会社を買収するというとなんだかイメージが良くないですよね。では会社を子会社化すると言ったらどのようなイメージとなるでしょうか。今回は買収と子会社化は違うのか?どんなメリットがあるかを現役公認会計士が解説します。
買収というのは、企業が他の会社が発行している株式の半数以上を買い取ることを言います。一方で子会社化とは、企業が他の企業の株式の半数以上を取得することを言います。
あれ?同じようなことを言っているのでは?と思われたかもしれません。そうです、基本的には同じことを言っています。あえて違いを出すとすれば、買収は株式を「買い取る」ことに対して子会社化は「買い取る」以外の方法、例えば増資をしたり株式分割をしたりどんな方法であっても相手企業の株式の過半数を取得したら子会社化となります。
よって、買収よりも子会社化の方が広い概念であり、買収と言ったら子会社化することを意味しています。
では買収や子会社化することにどのようなメリットがあるのでしょうか。
まず、相手企業が儲かっている場合、投資した金額よりも利益を出すことが考えられます。1億円で企業を買収して1億円以上将来的に利益を出せば投資を回収できるため、積極的に投資したいと考えるはずです。この時重要なのは、買収後も技術や人材が残り続けるかどうかです。例え買収前に利益を稼いでいたとしても買収後に優秀な人材が流出してしまったり、技術が使えなかったりすると期待していた利益を確保できずに投資が回収できなくなってしまいます。よって、買収時に技術や人材の確保を契約に盛り込んでできるだけ元の状態を保つようにすることが重要です。
また、買収先があまり儲かっていなくとも買収をすることがあります。例えば同じような業種で自社は儲かっているのに買収先が儲かっていない場合は自社の技術や顧客網などを駆使して利益体質にできることがあります。また、管理部門等共通して発生する経費についても子会社化することによって節約できる場合は買収先企業の従業員をリストラなどして固定費を削減することができます。
もちろん、リストラや工場の閉鎖などが必要となるため一時的に損失が発生することになりますが、中長期的に見れば利益に貢献できるようになるかもしれません。
今までお話した通り、関連している企業であればメリットが出せるという話をしました。では自社の業種と無関連な企業を買収することにメリットはないのでしょうか。
例えば自動車メーカーが100円均一の会社を買収するとします。100円均一のノウハウもなく、普通に見たら失敗に終わる買収のようにも思えます。
しかし、自動車が売れるというのはどういう時でしょうか。やはり景気が良くなっており所得が十分にある時にこそ自動車を購入しようと思うのではないでしょうか。家計が裕福な時にはわざわざ100円均一のショップで買い物をしなくとも少しくらい高くても自分の好みに合わせたグッズを買いたくなるはずです。
一方で景気が悪くなってきた場合はどうでしょうか。恐らく自動車を買う余裕もない為自動車の販売台数も減ってしまうことでしょう。一方で家計は節約をしようと考えるため、少しでも安い買い物をしようと100円均一で買い物をすることが増えるかもしれません。
このような無関連の企業を買収することを「無関連多角化」と言い、どちらかの企業の業績が悪いときにもう一方の企業が助けることができます。ただし、無関連多角化は相手企業のノウハウが蓄積されていないことが多い為、思ったような利益を上げることができないことも多いので、投資の際は十分に勝算があるかを考える必要があります。
子会社化することで節税することができる場合があります。例えば、今まで40%しか株式を取得していなかった企業があり、大きな赤字を出していたとします。一方で自社は多額の利益を出しており、税金を毎年多く払っているとします。
こんな時、赤字である会社の株式を100%取得することで完全子会社化して、連結納税制度を用いることがあります。連結納税は開始する事業年度よりも前に税務署に届出をして承認を経る必要があります。
この連結納税制度を使うと、親会社の黒字と子会社の赤字を相殺して納税をすることができるため、子会社の赤字分だけ親会社の法人税を下げることができます。ただし、「法人税」が下がるだけで地方税は連結納税ができないので、相殺できないことに注意が必要です。
連結納税は専門知識が必要なため敬遠されがちですので、子会社化ではなく合併によって同じような効果を得る場合があります。
買収と子会社化はほとんど同じ用語であることがわかりました。買収や子会社化することは、子会社の利益を吸収すること以外にも、無関連多角化をして景気に左右されないグループを作り上げるというメリットがあります。
ただし、買収後にも利益を獲得できる企業にするかどうかが重要であるため、買収時には勝算を十分に吟味する必要があります。