減価償却の実務をしていると、「200%定率法」や「250%定率法」という言葉を見かけることがあると思います。なぜ200%定率法や250%というのでしょうか。
今回はなぜそのような愛称であるのか、また償却率についてもあわせて、公認会計士が解説します。
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まず、減価償却方法の種類を説明します。
簿記の勉強でも最もなじみが深く、計算しやすいのが定額法です。定額法は、取得原価を耐用年数で割った金額を定額で償却していく方法となります。個人事業主ですとその簡便さから原則的な償却方法となります。法人では定率法の方が早く償却できるため、定額法は届出を出したときのみ使用できます。
定率法は、期首の簿価に対して各資産で定められている償却率を掛け合わせて償却費を計算します。この償却率に250%定率法や200%定率法等が存在するのです。これについては後程解説します。
この他、企業会計原則上は級数法、生産高比例法、取替法が存在しますが、まずは定額法と定率法さえ覚えておけば大抵の実務では問題ないでしょう。
では本題に入ります。定率法は年々改正が行われており、平成23年12月に改正された法人税法では、200%定率法が導入されました。なぜ200%というかというと、定額法で計算した償却額の200%、つまり2倍の償却額を計上することになるからです。具体的に見ていきましょう。
100万円の資産について、耐用年数5年として償却額を計算してみます。定額法では、100万円÷5で20万円の償却額となります。定率法では、償却率が0.4ですので、100万円×0.4で40万円の償却額となります。
よって、定率法では定額法の20万円の2倍である40万円の償却額となります。これが200%定率法と言われる理由です。
しかし、同じように償却を続けるとどうでしょうか。2年目では60万円×0.4=24万円の償却額、3年目では36万円×0.4=14万円の償却額、4年目で22万円×0.4=8.8万円、5年目で13万円×0.4=5万円の償却額となり、5年で全て償却することができません。そこで、改定償却率や償却保証額が登場します。
200%定率法で計算した償却額が、償却保証額を下回る場合は改定償却率を使うこととなります。つまり、償却保証額というのは「最低でもこの金額は償却を保証します」というラインであり、償却額がこれを下回らないようにできているのです。このような理由で先ほどのような計算では5年間では償却をしきれないといえるのです。
先ほどの100万円の資産を5年間で200%定率法によって償却をしていくと、全額償却できないことがわかりました。ちなみに、耐用年数5年の保証率は0.108ですので、100万円×0.108=108,000円が償却保証額となります。
普通に定率法で計算をしていくと、減価償却費は
1年目・・・400,000円
2年目・・・240,000円
3年目・・・144,000円
4年目・・・86,400円
5年目・・・51,840円
と、4年目から108,000円に満たなくなっています。
よって、4年目から改定償却率である0.5を使うこととなり、4年目償却額は216,000円×0.5=108,000円、5年目は4年目の償却の基礎である216,000を同じように使って、216,000円×0.5-1=107,999円(1円備忘価格として残すため)と償却費が計算されます。
では、250%定率法とはどんな方法となるのでしょうか。文字通り定額法の計算結果に250%を乗じたものが250%定率法であり、200%定率法よりも償却が早く進む定率法と言えます。
250%定率法は平成19年4月1日以降取得した定率法の資産に対して使われたもので、平成24年まで適用されていました。
250%定率法の計算方法は200%定率法と基本的な考え方は全く同じですが、償却率、改定償却率、償却保証率が異なります。
また、それ以前の定率法は現在「旧定率法」と呼ばれており、期首簿価に償却率をひたすらかけて償却額を計算していきます。そして耐用年数が到来した期から5年間で1円になるまで均等に償却していきます。
よって、平成19年以前、平成24年以前、平成24年以後の取得資産で定率法の方法が3種類あることになるため、定率法では取得日付がとても重要となります。まれに会計ソフトの切り替えや合併などで資産を引き継いだ場合などの理由で、ソフトへ入力したことによって償却額がおかしくなる場合があるので注意が必要です。
200%定率法や250%定率法は、定額法の償却額に200%もしくは250%乗じた償却額になるためそのような名前になっていることがわかりました。また、旧定率法と200%もしくは250%定率法とでは償却額の計算方法が異なるため、それぞれの計算方法を理解しておくことが重要であるとともに、固定資産ソフトに入力する際も日付は間違いなく入れる必要があります。
今後旧定率法が無くなっていくとはいえ、まだ従来の償却方法で計算している資産が残っている会社であれば、全ての償却方法を理解しておくことが必要となります。