはなりません。もしくは税理士がダブルライセンスで開業している場合です。
会計事務所の顧客に対しての社労士の仕事を、雇用された給与所得者という立場ではすることができません。
税理士事務所と同じ住所で社労士事務所を開設しているような場合であっても、開業社労士は社労士法にあるように独立性の確保された事務所で行い、その手続きの対価は直接開業社労士本人の名義で給与ではなく報酬(事業所得)として受領しなくてはならないのです。
勤務社会労務士とは、会社や社労士事務所・社労士法人などに勤務している立場で、社労士登録をしている人のことです。
独立開業とは異なり、プロフェッショナルの社労士の立場と、会社員として安定した固定収入のある会社員の立場を両立することができるのが勤務社労士の特徴となります。
この時気をつけたいのは、社労士事務所・社労士法人以外の事務所や会社組織に社労士として勤務する場合、所属している組織以外の顧客に対して社労士業務を行うことはできないということです。
社労士業務を行えるのは、開業している社労士事務所もしくは社労士法人のみです。
開業社労士として登録していながら会計事務所から給与をもらい、その顧問先の社会保険労務士業務を行うことは業法違反になるので注意が必要です。
出典:社労士と社労士制度 よくある質問(Q&A FAQ)|茨城県社会保険労務士会
会計事務所が社労士の求人募集を出すことがあります。
それは勤務社労士としての募集であることもありますが、最近よく見るのは、会計事務所がグループ会社のような形で社労士事務所を併設し、そこにクライアントから要望のあった社労士の担当業務を行ってもらい、ワンストップで対応しているパターンです。
税理士と社労士は給与の処理など重複する業務領域があるため、クライアントとしてはそれぞれの士業の人にお願いに行くよりも、会計事務所ですべて対応してもらった方が利便性は高まります。
こうしたワンストップ会計事務所は、顧客からの満足度も高いだけでなく、事務所にとっては顧客のニーズを全て自社関連で囲い込めるというメリットがあります。
社労士にとっても、顧客が向こうから来てくれるため、開拓の手間が省けるほか、税理士と組んで仕事をすることで税務に関する知識も身に付くなど、顧客・税理士・社労士のまさに「三方よし」の関係を築くことができるのです。
会計事務所の求人は、良いことばかりに思えますが、気をつけたいのが会計事務所での求人内容です。前述のように、社会保険労務士法によって、社会保険労務士は他業種(この場合であれば税理士が開業した会計事務所)に直接雇用された場合は、勤務社会保険労務士となります。
つまり、行うことができる業務はその会計事務所内に所属する人のみのものです。
もし会計事務所の顧客へのサービスを行うということであれば、労士として開業させて社労士業務を行ってもらう必要があります。
つまり、まっとうな事務所であれば、社労士を募集する際には、社労士事務所、あるいは、社労士事務所も併設されている会計事務所からの募集が行われているはずです。
もし、会計事務所からの募集であれば「勤労社会保険労務士」としての募集でなければなりません。
しかしながら、会計事務所に勤務しつつ、開業社労士としての業務を行うことは、違法行為だという認識がない(あるいはあえて)求人が散見されます。
社会保険労務士が幅広い業務を行うことが許されているのは、専門職として独立しているからです。会計事務所に勤務しつつ社労士業務を顧客に行うことは法律違反ではありますが、これは社労士法の規定のため、何かあれば罰せられるのは社労士ということになってしまいます。
会計事務所の社労士募集については、その業務内容と雇用形態についてはしっかり確認するようにしましょう。
こうしたいわゆるブラックな会計事務所の求人に間違えて応募してしまわないためにも、雇用形態や就労条件など、聞きにくいこともしっかりと事前に確認できる、転職エージェントを活用するのがおすすめです。