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2019年公認会計士試験結果を受けて見える将来性を公認会計士が徹底解説!

HUPRO 編集部
2019年公認会計士試験結果を受けて見える将来性を公認会計士が徹底解説!

2019年11月15日、公認会計士試験論文試験の合格発表が行われました。合格した方も残念ながら不合格であった方も、改めて本当にお疲れ様でした。すべての受験者の皆様にとって、ご自身の将来を考える有益な機会となったことを願います。今回は2019年公認会計士試験の結果を数値で振り返ると共に、その傾向及び今後想定されるトレンドについて、公認会計士が解説していきます。

数値で見る公認会計士試験制度

この記事をご覧になる皆さんのほとんどはご存知かと思いますが、公認会計士試験は短答式試験と論文式試験からなります。短答式試験は12月と5月の2回、論文式試験は8月の1回毎年実施されます。先述の11月に発表されたものはこの論文試験の合格者というわけです。

なお、この試験に合格した段階ではまだ「公認会計士協会準会員」等の段階です。「公認会計士」を名乗るためには、研修や監査法人・経理部門等での実務経験を経て最終的に修了考査に合格する必要があり、一般的には公認会計士試験から約4年後です。長い道のりです。

さて、本題ですが、2019年の公認会計士試験は願書提出者(=受験者)数12,532人、最終合格者数1,337人、合格率10.7%でした。合格者数のうち、20数パーセントが女性の方で、これは願書提出者数とも概ね同様の比率です。

数値で見る公認会計士試験制度

ここ5年の推移をみると、合格率は10%程度をキープしつつ、願書提出者数は少しずつ増加しています。一時は満足に就職できない合格者が発生するなど試験制度の在り方が問われた公認会計士試験ですが、近年は安定して運用されているように見受けられます。

続いて、以下が公認会計士試験の現行制度移行後の願書提出者数及び合格者数・率の推移です。

公認会計士試験の現行制度移行後の願書提出者数及び合格者数・率の推移

2008年頃までは、J-SOX導入に伴う公認会計士の需要高まりを受け合格者増加トレンドであり、合格率も過去にない高い水準でした。一方、2009年以降リーマンショックの余波を受けIPOやIFRS導入が停滞し、公認会計士という人材がいわば「人余り」となってしまいます。

それまでの増加トレンドを期待し受験者自体は増加していたものの合格率がぐっと下がる(しかもこの先にある監査法人の採用も絞られていました)という、受験生にとっては冬の時代でした。すると今度は2012年頃から公認会計士試験の不安定性を懸念し受験者数が急減、これまでの反動で「人不足」に陥ってしまうという事態に陥りました。

ここ数年は、これまでのような乱高下の反省を踏まえ、合格率を10%程度にキープしつつ受験者数を増加させるよう内から外から活動を行っている状況といえます。

受験者数

合格者数の背景にあるもの

では、この公認会計士試験の願書提出者・合格率の状況をどう評価するか。結論としては、筆者はポジティブな受け止めをしています。もちろん前述のように、合格者数が逓増する一方合格率は難関資格としての水準をキープできていることは数値を眺めれば明らかなのですが、それ以上にこの数値の背景には公認会計士に対する社会的認知・期待の拡大があると考えられるからです。

公認会計士の活躍の広がり

前項にてご紹介した通り、現行の試験制度に移行した2006年以降、公認会計士試験の合格者数・合格率は様々な外部環境の変化を受け激しく変動していました。特に2008年から2009年にかけては、リーマンショックやJ-SOXバブル終焉を背景に、合格者数が一気に3分の2になるなど受験者を混乱させていました。

そのような「荒波」に危機感を持ちながら公認会計士試験に合格した方々は、単に合格したら監査法人に進み順調にステップアップするようなキャリアパスにとどまらず、自分たちが活躍できるフィールドを模索していきました。

もちろん監査法人というベースの選択肢は残りつつも、ベンチャー企業のCFOや上場企業のインハウス会計士など、それまで少数派であったキャリアパスを選択する合格者及び公認会計士が増加し、公認会計士という人材の多様な価値を世間に広めていったように思います。

また、公認会計士協会も自体も、認知度の低い層への啓蒙活動を少しずつ広げている印象です。このような公認会計士の多様性が社会に改めて理解されていったことにより、ここ数年公認会計士試験の受験者は堅調に増加していると考えられます。

ご参考まで、対照的に語られることが多いのが司法試験です。こちらもほぼ同じ時期にロースクールを前提とした新司法試験制度に移行しましたが、合格者数は絞っており今なお制度設計は模索中のように見受けられます。予備試験というロースクールをスキップする制度に人気が集中していることも、試験制度への戸惑いが受験生及び社会の中にあることの表れであるように思います。

まとめ

これまで申し上げてきたように、2019年の公認会計士試験は基本的にはポジティブな内容が継続できたと筆者は考えています。すなわち、願書提出者増加・合格率キープというここ数年の傾向を維持することができており、その背景には監査法人以外の公認会計士の多様なキャリアパスが社会に認知され、その期待も高まっていることがあると認識しています。

今後も新たな規制対応や経済動向に多少なりとも左右される可能性は否定できませんが、公認会計士の多様化という好循環が続き、将来的にもポジティブな傾向が期待できるのではないかと思います。

この記事を書いたライター

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カテゴリ:資格試験

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