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公認会計士と税理士を徹底比較!|資格試験の難易度や業務内容、年収に違いはあるのか?

ヒュープロ 鴉田 絵美理
公認会計士と税理士を徹底比較!|資格試験の難易度や業務内容、年収に違いはあるのか?

公認会計士と税理士は、いずれも会計系の最難関資格として挙げられますが、どちらの資格取得をめざすか悩む方も多いかと思います。公認会計士と税理士とでは、試験の難易度・合格率、資格取得後の業務内容、キャリアアップなど大きく異なってきます。今回はその違いを比較し、どちらを目指すのが良いのかを徹底解説します。

税理士と公認会計士の違いについてはこちらのコラムでも詳しく紹介していますので、よろしければご覧ください。

公認会計士と税理士ーキャリアアップの武器としての「資格」

入社して5年・10年など、自分自身のキャリアについて立ち止まって振り返るタイミングは少なからずあると思います。私はこれからどうやってこの会社でプレゼンスを高めていこうか等キャリアプランを真剣に考えている皆さんはある種の危機感を持っているかもしれません。そこでやはり明確な武器となるのが「資格」ですよね。特に経理系の人材であれば筆頭に上がるのが「公認会計士」「税理士」だと思います。

今回は、社会人が働きながら資格取得を目指す上で人気である、公認会計士と税理士という資格について触れていきたいと思います。

【最新版】公認会計士試験と税理士試験の比較

まずはそれぞれの直近年度(2023年度)における試験の状況を簡単にまとめておきます。

公認会計士試験

申込者数: 20,317人
合格者数:1,544人
合格率:7.6%

直近の公認会計士試験では1,544人の公認会計士試験合格者が誕生しています。受験者数と合格者数ともに、前年を上回っています。
女性の受験者数も増えてきているため、女性の会計士にも活躍の場が増えている近況が認知されつつあると言えるでしょう。
【2023年の公認会計士試験結果についての特集記事】

税理士試験

受験者数:32,893人
総合格者数:7,125人
うち、全科目合格者数:600人
うち、一部科目合格者数:6,525人
合格率:22%

直近の税理士試験の大きな特徴として受験者数の増加があります。その要因は受験資格要件の緩和です。
特に高校生や大学1,2年生の受験資格が緩和されたため、若手の受験者数が大きく増加しました。要件緩和の分、合格率が下落することも懸念されていましたが、合格率も上昇しています。幅広い年齢や経歴の人にも合格するチャンスがあると分かった試験だったといえます。

【2023年の税理士試験結果についての特集記事】

まとめ

公認会計士試験は学生を中心に20代が主な受験者であり、合格率も低いいわゆる難関国家資格です。税理士試験は30代以上の社会人も多く受験しており、公認会計士試験よりは裾野が広いです。また、科目合格も含めれば合格率は公認会計士試験よりは高いです(ただ、全科目合格となるとごく少数ですが・・・)この違いは試験制度の相違によるものがやはり大きいのでしょう。

公認会計士と税理士の難易度の違い

公認会計士資格取得の難易度

働きながら公認会計士試験を合格するということは相当な難関です。一定期間の科目免除措置等はあるにせよ、基本的には試験一発勝負であり、ライバルとして立ちはだかるのは毎日勉強する時間が十分にある学生たちです。そして税理士試験に比べ受験者数が少ない中でのこの合格率となります。

また、基本的には独学でなく予備校に通うことが前提となっており、少なくとも1年半程度は各科目について数多くの授業や模試を受ける必要があります。時間的にも金額的にもハードルは高いといえます。
さらに、公認会計士試験に合格しても実はまだ「仮免」の段階です。その後実務経験を経て修了考査と呼ばれる卒業試験を受ける必要があるため、最終的に名刺に「公認会計士」と記載できるのは公認会計士試験に合格してから約3〜4年後になります。

このように、資格取得の難しさでいえば公認会計士試験はかなりの覚悟が必要と考えられます。もちろん働きながら合格している方も多数いらっしゃいますが、相当な努力の積み重ねかと推察します。

参考:USCPA(米国公認会計士)について

今までの話は、いずれも日本の国家資格としての公認会計士についてですが、社会人の方がよく検討する資格として「USCPA(米国公認会計士)」があるかと思います。いわゆるグローバル企業で海外赴任をしている、あるいはそれを志向している方にはマッチすると考えられます。ただし、基本的にはさらなる箔付けのためと思ってもらってよいでしょう。公認会計士でUSCPAを取得している方は殆どいない印象です。

