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【税理士の独立について】開業税理士になりたい人必見!流れやメリットを徹底解説!

HUPRO 編集部
開業税理士になりたい人必見!税理士の独立について、流れやメリットを徹底解説!

これから税理士試験を目指す方や現在会計事務所にお勤めの方の中には、将来的に税理士として独立開業するというキャリアを想定されている人もいるでしょう。そこでこの記事では、税理士として独立開業するまでの流れやメリット・デメリット、税理士が独立を成功させるコツなどについて解説します!

そもそも税理士の独立とは?

そもそも税理士の独立とは、税理士資格を所持している人がどこかの事業所に雇われることなく、自らが事業主となることを指します。
税理士の独立といえば、税理士事務所を開業することがイメージされやすいと思いますが、フリーランスの税理士として複数の企業と業務委託契約を結んだり、税務コンサルティングに特化した会社を創業したりと、様々な独立のやり方があります。

勤務税理士と開業税理士の違い

税理士としてのキャリアの築き方は人それぞれですが、その働き方は大きく2つに区分できます。一つが開業税理士、そしてもう一つが勤務税理士です。それぞれの特徴から双方の違いを見ていきましょう。

勤務税理士の特徴

勤務税理士とは、会社などの組織との間で雇用契約を締結し、組織に雇われる形で職務をこなす税理士です。
勤務税理士の中でも、税理士事務所や税理士法人で働く人を所属税理士一般企業で管理部門などに所属して働く人を企業内税理士と呼びます。

所属税理士がクライアントに対してサービスを提供する形であるのに対して、企業内税理士はその企業の経理などを担当するという違いはあるものの、雇用されている一人の従業員という位置づけであることには変わりありません。そのため給与についても、所属先の企業によって決定され支払われることになります。

開業税理士の特徴

自身が代表税理士として税理士法人や会計事務所を経営する税理士を開業税理士と呼びます。

所属税理士とは異なり、営業時間や取り扱う業務の方向性などを含め、すべての意志決定を自身で行うことができる自由度の高さが特徴です。その分、自身の経営手腕次第でその事業所の売上が変わるため、仕事や収入面における安定性はありません。業務が軌道に乗らなければ、倒産リスクを避けることもできません。

税理士として独立するまでの流れ

「開業税理士として活躍したい!」と思い立ったからといって、もちろんただちになれるわけではありません。どのようにすれば独立できるのか、具体的な流れを紹介していきます。

税理士試験に合格する

ある意味当然のことではありますが、税理士になるには税理士試験に合格しなければなりません。この試験は国家試験の中でもかなり合格の難易度が高く、1年間勉強に集中しても合格するのは難しいと言われています。そのため、収入面も維持するために働きながら試験勉強をする人が多いです。

なお、合格に必要な試験科目の一部は受験資格を満たしていないと受験することができません。以下の記事に受験資格に該当するものが詳しく記載されていますので、確認しておきましょう。

税理士試験の概要については以下の記事をご参照ください。

税理士登録の要件を満たす

税理士試験に合格したら、すぐに税理士を名乗れるわけではありません。まずは「2年間の実務経験」を積む必要があります。ただし、試験合格前に既に実務経験をしている場合も満たしたことになります。実務経験どのような仕事が該当するのかについては、以下の記事で詳しくご紹介しています。

税理士として登録する

税理士試験合格および2年の実務経験をしたら、税理士登録の申請書類を各地域の税理士会に提出する必要があります。
申請が受理され日本税理士会連合会の税理士名簿に登録されれば、税理士を名乗ることができます。

ここまでの税理士になるまでの流れについては、以下の記事でも紹介しています。

資金を準備する

税理士になれたら、いよいよ開業に向けた準備をします。金額はまちまちですが、一般的には200万円程度が必要とされています。フリーランスで働く場合であれば必要ないものの、開業税理士はオフィスや事務所などの不動産を見つけなければなりません。また他にも、その中に入れる設備電話代通信費、さらに人を雇う場合は働く従業員の給与も考慮する必要があります。

