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所得税の改正はいつから?令和2年からの留意点

公認会計士 大国光大
所得税の改正はいつから?令和2年からの留意点

法人に勤務していても給与計算や年末調整等で経理には所得税の知識が必要となります。また、経理ではなくとも自身が給与をもらっている場合は所得税について知っておく必要があるでしょう。そこで、今回は所得税の改正はいつからか、令和2年からの留意点なども含めて、現役公認会計士が解説します。

所得税の改正はいつから?

まず、令和2年からの所得税はいつ改正になるかを解説します。
税制改正大綱はそれぞれいつから発生する所得や提出書類について記載されているため、直近の税制改正大綱だけを見ても適用年度が記載されていないことがあります。よって、令和元年度の税制大綱や、平成30年度の税制大綱などを見るのが一番ですが、概ね国税局のホームページを参照することが一般的です。また、令和元年度の「所得」というものと、令和元年度以降「提出」という表現の違いも敏感になっておく必要があります。
参考:税務署 令和元年度所得税の改正のあらまし

令和2年に所得税はどう変わる!?

以前記事で源泉所得税についての改正は紹介しました。これは給与所得に関する内容を解説しているものですので、詳しくはそちらを参照してください。気を付けるべきは、令和2年1月1日より発生する所得に対して適用されるものですので、令和元年の確定申告では原則従来通りの対応となります。
では、それ以外にどのような内容が変わっているのでしょうか。重要なもののみ解説します。

①確定申告書の添付書類・記載事項に関する改正

今まで給与、退職手当、公的年金の支払者から交付される源泉徴収票について、確定申告書に添付を求められていましたが、令和元年度分以降の所得であり、令和2年に提出する確定申告書から、この添付が不要となりました。(つまり、令和元年の確定申告書分)
また、年末調整を受けたものについては、確定申告書において所得控除の合計額のみ記載すればよいとされており、それぞれの所得控除の額の記載が不要となりました。これと似たような形で、次のような源泉徴収票等が添付不要となりました(提出日が平成31年4月1日以降のもの)
・給与所得、退職所得及び公的年金等の源泉徴収票
・オープン型証券投資信託の収益の分配の支払通知書
・配当等とみなす金額に関する支払通知書
・上場株式配当等の支払通知書
・特定口座年間取引報告書
・未成年者口座等につき契約不履行等事由が生じた場合の報告書
・特定割引債の償還金の支払通知書
この他、令和2年1月1日以降発生する公的年金の所得税に対する源泉徴収について、扶養親族等申告書を提出していない場合は控除額を引いた後に5.105%の税率を乗じて計算されることとなり、この扶養親族等申告書は人的控除額(※)の控除を受けるために提出される申告書となりました。
(人的控除:基礎控除、配偶者控除、扶養控除等を言います)

②仮想通貨の取得原価等に関する改正

今まで仮想通貨についての取得原価等について明確な定めがなかったのですが、令和元年分の所得計算から規程が加わりました。
これは、所得の計算上必要経費に算入する金額を算定する場合におけるその算定の基礎となるその年12月31日において有する仮想通貨の価額は、選定した評価の方法(総平均法又は移動平均法)により評価した金額(評価の方法を選定しなかった場合は総平均法により評価)となりました。なお、平成 31 年4月1日に仮想通貨を有する個人については、同日にその仮想通貨を取得したものとみなされるため、同日の時価は把握しておく必要があります。
どちらの方法を選択したとしても、仮想通貨についてはどちらにしても購入金額や払い出し量を正確に把握しておかねばなりません。

③債務処理計画に基づき資産を贈与した場合の課税の特例

内国法人の債務処理計画が平成 28 年4月1日以後に策定されたものである場合において、その会社が同日前に地域経済活性化支援機構法の再生支援決定等の対象となった法人に該当しないものであることとの要件を満たすときは、一部の適用要件を満たすことを不要とした上で適用期限が3年延長されました。
これは、保証人個人の資産のうち、事業に必要な資産を会社に贈与した場合、本来保証人個人にみなし譲渡所得が課されるのですが、この税金が免除されるとされた制度です。これにより、会社を簡単に倒産させることなく事業を継続させることができます。

④オリンピック競技に参加する外国人の源泉徴収

令和2年つまり2020年はオリンピックの開催の年です。このオリンピックに向けて非居住者(日本で基本的に税金を納めない人)の令和2年の源泉徴収が不要となっています。
これは、東京オリンピック競技大会若しくは東京パラリンピック競技大会に参加をし、又は大会関連業務に係る勤務その他の人的役務の提供を行う一定の非居住者の一定の国内源泉所得(平成31年4月1日から令和2年12月31日までの間におけるその参加又はその提供に係るものに限る)については所得税を課さないということとなりました。

まとめ

今回は所得税の改正は令和元年の確定申告に関わるものと、令和2年1月1日から発生する所得について、重要なもののみ解説しました。
冒頭にも触れましたが、実際は原文をよく読んでいつの適用となるか、間違えないようにしましょう。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
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