税理士資格取得の難易度

税理士資格も一般的にかなり難易度が高い試験であり、働きながら5科目取得を目指すとなると、10年程度かかるという人もたくさんいます。
公認会計士試験との決定的な違いは、ご存知かとは思いますが「科目合格」の制度です。個々の科目は公認会計士試験よりも細かい内容はありますが、一度合格すれば失効することはありません

このため、今年は1年間簿記論を頑張ろうとか、来年は消費税法と所得税法をやってみようとか中長期的に勉強ができるわけです。一方短期間で全科目合格を取ろうとすると、ある意味公認会計士試験以上の難関になるため、学生などは短期集中型の公認会計士にむしろ流れやすいようです。

なお、税理士試験も公認会計士試験と同様予備校はほぼ必須、かつ金額もそこまで変わりません。
割かれる時間はトータルでは公認会計士試験と同等(あるいは長い)ですが、働きながら取り組むという上では税理士試験の方がベターですね。

税理士・公認会計士は独学で合格できるのか?

それぞれの合格率をご覧いただき、差があるとはいえどちらも難易度が高いことはお分かりいただけたのではないでしょうか。
そんな中でほんの一握りではありますが、独学で合格する人は存在します。どうすれば独学で合格できるのか、独学で目指すメリットやデメリットにはどんなものがあるのかについては、以下の関連記事をご覧ください。

【税理士の独学についての特集記事】

【公認会計士の独学についての特集記事】

公認会計士と税理士の就職先とクライアントの違い

公認会計士と税理士では、就職先はもちろんクライアントも大きく異なってきます。ここでは公認会計士と税理士の就職先やクライアントの違いを比較していきましょう。

公認会計士の就職先

監査法人

公認会計士は一般的に監査法人で働くことになるでしょう。
監査法人は公認会計士法に基づき、会計監査を行う法人のことを言います。
会計士は試験の合格発表後に一斉に就職活動を始めるのが一般的ですが、会計士試験合格者の約90%が監査法人に就職をすると言われています。

M&A業界

また、公認会計士の就職先として近年注目されているのが、M&Aアドバイザリー会社やM&A仲介会社などのM&A業界です。M&A業界はM&Aを行うクライアント企業のM&A業務をサポートする業界です。高年収監査法人とは一味違った業務内容が人気を集めている要因です。

それぞれについて、こちらの記事に詳しく紹介しております。

【監査法人についての特集記事】

【M&A業界で働く会計士についての特集記事】

公認会計士のクライアント

監査法人に就職をすれば、クライアントは間違いなく法人となります。法人の中でも、監査法人は割と規模感の大きい大企業がクライアントとなるでしょう。
なぜなら、監査の対象となるのは上場企業や上場前の大企業に限られており、小規模の会社や個人事業主には監査の必要がないためです。

税理士の就職先

会計事務所

税理士は税理士法人や税理士事務所など、会計事務所への就職が一般的となっています。
会計事務所の場合、資格がなくても税理士補助として働くことができるので、税理士を目指す多くの方が、試験勉強と両立しながら働いています。試験に合格し、実務経験を積んで税理士登録ができれば、そのまま勤務税理士として働くか、独立して個人の税理士事務所を開業することもできます。

M&A業界

公認会計士と同じく、税理士もM&A業界でニーズが高いです。税理士は税務に関わる調査などで、専門知識を発揮できるのが特徴です。

税理士の就職先については、こちらの記事にも詳しく紹介しております。

【税理士の就職先についての特集記事】

【M&A業界で働く税理士についての特集記事】

税理士のクライアント

税理士の場合、クライアントは個人から大企業まで多岐にわたります。税理士の仕事のメインとなる「税務申告」は監査と違い、企業の規模に関わらず必須になる業務です。また最近は相続の案件なども増えてきており、個人顧客からの需要も高いのが税理士です。

公認会計士と税理士の年収比較

公認会計士の年収

日本公認会計士協会によると、1年目の公認会計士の年収は500万円ほどといわれています。監査法人に勤めている会計士の平均年収は男性が約1,042万円女性が約1,044万円と日本の平均年収に比べてもかなり高い水準と言えるでしょう。
会計士は資格取得までに多大な費用かかってしまうことから、コスパが良くないのではないかと言われることもありますが、若いうちに資格取得をして就職してしまえば、かなり高い水準での生涯年収を見込めるでしょう。