さらに開業する際には税理士会に登録する必要があり、費用が11万円かかります。加えて年会費として10万円程度の支払いも必要であるため、それも踏まえた資金の準備をしておかなければなりません。

事業所の準備をする

税理士会への開業登録を済ませた上で、実際に事業所の準備を進めていきます。レンタルオフィスなどを借りて賃料を支払うというのが一般的ですが、費用を抑えるために自宅を事務所にして開業する税理士もいらっしゃいます
いずれの場合でも、机や椅子などのオフィス設備だけでなく、ネット環境などのITインフラや業務効率化のための会計ソフトの導入などの準備を欠かさないようにしましょう。

[参考]
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税理士の独立開業にかかる費用

独立開業にかかる費用について、具体的に見ていきましょう。なお今回は、自宅ではなく事務所を賃貸した場合の見積もりとなっております。

事務所 敷金 仲介手数料 PC
登録費 税理士会登録費 支部会入会金
ソフト パッケージ型ソフト購入費
その他 ホームページ ロゴ 名刺 チラシ
その他家具等 昇降デスク、書棚、作業台、椅子、シュレッダー、掃除機、冷蔵庫
【賃貸初期費用】

事務所を賃貸する場合に敷金や仲介手数料は地域によっても異なりますが、一般的に15万~50万ほど見積もります。

【ソフト】

PC・会計税務ソフト・その他システム関連費用総額30~60万円程が大体の目安でしょう。

【その他(ロゴ・名刺作成費、その他オフィス用品】

ロゴ作成費のみで約5万円程税務署名札代約1万円程見積もります。その他オフィス用品費用30~60万円程と見積もったところ、この約3つの項目で高く見積もった場合の目安の総額が約66万円。

【登録費(登録費・税理士会入会金)】

前述したとおり、日本税理士会連合会には全国15か所の税理士会があります。また各税理士会には支部会が設置されており、税理士登録の際は、開業地の税理士会だけでなく、支部会にも登録し、所属しなければなりません。そのため税理士会名簿の登録のために、15万~18万円(登録免許税と手数料)がかかります。

大きく4つに区分したこの項目を足すとトータルで高く見積もった場合、大体、約200万円弱となります。

独立開業税理士になるメリット

ご紹介したように、多くのステップや準備が必要となる税理士の独立ですが、メリットが多いのも事実です。具体的に見ていきましょう。

自由度の高さ

独立開業税理士の一番のメリットは、その自由度の高さです。営業時間、仕事内容、事務所の規模、事務所の場所、誰を雇うのか、どのような組織構成にするのか、どの業務に特化するのかなど、すべてを自分自身で自由に決定することができます。

勤務税理士は、所属する組織の経営方針に従わなければいけません。例えば、勤務税理士としてある程度経験を重ねてくると、「自分はもっと税務コンサルに力を入れたい」というように、希望が出てくるはずです。独立開業すれば、自分の希望を100%叶えることができます

定年退職がない

独立開業税理士のメリットとして、定年退職がない点が挙げられます。どの組織で雇用契約を締結したとしても、基本的にはどこかのタイミングで定年退職をしなければいけません。どれだけ自分に働く力があったとしても、年齢を理由に継続的な雇用が認められなくなってしまいます。

しかし、独立して自分で事務所を経営する以上、いつまで働くのかは自分が決めることです。したがって、何歳まででも事務所の第一線で働くことができますし、一線を退いたとしても、代表税理士の名前を残しつつ事務所内で一定の役職をに就き続けることもできます。生涯現役でいられるという強みがあります。

税理士の独立開業の年齢についてはこちらのコラムでも取り扱っています。あわせてご確認ください。

高収入を期待できる

独立開業税理士のメリットは、高収入を期待できる点です。組織に雇われている以上必ず収入に一定の上限が加わる勤務税理士とは異なり、独立開業税理士は自分の頑張り次第でどこまでも収入をアップさせることが期待できます

独立開業税理士の平均年収は一般に3,000万円前後と言われています。勤務税理士の平均年収が約700万円とされている実情を踏まえると、いかに独立開業税理士が儲かる仕事かご理解いただけることでしょう。

しかし、こちらは大手税理士法人を経営している敏腕税理士を含めた平均値である点だけご注意ください。つまり、年収が300万円未満の独立開業税理士も存在するなど、年収の高い税理士と低い税理士の差はとても大きいです。高い収入を得るためには、それだけ経営努力を重ねる必要があります。

独立開業税理士の年収についてはこちらのコラムでも紹介しています。あわせてご確認ください。

独立開業税理士になるデメリット

次に、独立開業税理士になるデメリットについて説明します。

仕事や収入面の不安定さと責任の重さ

独立開業税理士のデメリットは、やはり勤務税理士のような安定性が無い点です。経営方針などに関してすべて自由で決定できる反面、経営方針がうまくいかない場合には責任をすべて自分が背負わなければいけません

事務所経営を軌道に乗せるためには、積極的な営業活動を行わなければいけません。地域の実情に即したサービスを展開する必要もあるでしょうし、それ相応の広告費用も捻出する必要があります。休みを削ってでも仕事に時間を割かなくてはならない可能性や、業務効率化のためのシステム構築の負担も背負わなければいけません。従業員スタッフを雇った場合には、彼らの生活に対する責任も負わなければいけません。

廃業リスクの高さ

独立開業税理士のデメリットとして、廃業リスクの高さが挙げられます。つまり、例えば独立開業した税理士事務所に自分しか税理士がいなければ、ご自身に何かあって職務をこなせなくなった段階で税理士事務所を廃業せざるを得ないということです。これは、税理士という仕事の独占業務性に由来するものです。どれだけ優秀なスタッフがいたとしても、税理士資格の有無が事務所の生命線になるという点を忘れないでください。

独立開業税理士がぶつかる壁│成功させるコツとは?

税理士として独立すると、様々な障壁にぶつかります。事務所を経営する以上、提供サービスや時代の流れなど、数多くの流動的な要素に常に気を配る必要があります。激動の時代を乗り越えて成功をつかみ取るコツも含めて解説します。

AIや会計ソフトの普及

AIや会計ソフトの普及によって、それまで税理士の主たる業務であった税務申告業務に関して大きな変革が生じています。

日本では、法人税、所得税、相続税、消費税などの国が課税する税目は申告納税方式によるものが大半を占めます。もちろん、税務は課税の公平を図るためどうしても複雑になりがちなので、今後も税理士がこれらの申告業務を請け負い続けることに変わりはないでしょう。

ただし、会計ソフトが広く普及し、またクラウドサービスが充実して、簿記の知識がなくても記帳ができる流れが主流になりつつあります。したがって、これまで税理士が収益の柱としていた記帳業務は減少しているので、独立税理士が収入を得るためには、これまでの税理士法人の経営方針をそのまま迎合するだけでは不十分です。

さらに、今後はAIにより他の事務的な作業もだんだんと減少することが予想されます。AIが業務を台頭する時代の中で、どのような形で顧客にサービスを提供すれば事務所経営が成立するのかを考えましょう。

新規の顧客をどのようにして獲得するのか

独立開業税理士になった以上、新規の顧客を獲得することは常に懸案事項です。しかも、8万人以上の税理士が存在しているこの時代にあっては、例えば街中に税理士事務所の看板を立てておくだけは顧客獲得には不十分です。

新規の顧問先を獲得することを考える場合には、獲得したい顧客市場を明確に想定する必要があります。税理士の顧客というのは主に中小企業経営者ですので、彼らが経営をしていく上でどのような問題を抱えているのかをイメージしてみてください。

例えば、多くの中小企業が金融機関から事業融資を受けたり、創業者向けの助成金の利用を検討したりしています。そのため、中小企業経営者向けの事業融資を行なっている金融機関担当者と懇意になったり、助成金利用の相談を受け付けている商工会議所などと関係性を深めるというのはおすすめの手法です。

また、近年ではWEB経由で税理士を探す経営者が増えています。したがって、自社のホームページを用意して、有益な情報を提供することで顧客獲得を目指している会計事務所も増えています。