税理士の年収

税理士の場合、勤務先の規模感によって年収は大きく異なってきます。大規模の税理士法人に就職すれば、福利厚生や昇給等の社内制度の完備が期待することができる上に、年収は800万円以上とも言われています。
また、独立すれば自分で稼いだ分はすべて自分の年収に反映されるので、より高い年収を期待することもできるでしょう。

公認会計士と税理士の魅力を徹底解説

公認会計士資格を取得するメリット

公認会計士試験は難関ですが、公認会計士の資格を取得できればメリットは大きいことも事実です。
まず、キャリアの幅が広がります。「会計及び監査の専門家」ということで経理部はもちろんですが、それ以外の数字にまつわる部署でも資格を生かすことができます。

たとえば経営企画部や内部監査室、その他事業管理部門が挙げられます。キャリアそのものでなくとも、「公認会計士という人材」であることが認知されれば、社内プロジェクトや横断的な取組みに抜擢されることも増えるかと思います。
また、通常の事業会社から監査法人に転職すれば、一般に給与水準は上がることが想定されます。

そして、一番馬鹿にできないのが「プラスの評価」です。社内外の方とご挨拶するにあたり、公認会計士という資格は「難関資格を取得したすごい人」として評価してもらえます。実際に監査法人を退職しても、この恩恵を実感するという声も多く聞かれます。プラスのフィルターは税理士ももちろんあるのですが、公認会計士の方が難関資格としての知名度があり、効果は大きいようです。

税理士資格を取得するメリット

基本的なメリットは公認会計士と同じと思ってもらってよいです。キャリアの幅は広がりますし、税理士法人やコンサルティング会社へのパスも開けます。また、人材としての価値も当然上がります。

ただ、キャリアの幅という意味でみれば公認会計士よりは若干狭く深いようです。税理士試験は会計・税務に特化しているため、企業法務や監査といったところは相対的に薄いと考えられます。裏を返せば、経理部や税務部で働く上では実務に直結する知識を多く取得できるため、そのまま活かせるでしょう。

別の見方でとらえれば、公認会計士よりも広い点はあります。公認会計士の観点は上場会社など比較的大規模な会社に対する知見が多いですが、税理士は上場の有無に関係なく広く企業全体や個人に対する税制に関する知見です。そのため、中小企業や個人事業主に対してもサービス提供がしやすいという意味では、税理士が強いかもしれません。
なお、税理士試験は科目合格制度のため、一科目合格であっても履歴書等で記載することが可能です。

税理士試験の難易度について合格率や必要な勉強時間などについて詳しくはこちらのコラムでもご紹介していますので、あわせてご覧ください。

結論!公認会計士と税理士、どちらを目指すべきか

以上のように公認会計士及び税理士の難易度やキャリアプランとしての魅力について見てきました。じゃあ、どっちがいいのという話ですよね。どちらも魅力的ですのでご自身のキャリアパスに合ったものを目指して下さいとまとめてもよいのですが、あえてどちらかを申し上げます。

仕事と両立をしながら取得するなら税理士がおすすめ

社会人の方であれば、とりあえずは「税理士」を目指してみるのが無難かと思います。つまるところ、公認会計士試験を社会人になってから目指すのはハイリスク過ぎるからです(仕事を辞めて1〜2年集中する方もいらっしゃいます)。働きながらの受験勉強も現実的である税理士試験を目指してみて、十分な時間とモチベーションを確保できる体制になってから、公認会計士試験にチャレンジすればよいでしょう。試験科目も重複している箇所は多いです。

ただ、どちらの資格を目指すにしても勉強した結果は少なからず実務に役立ちますのでご安心ください。

【おまけ】公認会計士は税理士の登録が可能?

公認会計士の資格を取得すると、自動で税理士資格の登録をすることができます。そのため、税理士資格を取得した後にさらに公認会計士の資格を取得するとなると二度手間となってしまう場合もあります。始めから公認会計士を目指すと決めている場合には、公認会計士資格を取得時に同時に税理士登録をすることをおすすめします。

この記事を書いたライター

HUPRO MAGAZINE編集部の鴉田です!士業・管理部門特化の転職エージェントヒュープロでHUPRO MAGAIZINEのディレクション、セミナーの運営を行っております。ご転職をお考えの方は、是非TwitterのDMよりご連絡ください!
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