もちろん、ホームページを作りさえすればたくさんの人が自分のことを知ってくれるかというとそう甘くはありません。WEB経由の集客に力を入れている税理士の中には、メルマガやSNSを駆使して見込み客の開拓を行なったり、YouTube(ユーチューブ)で経営者向けのチャンネルを開設したりしている人もいます。

また、近年では、自分の求める条件に出会うために税理士のマッチングサイトがありますので、こちらを活用してみるのもかなり効果的でしょう。

多方面でIT化が進んでいるため、広告宣伝の手法も実に多様化しています。ぜひご自身のサービスを上手に宣伝しながら、新規顧客の開拓に注力してください。

提供するサービス内容、質を向上させる

顧問先の新規開拓も重要ですが、既存の顧客に対していかに高付加価値のサービスを提供するかという視点も重要です。

近年では、会計ソフトの普及によって個人の所得税申告や簡単な法人税申告などであれば、税理士に頼らなくても完結することが可能になっています。また、格安の経理代行サービスなどがたくさん存在していることも経営者は知っています。

したがって、従来のような税務申告の代理だけでは、税理士といえども価格競争に巻き込まれて利益を出すことが難しくなっているのです。顧問先企業から見て付加価値の高いサービスを提供できない税理士は淘汰されつつあるのが実情といえるでしょう。

こうした状況に対応するためには、経営する事務所にしか提供できないようなサービスを設定したり、サービスに税理士独自の付加価値をつける必要があります。

例えば、会計情報を活用した顧問先への経営アドバイス(MAS業務)や、資金調達の仲介などの高付加価値のサービスが挙げられます。また、税務に精通した税理士だからこそできる税務コンサルティングや、より経営面に深く根差した戦略コンサルなどのサービスを提供することも考えられます。顧客クライアントごとに、オーダーメイドのサービスを提供できれば、獲得した顧客に対して継続的なサービス提供が可能となるでしょう。

いずれにせよ、従来のように顧問先から「先生」と呼ばれながら、安定した顧問料収入を得るといった税理士のビジネスモデルは、今後ますます厳しくなっていくことは理解しておきましょう。

税理士取得を目指すために

税理士になるためには、試験に合格するだけでなく実務経験も必要であり、その経験と試験合格の前後は問わないとご紹介しました。

もしこれから試験合格を目指すという方は、税理士法人や会計事務所で働きながら勉強するのがおすすめです。試験合格後にすぐに税理士登録に進めるだけでなく、実務を通して試験勉強の内容理解を深めることができるからです。

また、会計事務所の求人は、税理士有資格者だけに限られず、科目合格者に対しても広く募集がかけられています。特に、簿記論と財務諸表論に合格している場合であれば、ほとんどの会計事務所で採用されるはずです。したがって、長い税理士試験へのチャレンジ期間のうち、出来るだけ早期に簿財のいずれかに照準を合わせてクリアした段階で会計事務所へ就職し、税理士補助として実務経験を積むことができれば、今後のキャリア形成をよりスムーズに行うことができるでしょう。

士業・管理部門特化の転職エージェントである当社ヒュープロは、税理士の方はもちろん、このような税理士を目指して勉強中という方の転職支援も積極的に行っております。勉強しながら働きやすい会計事務所に転職したいという方は、是非当社キャリアアドバイザーにご相談ください。

まとめ

今回は、独立して税理士として活躍するための方法やメリット・デメリットについてご紹介しました。

税理士として独立開業するには、開業後の収入の不安が懸念材料です。しかし、今般、政府の後押しも手伝って副業が社会的に広く認知されました。終身雇用が崩壊した現代、副業をする会社員はますます増えると予想されます。それによって「副業をする会社員の確定申告」という、新たな市場が形成され、マーケティングの手法によっては税理士にとって大きな収益源になる可能性もあります。税理士業はやり方によってはまだまだチャンスがある業界です。
ぜひ果敢にチャレンジを続けてください!

この記事を書いたライター

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カテゴリ:転職・業界動向

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